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DENTAL MAGAZINE デンタルマガジン

歯科医院経営講座 -21世紀の歯科医院経営-

第33回 (146号)
スタッフ増員に伴う業務効率化と人件費率の検討について
デンタル・マネジメント・コンサルティング 稲岡 勲/門田 亮

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84くの課題が出てきます。仕事が煩雑になることは、それだけ手間がかかることですから、一つひとつをきめ細かく管理、対応しようとすると、どうしても人の確保が重要になります。同時に、肥大化する業務の効率化を考えることは、経営を適切に維持するためにも重要なことです。組織が大きくなっているということは、患者数も順調に推移しているものと推察します。患者数の増加に伴って収入も増加し、チェアユニット等の設備も増えて、非常に好ましいことのようですが、同時に、患者さんへの対応のみならず、金銭の管理や設備機器の管理方法についても非常に多歯科医院THE DENTAL BUSINESS MANAGEMENT 経営講座146Q スタッフの人数が増え、労務管理が難しくなってきました。スタッフが増えた分、無駄をなくし効率を上げていきたいという気持ちがありますが思うようにいきません。どのように効率化を考えていけばよいでしょうか。また、人件費はどの程度を目指せばよいでしょうか。Aデンタル・マネジメント・コンサルティング稲岡 勲/門田 亮スタッフ1人当り月額収入収入規模3千万円未満3千万円台4千万円台5千万円台6千万円台7 千万円台8 千万円未満897,232 966,258 1,355,669 1,061,139 939,033 994,357 1,329,689<表1>月額収入を維持することは必要なことです。仕事の効率を考える際には、院長からの指示だけでなく、スタッフ同士で業務内容について精査する必要があります。カルテの管理方法や中断患者の管理、あるいは次回の予約が確定していない患者さんへはどのようにアプローチするかといったことなど、これまで、疑問を抱くことなく進めてきた仕事の方法について、一度別の視点から考えてみることも行ってみてください。スタッフ同士でいろいろな意見を交わせることが理想ですが、そのためには、出てきた意見をすぐに否定せず、肯定的に捉えるようにします。まずはすべての意見を取り入れるという前提に立ち、意見を具体化するためにはどうすればよいか、現在の流れに取り入れるために必要なことは何かといったことを検討します。 <表1>は、デンタル・マネジメント・コンサルティングにて行う調査資料からのデータですが、スタッフ一人あたり、毎月どれぐらいの医院収入を確保しているかをみたものです。毎月の医院収入額を、歯科衛生士、歯科助手、受付の人数で割ったものですが、上記の表に基づくと、医院の収入規模に関わらず、約100万円前後がスタッフ一人当たりの月額収入として考えられるものです。一方で、歯科医院の収入規模が大きくなれば、業務の効率化が図られるかというとそうでもありません。横ばいか、むしろ効率が落ちる収入規模の階層もありますから、その点が、なかなか効率が上がらないと感じる要因かもしれません。収入規模が大きくなり患者さんへの対応が増え、また金銭管理や設備管理等が増えてくれば、管理する内容も増えてきますから、業務効率を検討して1 業務効率を考える85医療の現場においては、一人の患者さんに対して、常にスタッフが関わる必要があることから、極端な経営効率を図ることは難しい状況です。そのため、今後5 年、10 年と診療を続けていくにあたり、どのような方向性で経営を進めていくかという、院長の方針に基づいて経営を進めていく必要があります。常勤スタッフを多く採用すると、一人あたりの人件費は上がりますが、診療開始から終了までじっくりと対応することができます。一方で、パート・アルバイトが増えると、人数が増えるために労務管理が大変になりますが、患者さんが多い時間帯に合わせてスタッフを確保することができ、患者応対に厚みが増すことが期待できます。どのようなスタッフを確保していくか、患者さんに対してどのような歯科医療を提供するかは、医院としての将来に亘る考え方が大きく影響します。その方向性によって、どのように経営効率を図るか、人件費をどこまで許容するかといったことも定まってくるものです。歯科医院経営講座人件費率収入規模3千万円未満3千万円台4千万円台5千万円台6千万円台7 千万円台8 千万円未満14.3% 20.4% 21.2% 28.8% 22.1% 33.0% 34.6%<表2>に対するリスクが上がるだけでなく、対応が疎かになることで患者さんが離れていくことにもつながります。ある程度の人件費がかかっても、患者さんへの対応を十分に行い、密接な関係を築く以外に歯科医院の収入を確保できる術はありません。ただし、どこまで患者さんに関与するか、どのような手間をかけるかということは、医院の診療方針が大きく影響します。人員を確保しさえすれば、よい医療が提供できるというものでもありませんし、給与賃金を高く設定したからといって、必ずしもよい人材ばかりが集まるとも限りません。医院として、患者さんに何を提供しようとするのか、競争力を維持するためにどういったことに取り組むかによって、必要となるスタッフあるいは、給与水準が定まってくるものです。収入に対する人件費率としては約20%前後から、収入規模が大きくなっても約30%程度の範囲で検討したいところです。医院の収入規模により、スタッフ一人あたりの月額収入に大きな違いはありませんでしたが、人件費率の点から考えると、収入規模が大きくなるにつれて比率も大きく上昇します<表2>。人件費=給与賃金+法定福利費*法定福利費=健康保険料、厚生年金保険料、雇用保険料等の社会保険料 収入規模が大きくなると、厚生年金等の社会保険への加入など、スタッフ本人への給与とは別にかかる費用が増えてきますし、さらには、患者さんやチェアが多くなると、十分な対応を行うためにどうしても余剰人員を抱えがちになります。常に、適正な人件費の状態を維持できれば理想ですが、スタッフの退職に伴う引継ぎ等で人件費が高騰することが往々にしてあります。医療という特殊な環境下においては、収入の多寡に関わらず、患者さんと密に関わらなければ医療行為が進みません。スタッフを削減して無理に人件費を抑えようとすると、必ず診療にひずみが生じます。すると患者さん2 人件費率の検討