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CLINICAL REPORT

治療用口角鉤Wide Viewer(ワイド・ビューアー)の特徴

堀口 尚司/山田 敏元

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目 次

はじめに

歯科治療の難しさは、狭い口腔内で操作を行うことにあります。通常、視野の確保と、バキュームワークを行うためには、衛生士の介助を必要とするか、術者が無理な姿勢をとる必要がありました。術者一人で治療を行っていると「もう一本手があればどれほど治療が楽になることか」と思われた経験は多くの歯科医に共通のことであります。
ここで紹介する治療用口角鉤Wide Viewer(ワイド・ビューアー)は、第三の手として、各種治療行為が行いやすいように設計されており、従来介助者が必要であった治療が術者一人でも容易に行える特徴があります。

Wide Viewer(ワイド・ビューアー)の特徴

Wide Viewerの特徴を箇条書きにすると以下のようになります。
・臼歯部まで見える広い視野。
・口腔内への挿入が容易。
・治療操作が行いやすい。
・リップサポートがしっかりしており、外れにくい。
Wide Viewerの構造
Wide Viewerには、臼歯部までの視野を確保するために長い翼部(ウィング)が付与されています(図1-1)。従来の口角鉤でも、翼部を付与した製品がありましたが、口腔内挿入が難しくなる欠点がどうしても避けられませんでした。そこで、広い視野を確保しながら、口腔内挿入を容易にするための工夫としてWide Viewerではジョイント部が付与されています(図1-2)。また、構造がシンプルであり、治療操作を妨げないように配慮されています。リップサポートがしっかりしているために、口角鉤が外れにくい点も治療用口角鉤としてはとても重要な要素になっています(図1-3)。
Wide Viewerの口腔内装着・脱着
Wide Viewer の口腔内挿入に先立って、翼部周囲を3wayシリンジにて湿らせます。Wide Viewerのアームを図2、3のように縮めると左右の口角鉤のジョイント部(凸部と凹部)が回転軸となり翼部が内方に回転し、口腔内に挿入しやすい状態になります。まず、上唇を口角鉤にはめ込んだ後に、下唇を左手で引っ張りはめ込むことで口角鉤の装着が終了します。Wide Viewerの取り外しではアーム部を縮める時にジョイント部によって上唇を挟まないように左手で上唇を反転させる点に注意してください。

  • 図1 Wide Viewer
    [写真] Wide Viewer
  • 図2 Wide Viewerの使用法
    • [写真] 右手でバネアームを持つ
      2-1 右手でバネアームを持つ。
    • [写真] 両口角鉤のジョイント部を合わせる
      2-2 両口角鉤のジョイント部を合わせる。ジョイント部を支点として、ウイング部を内方に回転させる。 [写真] ジョイント部を支点として、ウイング部を内方に回転させる
    • [写真] バネアームを縮める
      2-3 バネアームを縮める。この状態で、口腔内に挿入する。
  • 図3 Wide Viewerの使用法
    • [写真] ウイング部を3Wayシリンジで湿らせる
      3-1 ウイング部を3Wayシリンジで湿らせる。
    • [写真] ウイング部を口腔前庭に沿って挿入する
      3-2 ウイング部を口腔前庭に沿って挿入する。
    • [写真] 先に、上唇を口角鉤にはめ込む
      3-3 先に、上唇を口角鉤にはめ込む。
    • [写真] 次いで、下唇を口角鉤にはめ込む
      3-4 次いで、下唇を口角鉤にはめ込む。
    • [写真] 口角鉤装着終了
      3-5 口角鉤装着終了。
    • [写真] 正面
      3-6 正面。
    • [写真] 口角鉤が歯肉に接触して痛む場合は、ワッテを口腔前庭に挿入する
      3-7 口角鉤が歯肉に接触して痛む場合は、ワッテを口腔前庭に挿入する。
    • [写真] バネアームを縮める際、ジョイント部で上唇を挟まないように、左手で上唇を持ち上げる
      3-8 バネアームを縮める際、ジョイント部で上唇を挟まないように、左手で上唇を持ち上げる。

Wide Viewerを用いた臨床例

Wide Viewerは、従来型の口角鉤と同様または、それ以上に口腔内写真の撮影に有効です。リップサポートがしっかり行われているため、口唇がたるむことがないので治療経過を比較する規格写真では、非常に役に立ちます。
歯みがき指導、口腔清掃、漂白処置、齲蝕除去、窩洞形成、合着、充填、歯内療法、スケーリング、ブラケット装着、印象採得、外科治療等、ほとんどの作業がWide Viewerを装着した広い視野内で行われるため、術野確保のための無駄な労力を省くことができます(図4)。
Wide Viewerを装着することで臼歯部の術野が確保されるため、大臼歯のブラケット装着も、容易に行うことができます。エアータービンの使用時も、多くの場合衛生士の介助がなくても術者一人で容易に治療を行うことができます。視野を確保するために無理な姿勢をとる必要がないことは、術者にとって非常に快適です。また、リップサポートがしっかりしていて簡単に脱離しないため、アーム部を左右上下に移動させることによって術野を変化させて治療を行うこともできるため、応用範囲を広げることができます。

  • 図4 Wide Viewerの臨床応用例
    • [写真] 窩洞形成、支台歯形成
      4-1 窩洞形成、支台歯形成
      Wide Viewerは、術者の手の動きを妨げない。
    • [写真] 印象採得
      4-2 印象採得
      口腔前庭が広がるため、印象採得が容易に行える。
    • [写真] 矯正治療
      4-3 矯正治療
      臼歯部でも頬粘膜の排除が可能なため、面倒なブラケットの接着が容易になる。
    • [写真] 修復処置
      4-4 修復処置
      助手がいなくても、視野の確保、保湿ができ、Two Hand Techniqueが可能。
    • [写真] エアーポリッシング
      4-5 エアーポリッシング
      効率的な作業が可能。
    • [写真] プロフェッショナルクリーニング
      4-6 プロフェッショナルクリーニング
      明視野で、口腔清掃ができる。口腔清掃の煩わしさを解消。
      • [写真] スケーリング
      • [写真] スケーリング
      4-7 スケーリング
      排唾管を併用することで、助手が必要なくなる。バネアームを左手で移動させ術野を変化させることができる。

Wide Viewerの注意点

・口腔内への装着が独特であるため、口角鉤の挿入・取り外しには多少の訓練が必要です。まずは、術者自身の口で、数回練習を行ってから患者さんに使用する必要があります。
・口唇が乾燥している場合には、ワセリン等を塗布してください。
・上顎前歯部の唇側付着歯肉部が、口角鉤によって圧迫されて痛むことがあり、この場合にはロールワッテを口腔前庭部に挿入してください。
・Wide Viewerの取り外し時には、左手で上唇を翻転して上唇をジョイント部で挟まないように注意してください。
・多くの場合、Wide Viewerを使用することで治療が容易になりますが、すべての症例でWide Viewerが使用できるわけではありません。

おわりに

虎の門病院では、Wide Viewerを用いることで、衛生士のバキューム介助時間を少なくすることができ、本来の仕事である患者教育、スケーリング等に時間が割けるようになり、医療サービス向上に貢献していることを付記させていただきます。Wide Viewerが多くの歯科医療スタッフの仕事を快適にすることを祈っております。

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