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第18回 (131号)

歯科医院の規模の違いによるマネジメントの問題や対策の違いはあるのでしょうか?

デンタル・マネジメント・コンサルティング 稲岡 勲/門田 亮

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THE DENTAL BUSINESS MANAGEMENT

歯科医院
経営講座131

デンタル・マネジメント・コンサルティング
稲岡 勲/門田 亮

Q

歯科医院の規模の違いによるマネジメントの問題や対策の違いはあるのでしょうか?

A

スタッフの人数や診療所の大きさなどによって歯科医院の規模は様々です。スタッフについては、人数が少ない段階では、あまり規則で固めてしまうよりも、ある程度自由な雰囲気で院長との人間関係を重視することの方がうまくいくことがあります。しかし、大所帯になれば自由なだけでは成り立たず、ルールや方針に沿った行動が求められるようになるなど、規模の違いよってスタッフ管理の仕組みは異なってくるでしょう。
院長の年齢などによっても規模は変化しますが、ここでは収入規模によって大きく3つに分けて、それぞれの問題と対策を検討します。

1収入規模5千万円未満

収入規模3千万円、4千万円台の歯科医院では、資金的な問題による競争力の低下に対応する必要があります。資金確保には、あらゆるコストをやみくもに削減するのではなく、必要なコストとそうでないコストを明確にして、使うもの使わないもののメリハリをつけた経営をすることが大切です。スタッフの定着率を上げ、一人一人がしっかりと意識できることが望ましいでしょう。

1.スタッフが長く勤められる環境を作る
小規模で行う歯科医院ほど、人材投資には慎重な対応が求められます。一旦スタッフが退職してしまうと、新たな人材の募集には大きな負担がかかります。院長の考え方を理解した応募者がすぐに見つかれば望ましいのですが、有料の求人情報を活用するにしても、掲載料の負担ばかりがのしかかってくるのでは意味がありません。
少人数であるがゆえに、スタッフ1人に対する業務の負担は大きくなりますが、一方で、責任感や自分の役割を深く理解できる環境にあります。個人のモチベーションに働きかけ、長く勤められる環境づくりを行います。
2.患者対応に力を注ぐ
一日の来院患者数が比較的少ないため、一人あたりに対応できる時間を長くすることはできないかを検討します。治療説明に多くの時間をかけ、院長と患者さんの信頼関係を強化します。また、一般診療からインプラント、矯正まで幅広く対応するというものよりも、「説明が丁寧であること」「スタッフがとても親切であること」「親身になって対応してくれる」ことなどに重点を置いて競争力の維持を図ります。患者さんとの信頼関係が大きく関与してきますから、院長だけでなく、スタッフも含めて患者さんの相談に応じられる関係作りを目指します。
広告宣伝に大きな費用をかけるよりも、新たな患者さんを紹介してもらえる環境づくり、関係作りに力を注ぐことで患者さんの獲得を図ります。
2収入規模5千万円〜8千万未満

就業規則に基づいた従業員労務管理の仕組みや、日常の診療におけるスタッフ同士の連携の仕組みなど、医院経営における管理の仕組みを整えていく必要があります。スタッフの人数や仕事の分担の仕方などを明確にし、管理体制が整ってくると、医院経営も非常に効率的に行うことができます。 

1.スタッフの業務効率を検討する
収入規模が6千万円台〜7千万円前後において、人件費率が非常に大きくなることがあります。理由としては、社会保険への加入によるやむを得ない法定福利費の増大のほか、管理体制が整わない状況において、スタッフ数ばかりが増えてしまう場合があります。
このとき、スタッフ一人当たりの生産性は下がる傾向にありますので、スタッフの業務内容に無駄がないかどうかを再検討しなければなりません。場合によっては、スタッフ数の見直しも行う必要があります。
2.労務管理の仕組みを整える
スタッフ数がある程度増えてきますので、就業規則の整備や雇用契約書の締結、さらに基本給や各種手当のほか、昇給の計画等を整えていくことが必要です。スタッフ間で不公平感が出ないように、管理をしていくための方針を定めます。
労働基準法を基本とした就業上の規則の徹底のほか、仕事の当番制の仕組みなど医院のルール作りを進め、スタッフ同士が気持ちよく協力できる環境づくりを行います。
3収入規模8千万以上

規模が大きくなると設置する設備も多く、使用頻度も上がります。年を経るにしたがって増加する修繕費や設備更新に対応していく必要があります。すべてを一度に行うとすると、非常に大きな資金を必要としますので、多少時期をずらし、更新の範囲を区切るなどして資金負担を分散したいところです。

1.計画的な資金調達を行う
設備投資の時期や、どのように資金を準備するかを計画的に進める必要があります。小額の設備資金であれば自己資金での資金調達が可能ですが、毎月の支出や他の返済資金など運転資金への影響がないかを判断します。
設備用に定期預金等の口座開設を行い、計画的な資金準備を進めます。日本政策金融公庫や銀行等からの借入によって大規模な設備投資を行う場合は、資産と負債のバランスを判断し、場合によってはリースを活用することも検討します。
2.スタッフの役割と権限を定める
規模が大きくなるとスタッフ数も増えていき、院長1人の管理では行き届かないことがあります。そこで、スタッフの中から核となる人材を「リーダー」「主任」「チーフ」等とし、スタッフのまとめ役として任命します。院長→リーダースタッフ→スタッフという伝達の流れをつくり、より組織としての体制を強化します。
また、院長の指示に対する報告義務を徹底し、常に医院の状態を把握できる環境を整える必要があります。問題が大きくなってから報告を受けるという事態にならないよう、リーダーとなるスタッフとはより綿密に意思の疎通を図ることが必要です。

日々起こる経営の問題に対して、迅速・的確に対処するマネジメント力に加え、状況に臨機応変に対応することも、また同時に重要な要素ではないでしょうか。

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