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DENTAL MAGAZINE デンタルマガジン

歯科医院経営講座 -21世紀の歯科医院経営-

第46回 (159号)
患者さんとのコミュニケーションギャップが発生した場合の対処法
デンタル・マネジメント・コンサルティング 稲岡 勲/門田 亮

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Office 歯科医院経営講座159BusinessManagementデンタル・マネジメント・コンサルティング稲岡勲/門田亮102 Dental MagazineQuestion 先日、いつも来院する患者さんと受付担当者との間で、診療内容のことで少しトラブルが生じました。患者さんは、次の診療日には型取りをすると歯科医師から聞いていたようですが、診療日当日には型取りは行われず、聞いていた内容と違うが、どういうことかと聞いてきたようです。その際に受付担当者は、カルテに記載がなかったために型取りの予定はなかったこと、さらには、今からすぐに型取りを行っても出来上がりに時間がかかってしまうことを話してしまい、患者さんが反感を抱いてしまったようです。どう対処すればよかったのでしょうか。Answer 患者さんとのコミュニケーションを行う中で、医院側が伝えたつもりでいる内容と、患者さんが受け止めた内容とが合致しないことは、少なからず生じてしまうものです。その多くは、患者さんが都合の良いように解釈してしまうか、あるいは伝えた側の説明不足により、実際には期待にそぐわないことが生じてしまいトラブルに発展してしまうことです。インターネットが普及し、あらゆる情報を瞬時に得られる現在は、患者さんも医療に関する質問を比較的容易に投げかけてくるようになりました。それでも、医療を提供する側と受ける側では、パワーバランスに圧倒的な差があるものですが、なおかつ意見を述べてくるということは、患者さんにも確信に近いものがあったのだと思います。医院として、正論に基づいてから発した言葉が患者さんに受け入れられず、大きなトラブルになることは時としてあるものです。歯科医師と患者というパワーバランスの中で、患者さんから何か伝えてくるということは、それなりに根拠があってのことと思います。したがって、今回のご質問のように「型取りをするはずではなかったか」と尋ねられた際には、「今日は型取りと聞いておられたのですね。歯科医師に確認してまいります」と、一旦患者さんが伝えてきている内容を受け入れる必要があります。受付担当者からすればカルテに基づいて確認し、記載がなければ医院に落ち度はないものと考え、患者さんの勘違いという判断をしてしまうのかもしれません。しかし、患者さんも、「〜だったはず」という強い気持ちを持っていますから、頭から否定されたり、自分の意図が医院に受け入れられなかったりすると、気持ちよく感じるはずがありません。普段、通い慣れている患者さんが、医院に対して改めて疑問を投げかけてくるということは、よほどのことだったのかもしれません。患者さんにとっては、型取りをすることで新しい歯が作られるということに相当な期待感を抱き、今日の診療という日を楽しみに迎えたのかもしれません。医院として、間違ったことをしていないという意識の強さから、物事の正しさを伝えることに重きが置かれたのかもしれませんが、一旦は相手の気持を汲むことで、患者さんからすれば、「聞いてもらえた」という意識が生まれるのです。患者さんの気持を一旦受け入れるBusiness ManagementDentalMagazine 103誰しも失敗したことには目を塞ぎたくなるものですが、患者さんとの間で生じたトラブルに対して、院内で教訓として全スタッフが向き合うことができるかどうかが、今後の取り組みに大きく関わってきます。なぜトラブルが生じたか、今後どう対処していくべきかを、全スタッフで振り返りながら、一つひとつ丁寧に考えていくことが大切です。スタッフを集めてのミーティングを行うと、話すことが特にない、皆で考える議題がない、といって、スタッフからの意見が一向に出てこないことがあります。しかし、患者さんとの間で生じた事例を通じて、今後の接し方やコミュニケーションの方法などについて、その時その時でしっかりと議題として取り上げて、意見を交わしていくことは非常に重要なことです。スタッフ全員で協議をするためには、どんな些細なことでも院長に報告として上がってくる体制が必要です。何かトラブルが生じた時に、責めるのではなく皆で考える姿勢を示すことで、大切な情報が確実に院長の元へ届くようになるものです。Advice 受付担当者の仕事は、常に患者さんと接する最前線に位置するため、特に忙しい時間帯で余裕がなくなる時には注意が必要です。診察券・保険証の受理、本日の会計、次回のアポイントなど、患者さんとの対面での関わりが多くなるために、時として患者さんとの意識のずれや認識の違いなどから、患者さんとのトラブルの矢面に立つことも多い職種ともいえるでしょう。歯科医師のいる診療現場とは離れた位置にいることが多いため、患者さんとしても思ったことが言いやすいということもあります。したがって、医院として全員で共有して考えるとともに、診療室にいる歯科医師、歯科衛生士、歯科助手と受付担当者が十分な意思疎通を図り、時折生じるトラブルに対しても全医院で迅速に対応できる組織づくりを目指してください。全スタッフで共有すること患者さんの気持にどう対処するか患者さんにとっては、思い切って示した自分の気持が相手に理解されると、気持ちの大きな部分で満足感を得るものですが、そのままでは患者さんの気持を実現したことにはなりません。期待していた内容が叶えられず、一旦は不信感を抱いた気持ちですから、医院として最大限対応しようとする姿勢が大切です。つまり、当初の思いは叶えられなかったけれども、それに替わる内容を提示することにより、患者さんがより満足をするということです。最短で型取りをするべく歯科医師と協議をする、あるいは、今回は治療内容のことですから、早急に歯科医師に報告し、歯科医師から詳細の説明を行い、次回の予約も取り、患者さんの理解を深める必要がありました。患者さんにとっては、自分の気持ちを汲んでもらった後に、さらに親身になって対応してくれる姿勢を感じることで大きな満足を得られるものです。医療現場ですから、歯科医師の診療方針、治療計画が最優先に考慮されることは言うまでもありませんが、何らかの原因で生じた行き違いに対しては、しっかりと時間を取って真摯に対応することが、患者さんとのコミュニケーションを良好に保つ秘訣でもあるのです。