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DENTAL MAGAZINE デンタルマガジン

CLINICAL REPORT
抜歯窩にテルプラグ使用後の創傷治療
金子 茂/中村 昭一/池村 邦男

要 旨抜歯窩用に開発された砲弾型アテロコラーゲンスポンジであるテルプラグ(テルモ株式会社製)を抜歯後に止血困難や治癒不全、歯槽骨の吸収が予想される患者14名に使用し、抜歯窩の治癒過程について臨床的に評価した。検討対象は、有病者11名(肝疾患を有し凝固因子の低下を認めた患者、経口抗凝固剤を投与されていた患者、糖尿病患者、慢性関節リウマチ患者)、埋伏歯の抜歯の際に大きな骨欠損を認めた基礎疾患のない患者3 名であった。6ヵ月間抜歯創を観察、X線撮影を行い抜歯窩の骨治癒過程を検討した。糖尿病を有する患者とステロイドの長期投与をともなう慢性リウマチ患者では、治癒遅延を認めたが、他の患者では良好な創と骨の治癒過程が確認できた。テルプラグの抜歯窩への使用は、創の保護及び歯槽骨の吸収の軽減に有効であった。緒 言テルプラグ(テルモ株式会社製)は抜歯窩の骨欠損用に開発された砲弾型のアテロコラーゲンスポンジである。これまでに健常者や有病者、障害者で圧迫止血ができない患者での使用経験が報告されてきた1)。しかしテルプラグを使用後に抜歯窩の治癒過程をX線所見を用いて数ヵ月間臨床的に評価した報告は少ない。今回、筆者らは抜歯後に止血困難や治癒不全、歯槽骨の吸収が予想され、処置に難渋すると判断した患者14名にテルプラグを使用し、抜歯後6ヵ月の治癒過程、骨の状態、歯槽提の形状を臨床的に観察評価したので報告する。対象と方法1. 対象症例(表1)検討対象は1999年5 月から9 月末まで産業医科大学病院歯科口腔外科を受診した患者で、抜歯後に止血困難や治癒不全、歯槽骨の吸収が予想され、同意が得られた患者とした。すなわち、有病者では、肝疾患を有し凝固・線溶系因子の低下を認めた患者、経口抗凝固剤を服用中の患者、糖抜歯窩にテルプラグ使用後の創傷治癒産業医科大学医学部歯科口腔外科講座金子 茂中村昭一教授 池村邦男テルプラグ尿病患者、慢性リウマチ患者の11名であった。健常者では、埋伏歯の抜歯の際に大きな骨欠損を認めた3名であり、合計14名であった。年齢は23歳から79歳、平均58.8歳、性別は男性8名、女性6名であった。2. 試験資料テルモ株式会社製仔牛真皮由来のアテロコラーゲンスポンジを主成分とする砲弾型コラーゲンスポンジ、テルプラグ(医療用具承認番号20900BZ00646000)、サイズはSサイズ(外径8mm×長さ25mm)、またはMサイズ(外径15mm×長さ25mm)のいずれかを使用した。3. 抜歯創の大きさ抜歯窩の大きさより少し大きなサイズのテルプラグを選択した。適用部位の不良肉芽組織を掻爬後、抜歯窩にピンセットでテルプラグを挿入し、ガーゼで軽く押さえて密着、縫合した。1 例のみ縫合と、止血のための床シーネを併用した。4. 観察期間および方法抜歯直後、1日目、1週目、2週目、1ヵ月目、3ヵ月目、6ヵ月目の創面および症状を観察、口腔内写真撮影を行った。抜歯前、抜歯後1週目、1ヵ月目、3ヵ月目、6ヵ月目のデンタルX線を撮影した。5. 観察項目以下の項目について、観察日に評価・記録した。(1)止血効果(図1)「A. 止血効果あり」、「B. 創面よりにじむ程度の出血」、「C. 止血効果なし」の3段階で評価した。(2)疼痛の程度(図2)「A. 疼痛なし」、「B. がまんできる程度の痛み」、「C. 顕著な痛み」の3 段階で評価した。(3)抜歯窩閉鎖の程度(図3)「A. 歯肉上皮が抜歯窩を閉鎖」、「B.中央部に小孔を残す程度まで、歯肉上皮が抜歯窩を閉鎖」、「C. 歯肉上皮による抜歯窩の閉鎖なし」の3 段階で評価した。(4)治癒不全の有無(図4)「A. 治癒不全なし」、「B. 処置の必要あり」、「C. 感染を認め除去」の3 段階で評価した。(5)最終的な抜歯窩の陥凹抜歯後1週目、1ヵ月目、3ヵ月目、6ヵ月目のデンタルX線と、抜歯後2週目、1ヵ月目、3ヵ月目、6ヵ月目の口腔内写真と模型を比較検討し、「A. 陥凹、顎堤の吸収がみられない」、「B. 陥凹、顎堤の吸収がみられたが、以後の処置に影響がみられない程度」、「C. 陥凹、顎堤の吸収がみられ、以後の処置に影響あり」の3段階で評価した。(6)最終的な骨修復「A. 骨修復がみられる」、「B. 部分的であるが骨修復がみられる」、「C. 骨修復がみられない」の3段階で評価した。(7)総合評価「有効性あり」、「項目によっては有効性あり」、「有効性なし」の3 段階で評価した。「有効性あり」とは、観察項目の最終時にすべてA以上、「項目によっては有効性あり」とは観察項目の最終時にB以上、「有効性なし」とは治癒不全を認めたもの、副作用を認めたもの、観察項目最終時に1項目でもCのあるものクリニカルリポート症例1234567891011121314年齢性別79 男51 女78 女74 男77 男73 女52 男65 女61 男71 男64 男26 女29 男23 女疾患名23 C4 歯根嚢胞5 C45 C44 破折67 P53 C45 破折6 C46 P3 P53 C45 埋伏8 埋伏8 埋伏基礎疾患脳梗塞後片麻痺*、慢性関節リウマチ下肢血管性静脈炎*、慢性関節リウマチ肥大型心筋症*虚血性心疾患*脳梗塞後遺症*狭心症*肝硬変**肝硬変**、糖尿病肝細胞癌**肝細胞癌**肝細胞癌**なしなしなし固定方法縫合縫合縫合縫合縫合縫合縫合、床副子縫合縫合縫合縫合縫合縫合縫合サイズSSSSSSSSSSSMMM*:抗凝固剤の投与を伴う疾患、**:検査値で凝固・線溶系因子の低下を認めた肝疾患表1 症例と使用サイズ64%151050患者数(人)術直後A:止血効果ありB:創面よりにじむ程度の出血術後1日術後1週36%79%21%93%7%図1 止血効果の経時的な評価64%151050患者数(人)A:疼痛なしC:顕著な痛みB:我慢できる程度の痛み術後1日術後1週術後2週21%14%71%29%93%7%図2 疼痛の経時的な評価とした。結 果1. 臨床評価1)止血効果の経時的な評価(図1)症例番号1~6に投与されていた経口凝固薬はチクロピジン、ベラプロストナトリウム、ワーファリン、アスピリンであり、専門医の指示に従い3~7日前に投与を中止し抜歯した。肝疾患を有する症例7~11は血液検査で凝固・線溶系因子の低下が認められた患者である。全症例14名中、術直後に完全に止血をしたものは9名(64%)であった。創面からにじむ程度の出血を認めたものは5名(36%)であった。術後1日に止血したものは11名(79%)であり、創面からにじむ程度の出血は3名(21%)にみられた。術後1週目では、症例7の肝硬変のため血小板が34,000/μlと減少、PT17.8秒、APT T38.8秒と延長していた患者で、創面からにじむ程度の出血を認めたが、10日目には完全に止血したため床副子を撤去した。観察期間中、いったん止血後に再出血を生じた症例はなかった。2)疼痛の経時的な評価(図2)すべての症例で、抜歯後に非ステロイド系消炎鎮痛剤の頓服投与を行った。全症例14名中、術後1日目に疼痛なしの症例は9名(64%)であった。がまんできる程度の痛みは3 名(21%)、顕著な痛みを訴えたものは2名(14%)であった。術後1週目では、疼痛なしの症例は10名(71%)であった。がまんできる程度の痛みは4名(29%)であった。術後2週目では、症例2の慢性関節リウマチのため、プレドニゾロンの長期投与を受け創傷治癒遅延を認めた患者ががまんできる程度の痛みを認めたが、3週目以降には疼痛は消失した。術後1週目以降に顕著な痛みを訴えた症例はなかった。3)抜歯窩閉鎖の経時的な評価(図3)術後1 週目で抜歯窩の閉鎖を認めた症例はなく、中央部に小孔を残す程度まで抜歯窩を閉鎖したものは9 名(64%)、抜歯窩の閉鎖なしの症例は5名(36%)であった。術後2週目で抜歯窩の閉鎖を認めた症例は10名(71%)であり、中央部に小孔を残す程度まで抜歯窩を閉鎖したものは3名(21%)であった。抜歯窩の閉鎖を認めなかった患者は基礎疾患に糖尿病を有する1 例(症例8)のみであった。術後1ヵ月目では、糖尿病(グリベンクラミド投与中であり、空腹時血糖130mg/dl、食後2時間300mg/dl)を有する症例8 と、プレドニゾロンの長期投与を伴う慢性関節リウマチを有する症例1のみは、抜歯窩の閉鎖は中央部に小孔を残す程度であったが、他の12名(86%)では抜歯窩の閉鎖が認められた。4)抜歯創の治癒評価(図4)術後1週目では2名(14%)の患者で抜歯窩の治癒が遅延したため(糖尿病を有する症例8と、プレドニゾロンの長期投与を伴う慢性関節リウマチを有する症例1 )、抜歯創の洗浄により対処した。術後2週目では症例1の抜歯窩は治癒傾向を示し、症例8も術後1ヵ月目には感染を認めず治癒に向かった。観察期間を通して感染のためテルプラグを除去した症例はなかった。5)最終的な抜歯窩の陥凹13名(92%)には陥凹、顎堤の吸収がなく、1名(8%)のみに軽度の陥凹、顎堤の吸収がみられたが、以後の処置に影響のない程度であった。6)最終的な骨修復全症例14名中、骨修復がみられる症例は12名(86%)、部分的であるが骨修復がみられる症例は2名(14%)であった。骨修復の見られない症例はなかった。7)総合評価全症例14名に対して総合的な評価をすると、有効性あり12名(86%)、項目によっては有効性あり0名(0%)、有効性なし2名(14%)であった。牛真皮由来アテロコラーゲンに起因するアレルギー反応は全症例において認められず、安全性に問題はなかった。2. 代表症例1)症例番号2:51歳、女性。5 、C4下肢血管性静脈炎でワーファリンを内服していた。ワーファリンを中止し、6 5 を同時に抜歯、5 のみにテルプラグを充頡 し 、縫合後止血した。6ヵ月後のエックス線写真では、5 の抜歯窩に十分な骨形成を認めた。一方、テルプラグを充頡 し なかった6 の骨形成は5 より少なかった(写真1a~c)。2)症例番号3:78歳、女性。457 、C4基礎疾患に肥大性心筋症がありペースメーカーを植え込み後で、小児用バファリンを内服していた。4日前より小児用バファリンを中止し、457を抜歯、5 のみにテルプラグを充頡 、 縫合したが、5は47に比較して容易に止血した。6ヵ月後のエックス線写真では、47 と比較すると5 の抜歯窩にはより多くの骨修復が認められた(写真2a~c)。3)症例番号4:74歳、女性。4 歯牙破折基礎疾患に虚血性心疾患、ネフローゼ症候群、高血圧、高脂血症、痛風があり、小児用バファリンとぺルサンチンが内服されていた。小児用バファリンとぺルサンチンを中止し、4 を抜歯、テルプラグを充頡 、縫合した。6ヵ月後のエックス線写真は、4 に十分な骨修復を示した(写真3a~c)。4)症例番号12:26歳、女性。5 完全埋伏歯矯正治療目的に智歯と第2小臼歯を抜歯した症例である。5 は完全埋伏、根尖は肥大し下顎管と近接していた。分割抜歯を行ったが、抜歯は困難で抜歯窩から出血を認めた。止血と歯槽骨の吸収を軽減させるためテルプラグを挿入、縫合した。6ヵ月後のエックス線写真では抜歯窩に十分な骨修復が認められた。抜歯部位の歯肉の陥凹はなかった(写真4a~c)。5)症例番号13:29歳、男性。8 8 完全埋伏智歯両側ほぼ同じ位置に埋伏した症例である。先に行った8 抜歯は容易であったが、8 の抜去はやや困難であり、周囲の骨の削除量が多かった。抜歯後テクリニカルリポート64%151050患者数(人)A:歯肉上皮が抜歯窩を閉鎖C:歯肉上皮による抜歯窩の閉鎖なしB:中央部に小孔を残す程度まで、歯肉上皮が抜歯窩を閉鎖術後1週術後2週術後1カ月36%71%21%7%86%14%図3 抜歯窩閉鎖の経時的な評価86%151050患者数(人)A:治癒不全なしB:処置の必要有り術後1週術後2週術後1カ月14%93%7%86%図4 抜歯創の治癒の評価ルプラグを充頡 し ガーゼで圧迫して止血を確認後、縫合した。テルプラグを充頡 し た8 の手術侵襲は8 よりも大きかったが、術後の疼痛は少なく、6ヵ月後のエックス線写真では、8 の方が骨修復は良好と思われた(写真5a~c)。考 察近年、狭心症、心筋梗塞のような虚血性心疾患や人工弁置換患者などが増加している3)。また、肝機能障害患者や糖尿病などの患者も進歩した各種治療法により全身症状が改善され、歯科外来へ受診する機会が増加している。出血や治癒不全などが懸念されるこれら患者の抜歯の際には、注意が必要である。このような場合、止血シーネが使用されているが、操作は煩雑である。一方、健常者においても、抜歯後の矯正治療や補綴治療のため、歯槽骨の吸収や歯槽堤の陥凹を可及的に防止することが必要な場合もある。テルプラグは仔牛真皮由来アテロコラーゲンを原料とし、線維化アテロコラーゲンと熱変性アテロコラーゲンの混合物をスポンジ状に加工したものであり、生体安定性・親和性に優れた医療材料とされている1)。皮膚・粘膜欠損部に貼付すると周囲組織から血管・細胞を侵入させ、自己組織の新生、成熟にともなって徐々に分解吸収される。このアテロコラーゲンスポンジを抜歯創に充頡 す るために砲弾型に加工したものがテルプラグである。抜歯が困難で、歯槽骨の損傷が強い抜歯創や抜歯後治癒不全、止血困難を起こす可能性のある抜歯創には、術後容易に使用できるテルプラグの臨床上での有用性が期待されている4)。今回、14症例にテルプラグを充頡 、 6ヵ月の観察期間中、デンタルX線写真を撮影して治癒過程を評価した。同側の臼歯2本を抜歯し、そのうち1本にテルプラグを充頡 し た患者では、抜歯後6ヵ月目にはテルプラグを使用した抜歯窩の方が良好な骨修復を示していると思われた(症例2、3)。両側の智歯を抜歯し、一側にテルプ写真1a 症例2、6 5 抜歯後、5 にテルプラグを充頡 した 。写真1b 症例2、65 抜歯後3ヵ月目のデンタルX線写真。写真1 c 症例2、65 抜歯後6ヵ月目のデンタルX線写真。テルプラグを充頡 し た5 は、充頡 しなかった6 より骨修復が良好と思われる。写真2a 症例3、457 抜歯、5 にテルプラグ充頡 時、 5は47と比較して容易に止血した。写真2b 症例3、テルプラグ充頡 後 抜歯後1週間目。歯肉上皮による抜歯窩の閉鎖はない。写真2c 症例3、テルプラグ充頡 後 6ヵ月目のデンタルX線写真。と比較するとの抜歯窩は良好な骨修復を示していると思われる。47555ラグを使用した患者でも、術後の疼痛は少なく、抜歯後6ヵ月目にはテルプラグ側の方が良好な骨修復があると思われた(症例13)。また、症例12は矯正目的に行う5 完全埋伏の抜歯であったが、歯の移動に必要な歯槽骨が保たれた。矯正目的に行う抜歯の際にも、テルプラグは抜歯後の歯槽骨吸収を軽減する効果があると思われる。コラーゲンには、血小板凝集作用があり、これにより止血効果を示すとされている5)。今回、検査値で凝固・線溶系因子の低下を認めた肝疾患や抗凝固薬剤使用者にテルプラグを使用したが、多くの症例で十分な止血効果を示した。テルプラグのみで止血した場合、、煩雑な止血シーネなどの作成操作を省略でき、トータルコストとしても安くすむため臨床上有意義である。しかし、血小板数が34,000/dlと減少、P T17.8秒、AP T T38.8秒と延長していた症例7ではテルプラグを挿入、縫合と床副子を用いても止血に10日間を要した。肝疾患の患者では、凝固・線溶因子の産生の低下によりPT、APTTの異常を認め、止血異常を起こすことがある。このような患者では、テルプラグと止血シーネを併用し、十分な術後の観察が必要と思われる。全症例14例の内12例に関しては、良好な創の治癒と骨修復を認めたが、問題点として2 症例で抜歯窩の治癒遅延を認めたことがあげられる。これらの症例では、上皮化の遅れや比較的長い期間術後の疼痛を認めた。症例8は、コントロール不良の糖尿病があり、症例1は慢性関節リウマチでステロイドの長期投与を受けている症例であった。糖尿病患者は感染を併発しやすく、慢性関節リウマチ患者もプレドニゾロン換算で1日5mg以上で1年以上のステロイド投与を行う時にはステロイド投与の量依存性重篤な感染症が有意に多く認められたと報告されている6)。オキシセル(酸化セルロース)、スポンゼル(ゼラチンスポンジ)など、一般的な止血材料を使用した場合、健常クリニカルリポート写真3a 症例4、4 抜歯後にテルプラグを充頡した。写真3b 症例4、4 抜歯後1週間目、中央部に小孔を残す程度まで、歯肉上皮が抜歯窩を閉鎖している。写真3c 症例4、4 抜歯後6ヵ月目のデンタルX線写真。4 の抜歯窩に十分な骨修復を認めた。写真4a 症例12、5 抜歯前のデンタルX線写真。完全埋伏で根尖は肥大し下顎管と近接しており、抜歯後の骨吸収により矯正治療が影響されると考えられた。写真4b 症例12、5 抜歯後6ヵ月目のデンタルX線写真。抜歯窩の骨吸収を軽減したと思われる。写真4c 症例12、5 抜歯後6ヵ月目。抜歯部位の歯肉の陥凹を認めない。人の抜歯窩においても治癒遅延を生じさせる場合がある。今回はそれらと直接比較していないが、少なくともテルプラグに起因する治癒遅延はなかったと思われる。しかし、これらの症例ではテルプラグの使用の有無に関わらず抜歯後の治癒経過に注意する必要はある。全症例14名に対して総合的な評価をすると、治癒遅延を認めた2名を除く12名に有効性があり、テルプラグは、抜歯後の歯槽骨吸収の軽減、抜歯後疼痛の予防、抜歯後出血などに対して、術後容易に利用可能な組織再構築型抜歯創用保護材であった。また、テルプラグを使用することにより術後リスクの高い患者のリスク回避、疼痛の緩和、トータルコストの削減に寄与することにより、患者のQOLを高める歯科用治療材料と考えられた。結 語14症例(抗凝固剤内服中の患者6名、肝疾患を伴う患者5名、埋伏歯を有する健常者3名)の抜歯創に対して、テルプラグを充頡 し 、6ヵ月間抜歯窩の治癒過程を観察した。12名の症例において、テルプラグを充頡 し た抜歯窩は、良好な創の治癒、骨修復を認めた。抜歯後疼痛の予防、抜歯後の歯槽骨吸収の軽減などに本材を使用することは有用であると考えられた。謝辞患者の経過観察にご協力いただいた青木真智子先生(福岡県北九州市戸畑区開業)、橋本光一先生(福岡県鞍手郡宮田町開業)に深謝します。参考文献1)水木信之、藤田浄秀 他:アテロコラーゲン製抜歯創用保護材(TRE-641)の臨床評価;ザ・クインテッセンス、15:220-238(1996)2)久野 淳、夏目長門 他:障害者へのアテロコラーゲン製抜歯創用保護材(TRE-641)の使用経験;障害者歯科 別冊、18:237-241(1997)3)藤内 祝:血液凝固異常患者の抜歯;歯科ジャーナル、39:29-33(1994)4)小西 淳、吉本 剛:アテロコラーゲン製抜歯創用保護材(TRE-641)の抜歯創に対する創傷治癒効果についての実験的検討;生体材料、16:266-275(1998)5)木次大介、児玉利朗 他:アテロコラーゲンスポンジの抜歯窩治癒過程に及ぼす効果について;日本口腔インプラント学会誌、10:52-61(1997)6) Saag K etal : Low Dose Long-TermCorticosteroid Therapy in Rheumatoid Arthritis ;An Analysis of Serious Adverse Events. Am JMed, 96:115(1994)写真5a 症例13、8 抜歯前のデンタルX線写真(テルプラグ充頡 側) 。写真5b 症例13、8 抜歯前のデンタルX線写真。写真5c 症例13、8 抜歯後6ヵ月目のデンタルX線写真(テルプラグ充頡 側 )。8 の骨削除量は8よりも多かったが、テルプラグを充頡 した8 の方が骨修復は良好と思われる。写真5d 症例13、8 抜歯後6ヵ月目のデンタルX線写真。