1分間のストローク数が2000～3000の簡単な往復運動から始まった電動歯ブラシは、回転運動、上下へのタッピング運動を経て30000～40000ストローク／分で高速運動をする電動歯ブラシに進化しています。これらの高速運動の電動歯ブラシは、音波歯ブラシあるいは音波振動歯ブラシと呼ばれ、電動歯ブラシ市場を活気づけています。
ここで紹介いたしますDENT. EX systema ultrasoni c（図1） は、1.6MHzの超音波が発振されると共にスーパーテーパード毛（図2）を植毛した替えブラシ部が17000ストローク／分で微振動する全く新しいタイプの電動歯ブラシです。

超音波は、正常な聴力を持つ人には聴感覚を生じないほど周波数の高い音波のことであり、一般的には20000Hz以上の周波数を有しています。
この超音波を発生させるためには、電極間に挿入し電圧を加えると厚みが厚くなったり薄くなったりする圧電効果を有するクォーツなどの単結晶、ジルコン酸チタン酸鉛（通称PZT）系のセラミックス、ポリ弗化ブニリデンなどの高分子材料が用途に応じて使用されています。
DENT.EX systema ultrasonic は電動ブラシ本体のヘッドにPZTセラミックスが内蔵され、1.6MHzの超音波が発振されます（図3）。

一般に20000Hzが音波と超音波の境界ですが、現状の技術では上限は数GHz（ギガヘルツ）レベルの超音波を発生させることは可能です（表1）。
超音波の周波数が変ればその性質も異なり、応用も異なってきます。
歯科領域では既に20KHz～50KHzの低周波超音波に属する超音波を用いたスケーラー、根管洗浄器などが使用されていますが、DENT.EX systema ultrasonic のように1.6MHzという高周波領域の超音波を応用した製品は初めてです。
超音波の代表的な応用に洗浄があります。超音波洗浄のメカニズムは非常に複雑で解明されていない部分もありますが、一般には超音波の加速度エネルギー、直進流エネルギー、キャビテーションによる気泡破壊時のエネルギーが相乗的に作用すると考えられています。
キャビテーションとは、液体中に加えられた減圧力によって空洞を生じる現象で無数の気泡となって現れます。この空洞（cavity）が消滅するときに非常に大きな圧力が発生し、汚れを剥ぎ取ると考えられています。
このキャビテーションは、低周波超音波領域で観察される現象で所謂「超音波洗浄器」の原理です。しかし、表面をエッチングするおそれがあるために1MHz程度の高周波超音波が洗浄に応用されることもあります。
高周波領域の超音波では、キャビテーションは発生せず加速度エネルギーによる洗浄が支配的であり、用途、目的によって適宜使い分けられています。
なお、洗浄媒体に与えられる加速度aは次式で表せます。
a ＝（ 2πf ）²・ε （1）
ε：媒体の振動変位
f ：周波数

ブラシヘッド部が30000～40000ストローク／分のように高速で往復運動する電動ブラシを、周波数に変換しますと250～333Hzとなり、音波領域の周波数に属すことから音波歯ブラシあるいは音波振動歯ブラシと呼んでいます。
このように往復運動タイプの電動歯ブラシの高速化を可能にしたのは、磁石の引力・反発力を利用するリニアーモーター技術の応用によるものです。
ブラシヘッド部が高速で往復運動することで介在する唾液などの水分が激しく動き（攪拌水流）（図4）、この水分の動きが直接毛先の届かない歯表面のプラークを除去するとされています。
しかしながら、この攪拌水流も遮蔽物があるとその先には届きにくく、例えば歯周ポケットの内部までは届かないと考えられます。
次に、周波数260Hzと1.6MHzを「洗浄作用」の観点から物理的に比較します。
波長λ(m)（図5）と周波数f (Hz)（図6）の関係は次式で表せます。
λ(m) ＝ V (m/s )/f (Hz) （2）
V：音速
洗浄は通常水中で行われることから、水の中での音速1480m/sを用いて各々の周波数における波長を計算します（表2）。
すなわち、超音波は音波に比べて非常に波長が短く、水流や攪拌では届きにくい複雑な形状や狭間部に到達していきます。
また、先に述べました（1）式を用いて洗浄媒体に与えられる加速度を比較しますと、周波数1.6MHzは260Hzの周波数の約3700万倍の加速度を与えていることになります。
すなわち、超音波が到達性と洗浄性に優れた手段であることがわかります。

1.6MHzの超音波を発振するという従来にない新しいタイプの電動歯ブラシDENT.EX systema ultrasonic も基本的には毎日使用されるべき日常の予防歯科用品です。
したがいまして、使い勝手の良さは重要なポイントです。
本品の使用性につきましては、歯科衛生士から図7のような評価が得られています。
軽くて持ちやすく、振動音も気にならず毎日使用する道具としての要件を備えた電動歯ブラシと言うことができます。
また、本品は、超音波発振という主機能のほかにサブ機能として毎分17000回でブラシヘッドが往復運動しますが、その振幅は0.2mmと小さく、細くてしなやかなスーパーテーパード毛と相俟って、非常に優しい磨きごこちを実現しています。
したがいまして、歯周病のポケットコントロールの他に高齢者や障害をお持ちの方のプラークコントロールの手段としても推奨いただけます。

本品DENT.EX systema ultrasonic は、Sonex社（ニューヨーク州、アメリカ）のUltraSonex（周波数1.6MHz）をベースに開発された電動歯ブラシです。
アメリカでは、一般市販用超音波装置についても超音波に暴露される生体の安全性を確認し、FDAの承認を取得することが義務付けられています。
軟組織、骨、頭蓋骨における温度上昇が1℃以内であることが条件であり、UltraSonexは、これをクリアーしています。
すなわち、DENT.EX systema ultrasonmic は、人体に対して安全であることが確認された製品であると言うことができます。

近年、高齢者の中に細動除去器を装着している人が増えてきています。心臓にこの細動除去器やペースメーカーを取りつけていられる方は、これらの機器が誤作動する可能性がありますのご使用にならないようお願いいたします。
また、これらの機器を取り付けている方のそばでは、ご使用にならないでください。