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TRENDS

ノリタケカタナジルコニアフレーム&セラビアンZ R

梶田 範行/冨 博和

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■目 次

本稿では、6月21日より日本国内において販売が開始されたジルコニアフレーム製作システム「カタナ」について、本邦発売より一足早く2006年3月より導入し、多くの実績を有するカスプデンタルリサーチ(米国・ボストン)からのリポートにより、システムの特長や、臨床応用の注意点などをご紹介させていただきます。

  • [写真] ノリタケカタナジルコニアフレーム&セラビアンZRによる臨床
    ノリタケカタナジルコニアフレーム&セラビアンZRによる臨床
  • [写真] 各種ノリタケカタナジルコニアフレーム
    各種ノリタケカタナジルコニアフレーム

■はじめに

オールセラミックスの流れ

アメリカでのオールセラミックスは、1980年代後半、それまで患者さんの審美的要求を満たすために行われていたレジンやコンポジット等によるラミネートベニアに代わり、ポーセレンのラミネートベニアを製作する技術が開発され、一般に広く知られるようになりました。もちろんインレー、オンレー、クラウンといった補綴物も同様に用いられていきました。この時に使用されていたポーセレンの材料はほとんどが長石系ポーセレンによるものでした。
その後、1990年代前半頃から加工が比較的容易なプレステクニックが紹介され、1990年代中頃から大きく普及し、インレーもしくは単冠クラウンまでの補綴を、メタルフリーで製作する機会が増えました。また、ほぼ同じ時期にこれらの単一の材料で補綴物の製作をする流れとは別に、メタルフレームの代わりにセラミック製のフレームを用いる技術が生まれ、酸化アルミニウム(アルミナ)製のフレームを使用する方法から本格的に普及が始まったこの技術は、現在、酸化ジルコニウム(ジルコニア)フレームを使用する補綴物へと大きく移行し始めています。
欧米でオールセラミックスを用いた補綴物の割合が急増している理由としては貴金属材料の高騰であるとも言われていますが、なによりも患者さん自身の審美的要求(メタルフリー)が高くなってきたこと、生体親和性にすぐれていて金属アレルギーの心配が少ないことが脱金属を促進したとも言われています。2005年度のある統計資料ではノースアメリカにおいて、すべてのクラウンブリッジのうち、約20%がオールセラミックスを用いているとの報告もあります。

オールセラミックスの現在

現在、オールセラミックス補綴物に使用される材料として、インレー、オンレー、そしてラミネートベニアにおいては微細な色調表現が可能なことより、従来からの長石系ポーセレンが主に用いられてきましたが、最近、特に大量生産において初心者でも製作が容易なことからプレステクニックも多く利用されてきています。
クラウンブリッジにおいては、長石系ポーセレン、プレステクニックを用いたクラウンもありますが、強度特性上適応症例の範囲が限られるため、より強度特性に優れているジルコニアフレームが主流になりつつあり、今後も増加するといわれています。
これらのケースは従来セラモメタルクラウンで行っていたものがジルコニア(フレーム)クラウンへと代わっているといえます。もちろん、アルミナフレームを使用することもありますが、単冠の補綴が主流で、ブリッジではほとんどのケースがジルコニアフレームで製作されています。
ジルコニアフレームがここ2~3年で急速に普及した理由には、やはり大臼歯部の補綴やブリッジが強度的に安心して行えるようになり、セラモメタルクラウンで補綴可能な部位ならば、同様に使用することが可能になったことが挙げられます。強度的には金属材料に匹敵し、セラモメタルクラウンの金属フレームに代わる材料“白い金属”と呼ばれています。これらジルコニア材料の加工技術を支えているものがCAD/CAMテクノロジーです。
今まで多くのケースをセラモメタルクラウンにて製作していたものをすべてジルコニアに変更し、メタルフリー、生体親和性をアピールする歯科医院も数多くでてきています。

ジルコニア材料について

従来ジルコニア材料には大きく分けて3種類の加工方法があります。
1番目は支台歯模型にジルコニアパウダーを射出し、一定の圧力下で加工、焼成されるタイプです。この方法ではブリッジフレーム(ポンティック)の加工が難しいため、主に単冠(コーピング)の加工にのみ適しているといわれています。
2番目に「HIP」と言われる完全焼結したジルコニアブロック(プレート)をミリング加工するタイプです。この方法は既に焼結が完了しているブロックを等倍で加工するため、適合が優れていると言われています。しかし問題点としては、ミリング加工時に例えば3本ブリッジであっても約9時間も要し、使用するバーも消耗が激しいことから多くの症例には対応できない、加工コストが高価となるなどと指摘されています。
3番目は1,000℃前後で半焼結させたブロックをミリング加工し、その後1,350~1,550℃で本焼結する2回焼結法です。この方法は加工が容易ですが、問題点としては半焼結した時点でブロックごとの収縮率にばらつきが生じており、そのため、各ブロックにバーコードなどを用いて半焼結状態を記録し、ミリング時に拡大率(収縮率)を調整する必要があるため、適合状態が不安定になる可能性は否めません。
「カタナジルコニアフレーム」はこれらの製品とは異なり、特殊なパウダー調整処理を施し焼結することなく製造されたブロックを、ミリング加工後に1回のみ焼結する独自の製造技術を採用しています。これにより焼成収縮率が約21%と常に安定した収縮率がえられ、適合の良いフレーム製作が可能となりました(図1a、b)。
本稿ではカスプデンタルリサーチ社における臨床経験をもとにシステムの特長やより優れた補綴物を完成させるための作業上の注意点などについて紹介します。また、併せて既に発売されているジルコニアフレーム焼付用陶材「セラビアンZR」の使用方法についても紹介します。

  • [写真] ノリタケカタナジルコニアブロック
    図1a ノリタケカタナジルコニアブロック
  • [図] 収縮の比較
    図1b 収縮の比較

■「カタナシステム」について

「カタナ」とはジルコニアフレームを製作するためのCAD/CAMシステムの名称で、レーザースキャナー「ノリタケカタナSC-1」(図2a)、ミリング加工装置「ノリタケカタナML-1」及びジルコニアブロック「ノリタケカタナジルコニア」を指します。
ノリタケデンタルサプライ社で開発されたカタナシステムは、臨床テストを経て2006年3月よりアメリカにおいて販売が始まりました。ミリングセンターとしてはカスプデンタルリサーチ(図2b)の他、コロラド州デンバーのCustom Milling Center社(図2c)の2箇所に生産拠点があります。
カタナジルコニアの組成はジルコニア(ZrO2)94.4%にイットリア(Y2O3)を5.4%含んだもので部分安定化ジルコニアと呼ばれるものです。
物性は熱膨張係数が10.5(50-500℃ 10-6K-1)、曲げ強度が1200MPaです(図3a、b)。

  • [写真] ノリタケカタナSC-1
    図2a ノリタケカタナSC-1
  • [写真] カスプデンタルリサーチ
    図2b カスプデンタルリサーチ
  • [写真] Custom Milling Center
    図2c Custom Milling Center
  • [写真] 組成
    図3a 組成
  • [写真] 物性
    図3b 物性

■ノリタケカタナSC-1・スキャナーについて

スキャン終了後のイメージを見て下さい(図4)。
基準値としてコーピングの厚みは前歯部で0.4mm、臼歯部では0.5mm以上、ブリッジの連結部分は9mm2以上の断面積にて設計および製作されます。
マージンラインの自動認識はもちろんのこと、支台歯と隣在歯のサイズを自動的に認識し、あらかじめ用意された歯冠形態のライブラリーから最終形態が選ばれ、回復されています。さらにカタナシステムでは対合歯との咬合関係も読み込むことができます。
特にオクルーザルクリアランスが多いケースやブリッジワークなどでは、この機能を利用し容易に理想的な歯冠形態をもとに均一なポーセレンサポートが得られるフレームが「シュリンクデザイン」機能によって得ることができます。これはカタナシステムの特長の一つでもあります(図5)。
また、「シュリンクデザイン」機能を活用することによって舌側や近遠心のリンガルカラー(サポート形状)も容易にデザインすることができます。特に臼歯部においては、咬合圧に対してフレーム形状が適切でないことが原因と推察される歯冠陶材のチッピングや剥離などトラブルの多くを防止することができると思います(図6a、b)。
フレームカラーは9つのシェードが用意されています(図7)。フレームカラーはセラビアンZRとの組合せによって最良の色調が再現されるとともに、ミリング加工後に着色するのではなく、予めブロックの製造時に顔料を混ぜ合わせているので色ムラもなく、形態調整など、フレームを削合した部分が白くなってしまったというようなトラブルは一切ありません。
フレームが着色されることにより、歯頸部付近の「白浮き」が改善されより自然感のあるオールセラミッククラウンの製作が可能となります。

カタナシステムの特長
  • 1. フレームカラーが9種類用意されている(図7参照)
  • 2. 6本ブリッジまでの症例に対応(スキャンニング可能範囲は57mm以内)。
  • 3. フレームワークは自動的にデザインされた最終形態によりチェックされる。
  • 4. シュリンクデザイン機能(最終補綴形態を予測し陶材の築盛スペースを適切化する)
  • 5. リンガルカラー(サポート形状)を付与できる。
  • 6. セラビアンZRとのマッチングに優れる。
  • [写真] 通常のフレームデザイン
    図4 通常のフレームデザイン
  • [写真] シュリンクデザイン
    図5 シュリンクデザイン
  • [写真] サポート形状あり
    図6a サポート形状あり
  • [写真] サポート形状なし
    図6b サポート形状なし

■支台歯形成時の注意点

歯科医院へは(株)ノリタケデンタルサプライ社から提供される「プレパレーションガイド」を必ず配布し、支台歯形成に関する注意事項として案内する必要があります。
特に、技工士の技量に委ねる部分の少ないCAD/CAMシステムにより、適合の良いジルコニアフレームを製作するための諸条件を適切に理解いただくことが非常に重要になります。
特に留意することとしては、①マージンはシャンファー形成としてください。ナイフエッジ、あるいはフェザーエッジはスキャン画面上でマージン位置の確定が難しいため適合不良となるばかりか、咬合圧に対する支え(サポート)が無いため歯冠陶材が剥離(チッピング)しやすくなります。また、シャンファー形態が十分であってもマージン付近にアンダーカットが残っていると、ブロックアウトしなければならず結果的に形成不足と同様になってしまいますのでこれも好ましくありません。
②ジャンピングマージンや頬舌マージン部と隣接面の高低差が大きな形成は、いずれも適合精度が不利になりかねませんので注意が必要です。
③前歯部の切端、臼歯部の偶角部などは角が残らないように丸みを与えて形成を行って下さい。臼歯咬合面はできる限りフラットな形態にし、コーピングを撓ませる力が掛からないような形成が望ましいです。
④軸面は5~15°のテーパード形状が理想的です。パラレル(5°以下)の場合、石膏模型の肌荒れなどが干渉部分としてアンダーカットだと認識してしまい、適合がルーズになります。また、軸面及び臼歯咬合面へのグルーブはいずれも適合不良と破折の原因となりえますので、注意が必要です(図8)。

  • [写真] KATANA シェード
    図7 KATANA シェード
  • [図] プレパレーションガイド
    図8 プレパレーションガイド

■作業用模型製作時の注意点

作業用模型の製作に関しても、適合の良いジルコニアフレームを製作するためには諸条件を適切に理解いただくことが非常に重要です。特に重要であることとしては、
①歯列模型は、ノリタケスーパーロック・ニュートラルグレー色などの淡い色調の超硬石膏で製作する。
②スキャンニングに際しては分割模型でかつ各支台歯や隣在歯および欠損部粘膜面など、それぞれが着脱できるようダウエルピンを植立する。インプラントのカスタムアバットメント上にコーピングを製作する場合もダウエルピンを植立するか、必要に応じて模型をデュプリケートし分割模型を製作する。
③咬合器にマウントをする際にはスプリットキャストもしくはピンを使用するなどして2次石膏部分とマウントの石膏部分が分割できるようにして下さい(図9)。
④マージンラインは印記しないで下さい。マージンショートの原因になります。
⑤模型表面硬化剤は使用しないでください。不適合の原因になります。
センターより届けられたフレームの調整を行う際は、削合時の局所加熱による破折を防止するために、必ず注水下でダイヤモンドポイントなどを使用し慎重に行います。調整終了後の清掃はアセトンまたはアルコール中で超音波洗浄を行います(図10a、b)。

  • [写真] スプリットキャスト法
    図9 スプリットキャスト法
  • [写真] 注水下での形成
    図10a 注水下での形成
  • [図] テクニカルガイド
    図10b テクニカルガイド

■ノリタケカタナジルコニアフレーム&セラビアンZRを用いた臨床ステップ

写真1~15にノリタケカタナジルコニアフレームとセラビアンZRを用いた臨床例を示します。

ノリタケカタナジルコニアフレーム&セラビアンZRを使用した臨床例
  • [写真] マージン部を移行的に整え、適切な厚み(0.4mm)と十分なサポートを残し調整されたカタナブリッジフレームワーク
    写真1 マージン部を移行的に整え、適切な厚み(0.4mm)と十分なサポートを残し調整されたカタナブリッジフレームワーク。
  • [写真] フレームの色調補正のため、Shade BaseA2をセラビアンフォーミングリキッドで練和し筆で盛るように築盛する
    写真2 フレームの色調補正のため、Shade BaseA2をセラビアンフォーミングリキッドで練和し筆で盛るように築盛する。
  • [写真] 築盛の際、軽くコンデンスを行いながら築盛すると、均一な厚みを得ることができる
    写真3 築盛の際、軽くコンデンスを行いながら築盛すると、均一な厚みを得ることができる。
  • [写真] Shade Base焼成後
    写真4 Shade Base焼成後。むらなく仕上げるには少なくとも2回の築盛が必要となる。
  • [写真] 透過光による写真
    写真5 透過光による写真。Shade Base焼成後のフレームは一見不透明に見えるが、十分な透過性を持っているのがこの写真から見てとれる。この光を反射し透過させる“半透明性”がShade Baseの最大の特長でもあり利点でもある。
  • [写真] 切端部と隣接部を築盛する
    写真6 中切歯にA2B、側切歯にA2BとA3Bを50:50で混合したもの、犬歯にA3Bを築盛し、E2で切端部と隣接部を築盛する。
  • [写真] 焼成後
    写真7 焼成後。表面に十分な艶があれば理想的な焼成状態と言える。
  • [写真] インターナルステイン塗布のため、表面を軽くならし、サンドブラスター処理を行う
    写真8 インターナルステイン塗布のため、表面を軽くならし、サンドブラスター処理を行う。
  • [写真] インターナルステインによる個性的表現
    写真9 インターナルステインによる個性的表現。目標とする基本色から大きく外れないよう患者の希望と年齢に応じたキャラクターを創造する。
  • [写真] 歯冠全体を覆うように築盛
    写真10 各種ラスターポーセレンにて歯冠全体を覆うように築盛。
  • [写真] 焼成
    写真11 焼成。
  • [写真] 形態修正後、グレーズ焼成
    写真12 形態修正後、グレーズ焼成。
  • [写真] 完成された補綴物
    写真13 a / b 完成された補綴物。
  • [写真] 完成された補綴物
  • [写真] 透過光写真
    写真14 透過光写真。ラスターポーセレンによるオパール効果と理想的な半透明性を示す。
  • [写真] 口腔内装着後
    写真15 口腔内装着後。Shade Baseにより自然な明るさが得られ、インターナルステインとラスターポーセレンにより生命感あふれる透明感が達成された。

■まとめ

今回ご紹介したカタナジルコニアフレームはセンター方式で日本でもサービスが開始されました。歯科技工の現状は、ほぼすべての工程を歯科技工士の手によって行われる労働集約型産業です。その中でコーピング製作は熟練を要する技術の一つです。しかし、CAD/CAM技術の向上により適切な支台歯形成の上にフレームデザインを適正に行えば、自動化が可能な分野となりました。
さらにこれらをアウトソーシング(外部委託)することにより、熟練を要する歯科技工の工程を歯冠回復、咬合の回復に集約することができ、歯科技工士の負担軽減、作業の単純化が可能となり、人材育成の負担も軽減できます。CAD/CAM技術は、今後ますます人材不足となる歯科技工業界の一助となると考えます。

参考文献
  • 1) 山田和伸:材料特性を踏まえたジルコニアコーピング築盛法 -ジルコニア築盛専用陶材「ノリタケCZR」の臨床応用- ; QDT 31(11)1398-1412, 2006.
  • 2) 斉藤 勇:Best of Digital -ZENO Tec System & Ziroxの可能性- ; QDT 31(12)1556-1566, 2006.
  • 3) Richard Palmer:DIGITAL transitions ; dental lab products 32(2)16-22, 2006.

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