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DENTAL MAGAZINE デンタルマガジン

歯科医院経営講座 -21世紀の歯科医院経営-

第43回 (156号)
少ない資金で医院経営を維持するために必要な考え方
デンタル・マネジメント・コンサルティング 稲岡 勲/門田 亮

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Office 歯科医院経営講座156BusinessManagementデンタル・マネジメント・コンサルティング稲岡勲/門田亮84 Dental MagazineQuestion 周辺に新しく開業する歯科医院が増えてきたことにより、当院にも少なからず影響があるのですが、最近開業する歯科医院は、どこも規模が大きく、スタッフ数もかなり多い体制で行っているように感じます。一方、当院は約20 年も前に開業した歯科医院で、規模はそれほど大きくなく、少し医院の老朽化が見えるような感じです。規模も資本も大きい最近の歯科医院に対して、資金的にはとても追随していくことができないのが現状ですが、少ない資本の中で歯科医院経営を維持していくためには、どういった考えを持って進めていくべきでしょうか。Answer 歯科医療技術の発展とともに、CT やマイクロスコープなどの高額医療機器が広く普及してきています。同時に投資資本も大きくなるため歯科医院も大型化し、多くの患者さん獲得に向けて積極的に展開する歯科医院が増えてきました。しかし、歯科医院の多くを占めるのは、まだまだ小・中規模の歯科医院と言えます。デンタル・マネジメント・コンサルティングが毎年行う調査においても、診療室面積10〜19 坪の歯科医院比率は全体の18.5%であり、同20〜29坪:14.8%、30〜39坪:25.9%となっています。面積10〜39坪の歯科医院が約6割を占めている状況です。したがって印象やイメージにとらわれず、限られた空間の中で一つひとつのことを丁寧に着実に行い、既存の患者さんを含めた来院患者さんとのつながりを強めた歯科医院経営を志向することが大切です。社会経済全体の景況感が改善されてくると、歯科医院においては人材不足を生じがちになります。多くは長時間の勤務を強いられることや、広範囲に亘る仕事も多いため、歯科医院で働くということが敬遠されるのかもしれません。人のためになるということが、もっとも身近に感じやすい職業の一つであるにも関わらず、雇用環境が改善すれば、どうしても残業が少なく、負担の少ない仕事に向かってしまうことは避けられないことでもあるのでしょう。そうした中で歯科医院に人材を呼び込むためには、大きな発想の転換を図ることが必要です。人件費はもっとも大きな経費として捉えられますが、ここで発想を大きく転換し、収入を生む資産として考えることができるかどうか。医療機器や建物設備など形のある固定資産とは違い、適切に指導し、育成することで、医院へのさらなる貢献を望むことができる無形の資産という考え方です。スタッフ間では業務を遂行する能力に差があり、生産性や貢献度に大きな違いが生じますが、日々の成果については昇給や賞与によって差をつければよいわけです。何よりも、常に安定して医院に存在するということが、いずれ医院の大きな強みとなると考えます。スタッフを「資産」として考えられるかBusiness ManagementDentalMagazine 85何か新たな試みを始めたり、新たな分野を開拓したりしようとする場合に意識しておきたいことは、継続することの難しさです。長期的な取り組みにより、すぐに結果が出ない場合は焦りが生ずることがあります。何も変わらないのではないかという不信感や、実は変化していくことが怖いという、自ら変化を否定してしまう心も出てくるものです。誰もが心に持つ消えない癖のようなものであり、なかなか厄介なものかもしれません。どうせ何も変わらないのではないか、あの人だからできるのだといった「内なる声」に屈せず、一度始めたら絶対にあきらめない気持ちを強く持ち、医院全体で継続して続けていくことが大切です。人の育成、患者さんへの丁寧な治療説明、設備の適切な更新など、行うべきことを一つひとつ確実に行っている結果が患者さんからの信頼につながっていくものです。いろいろな形で患者さんにアピールし、患者さんの心をつかむべく対応を行っていますが、それら一つひとつを丁寧に見ていくと、当たり前に行うべきことを当たり前に継続して行っていることがわかります。Advice 経営を左右するもっとも大きな要素は人です。アポイントシステムや患者説明ツールが発達しても、最終的に対応するのは人の力に他なりません。患者さんに気持ちよく過ごしてもらうことも、患者さんを怒って帰らせてしまうのも人の力です。人件費は、損益計算書上ではもっとも大きい比率を占める固定経費です。医院の方針や考え方を深く理解してくれるスタッフでさえ、人件費となれば経費すなわち損失という認識です。しかし一転、医院の大切な資産との考えに発展させることで、人材の質が高まり将来的に決定的な差が生まれてくるものです。発想を変えることでスタッフが育ち、きめ細かい対応を継続して行うことができれば、医院の規模には関係なく、安定した歯科医院経営につながるものと思います。継続して定着を図る来院した患者さんを離さない来院した患者さんは離さないという強い意志に基づき、医療である歯科医院において行うべきことは、来院した患者さんに生涯に亘り関わっていくということでしょう。関係を維持し続けるということは、歯科医院の規模の大小を問わず、また、サービスを提供する側とされる側として捉えれば、業種に関わらず最重要な課題であると考えられます。サービスに満足をして継続的に訪れる、あるいは誰かに口コミで紹介をすることが増えれば、どんどん支持者が増えることになります。そのためにしのぎを削って患者獲得に力を注ぐわけですが、スタッフの問題だけではなく、医院全体の問題として捉える必要があります。スタッフに対しても患者さんに対しても分かりやすい診療方針を打ち出せているかどうか、具体的な言葉で明確に表現しているほど伝わりやすくなります。また、導入した時点から陳腐化が始まる器械設備を適切に更新しているかどうか、患者さんに最良の医療を提供するための投資資金計画などが的確に練られているかがポイントです。人をはじめとして、設備などの物、あるいは人や物を得るためのお金の問題など、患者さんが離れない取り組みを行うために、歯科医院全体として何をどう行うかという投資への考え方を明確にしておく必要があります。