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DENTAL MAGAZINE デンタルマガジン

歯科医院経営講座 -21世紀の歯科医院経営-

第42回 (155号)
スタッフの入れ替わりにも慌てない医院作りのポイント
デンタル・マネジメント・コンサルティング 稲岡 勲/門田 亮

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Office 歯科医院経営講座155BusinessManagementデンタル・マネジメント・コンサルティング稲岡勲/門田亮106 Dental MagazineQuestion 当院では、スタッフが仕事に慣れてきた頃には辞めてしまうことが繰り返され、そのたびに新しいスタッフを募集してしのいでいる状況です。新しいスタッフが入るたびに、業務の引き継ぎに追われ、右往左往しながら院内業務を保ってまいりました。業務に対して特に厳しく接してきたつもりはありませんが、当院は規模もそれほど大きくないためスタッフの数も少なく、一人ひとりにかかる負担が大きかったのかもしれません。このところは、募集を行っても応募が少なく、採用活動にも苦労をしています。今後も、スタッフが入れ替わることは避けられませんが、そうした時に慌てない医院作りを行うためには、どういったことがポイントになるでしょうか。Answer 規模が小さくスタッフの人数が少ない歯科医院においては、スタッフ一人の出入りが毎日の診療業務に多大な影響を与えます。しかし、仕事に対する向き不向きや、スタッフ自身の生活環境の変化、あるいはやむを得ない事情などから、退職を余儀なくされることは避けられません。優秀な人材が長期間にわたって勤務してくれることが望ましいのですが、スタッフは入れ替わるものという前提に立ち、ベースとなる基本業務の確立に力を注ぐことで、スタッフの離職に対するリスクを回避することが必要です。基本業務を確立することは、医院の基礎ともなるべき内容ですから、業務の一つひとつに院長の考え方が反映されている必要があります。院長の方針に基づいた内容であることが、スタッフにも安心感を与え、業務にも積極的に取り組む礎となるものです。歯科医院の規模の大小に関わらず、いろいろな人が関わって一つの業務が成り立つものです。一定水準の業務を維持することはとても難しいことですが、スタッフが入れ替わっても、同じ水準で患者対応をすることは、患者さんの大きな安心感につながります。したがって、同じ患者サービスを提供するために行うことは、一つひとつの業務に対して、一定のやり方を作る、つまり業務の仕組みを作ることに他なりません。誰が担当しても、いつ行っても、業務の仕組みができていれば、次に向けた対策を迅速に取ることができるのです。そのため、診療におけるあらゆる場面において、スタッフとしてどのように対処するか、一つひとつのきめ細かな積み重ねが大切になります。たとえば、電話を受けるときの言葉の遣い方をどうするか、患者さんが来院された際の迎え入れの声掛けはどうするか、患者さんを診療室内に案内するときは、どのような言葉を遣い、どう導くかといったことを、スタッフ全員の共通認識として話し合い、共通の形として決めておくことが、仕組み作りにつながります。管理するということBusiness ManagementDentalMagazine 107業務水準を一定にするための仕組みを作り、運用しようとしても、個人の特性や技量により、予定通りに進まないことがあります。あるスタッフは一度教えると理解が早く、他の業務にも広く意識を向けることができますが、中には何度も教えなければならないスタッフもいます。また、業務の仕組みや流れは一度作成したら終わりではなく、状況に応じて変えていくことが必要です。さらに効率を図れることはないか、改善ができる点はないかと考える必要があります。その際注意すべきことは、院長の考えを反映したものであるかどうかが大切です。単なるスタッフの勝手な判断により業務の改善を行うべきではありません。院長の意向に沿った形で見直すようにしてください。また、ある程度業務の仕組みが定着し、スタッフの理解が進むようになると、スタッフ主導で管理することができるようになります。医院の仕組みとしてスタッフに浸透したといえるでしょう。院長が前に出て引っ張っていく管理方法から、院長は全体を見渡しながら大局的に管理する方法へと変わります。Advice 業務の仕組みを作り、スタッフに浸透したとしても、やはり一人のスタッフが退職を申し出てきた場合は少なからず影響があるものです。スタッフが入れ替わっても、平常通りの診療が行える体制を作るとともに、スタッフが少しでも長く勤務できる風土づくりを進めたいものです。院長をはじめとして、先輩スタッフが適切にフォローをして動機づけを行い、スタッフ自らが目標をもって業務に取り組める環境を整えることが、安定した歯科医院経営につながるのです。最終的には、スタッフの入れ替わりや患者さんの増減などの経営環境の変化に、どれほどの覚悟を持って臨めるかどうかにかかっていると思います。院長の揺るぎない姿勢によって、スタッフは安心して業務に臨むことができるのです。前向きに取り組める組織作りどのように日常の業務に反映させるか仕組みができると、次に毎日の診療の中で業務として運用することになります。その際にいくつか注意すべきことがあります。第一には、患者さんへの対応が、事務的にならないことを心がけます。スタッフの中には、責任感のあまり、温かい対応よりも業務の形を優先した対応を取ることがあります。業務を忠実に遂行しようとする心がけは間違ってはいないのですが、まず考えるべきは患者さんの状態や気持ちです。仕組み作りは、マニュアルを作成することではありませんから、あくまでも患者さんの様子を最優先した、臨機応変な対応を必要とします。また、メンテナンスや予防の患者さんが増えてきたとは言え、まだまだ治療で訪れる患者さんは多く存在します。特に痛みを伴って来院される患者さんは、大きな不安を抱いてきていることを、スタッフが忘れないようにしなければなりません。スタッフ自身に余裕があれば大きな問題は生じませんが、自らの忙しさに余裕がなくなってしまうと、普段は当たり前にできることができなくなってしまうものです。患者さんは、日常よりもデリケートな状態であることを常に意識して、対応にばらつきがないようにすることの意味を、ミーティングを通じて理解を深めることが大切です。