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118号 SUMMER 目次を見る

TECHNICAL REPORT

歯冠用硬質レジン「エプリコード」と「クロマゾーンカラーステイン」を用いた審美修復の可能性について

千葉 慎太郎

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■目 次

■はじめに

硬質レジン前装冠が保険診療に導入され、レジン=保険というイメージがあり、一般的に、いかに簡便にして、築盛するかということが浸透してしまった。
しかしながら、硬質レジンにも、付加価値を持たせ、差別化を与えることが今日の技工士の課題でもある。
今回は、歯冠用硬質レジン「エプリコード」(図1)と「クロマゾーンカラーステイン」(図2)を用い、A3をベースにキャラクタライズを行いながらの色調表現法をステップごとにイラストをまじえて紹介する。

  • [写真] エプリコード
    図1 エプリコード
  • [写真] クロマゾーンカラーステイン
    図2 クロマゾーンカラーステイン

■硬質レジン前装冠ステップ

【ワックスアップからメタルフレームの処理】

WAXでの歯冠回復、特に舌側を丁寧に行う。
リテンションビーズは、接着材の表面が光らなくなってから振りかけ、乾いてから埋没。タイミングが早いと、アンダーカットが埋まり、埋没の時ビーズが流れ落ちるので注意する(図3)。
鋳造後にリテンションビーズの重なりをチェックし、ビーズ1個分の高さに合わせる。
築盛スペース確保のため、大きく削るのは、ビーズの表面積を減らし、レジンと金属の接着を弱くするので注意する。その後、弱い圧力(2気圧以下)によるアルミナサンドブラスト処理を行う(図4)。
貴金属の場合は金属接着性プライマーのアロイプライマー(図5)・オペークプライマー(図6)の順に塗布する。両方とも自然乾燥、または弱いエアーにて乾燥させる。
オペークプライマーはオペークと接触することにより化学重合を起こす性質があるので、オペークを塗布する際には必ず用いる。

  • [写真] 埋没の時ビーズが流れ落ちるので注意す
    図3
  • [写真] 弱い圧力(2気圧以下)によるアルミナサンドブラスト処理を行
    図4
  • [写真] アロイプライマー
    図5 アロイプライマー
  • [写真] オペークプライマー
    図6 オペークプライマー
【オペーク塗布】

オペーク(OA3)を塗布する。
1次オペークでは、ビーズ間にしっかりオペークを入れる。ドライヤー等にて、フレームを暖めてから塗布すると、面白いように上手く行く。
2次オペークで全体を仕上げる。この時点で、まだビーズの頭が見えている時やマージンのブラックラインは、無理せずに3次オペークで処理する。
無理に2次オペークで仕上げようとすると、3回で仕上げるより、全体が分厚くなり、後のレジン築盛スペースが少なくなるので注意する(図7)。
3次オペークでサービカルオペーク(CO1)を歯頸部、インサイザルオペーク(IO1)を切端部に塗布し、2次オペークの不足部位を仕上げる。
オペークによるフレーム内面への進入を注意し、その都度チェックする(図89)。

  • [写真] 無理に2次オペークで仕上げようとすると、3回で仕上げるより、全体が分厚くなり、後のレジン築盛スペースが少なくなるので注意す
    図7
  • [写真] オペークによるフレーム内面への進入を注意し、その都度チェックする
    図8
  • [写真] オペークによるフレーム内面への進入を注意し、その都度チェックする
    図9
【ボディペーストの築盛】

サービカル(CE1)の築盛は、完成時にオーバーカントアーにならないように注意する。(図10)。
オペーシャスデンチン(ODA3)はなるべく薄い層(0.2~0.3mm)で仕上げ、ボディ形態の核になる形にする(図11)。
デンチン(DA3)の築盛をする(図12)。
透明に抜ける部分の形を形成する。エプリコードのペースト特性として鋭い先端の形を形成しても、ペーストの垂れが起こらない(図13)。

  • [写真] サービカル(CE1)の築盛は、完成時にオーバーカントアーにならないように注意する
    図10
  • [写真] オペーシャスデンチン(ODA3)はなるべく薄い層(0.2~0.3mm)で仕上げ、ボディ形態の核になる形にする
    図11
  • [写真] デンチン(DA3)の築盛をする
    図12
  • [写真] 透明に抜ける部分の形を形成する
    図13
【クロマゾーンカラーステインによるキャラクタライズ】

クロマゾーンカラーステイン各色。
単色または数種類混ぜ合わせながらペーストを築盛する。
表面の未重合が少なく使用しやすい(図14)。
ヘアーラインの入れ方は、重合前にデザインナイフで切れ込みを入れ、そこにリペアリキッドで揺るく練ったクロマゾーンカラーステインのレディッシュブラウンを流し込み、軽く切れ込みを両脇から押さえて、溢れたステインをきれいな筆で拭い取る(図15)。
ステインのホワイトとクリアペーストを混ぜ、白帯を作り築盛する。
その後、ステインのオレンジとブラウンを混ぜ、白帯の上下に薄く塗布する(図16)。
透明感の強い部分にエナメル(E1)を築盛する(図17)。
ホワイトとイエローで切端にステインする(図18)。

  • [写真] クロマゾーンカラーステイン各色
    図14
  • [写真] 溢れたステインをきれいな筆で拭い取
    図15
  • [写真] ステインのオレンジとブラウンを混ぜ、白帯の上下に薄く塗布する
    図16
  • [写真] 透明感の強い部分にエナメル(E1)を築盛する
    図17
  • [写真] ホワイトとイエローで切端にステインする
    図18
【特殊ペーストの築盛から最終築盛】

隣接部にエフェクトのトランスブルー(TB)、歯頸部にサービカルトランス(CT)、切端部中央にアンバー(AM)を築盛する。
ヘアーラインと同様の方法でエナメルクラックを入れる(図19)。
切端に築盛したアンバーの上からトランスペアレント(T)、隣接部にボディペースト(DA3)を築盛。
最終重合は、透明容器にグリセリンを入れ、仮重合した補綴物をゆっくり沈めて行うと、表面に未重合層が無くなり、形態修正に移行しやすい(図20)。
形態修正にはカーボランダムポイントを使用するが、深い傷が付かないようにポイントを低速でドレッシングすると良い。次にシリコンポイントPB No.13(マニー)をかけ、細かい表面性状を確認する(図21)。
研磨に研磨材 レーズ研磨の場合はP-マルチソフト(モリタ東京製作所)(図22)、エンジン研磨の場合はP-マルチハード(モリタ東京製作所)(図23)を用い歯頸部や隣接面は特に滑沢にし、テルキジンにて艶出しを行う。
完成(図2426)。

  • [写真] ヘアーラインと同様の方法でエナメルクラックを入れる
    図19
  • [写真] 切端に築盛したアンバーの上からトランスペアレント(T)、隣接部にボディペースト(DA3)を築盛
    図20
  • [写真] シリコンポイントPB No.13(マニー)をかけ、細かい表面性状を確認する
    図21
  • [写真] P-マルチソフト
    図22 P-マルチソフト
  • [写真] P-マルチハード
    図23 P-マルチハード
  • [写真] 完成
    図24
  • [写真] 完成
    図25
  • [写真] 完成
    図26

■おわりに

以上、エプリコードとクロマゾーンカラーステインを用いて硬質レジン前装冠のイラストを交えながら技工ステップを紹介したが、国内外メーカーから多数の硬質レジンが発売されていることから、個々の製品の特性を理解し、それに合った築盛方法を身に付けることが大切である。

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