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126号 AUTUMN 目次を見る

CLINICAL REPORT

IPMP配合「システマ薬用“デンタルリンス”&“歯間ジェル”」の有効活用

加藤正治

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■目 次

■1. セルフケアに注目

医科の疾病予防と異なり、う蝕や歯周病の予防や改善のために大多数の人がセルフケアを毎日行っているという事実は、歯科の大きな特長である。最近は予防関連製品が充実し、一般市場には日々新商品が登場している。そして、ほとんどの人がTVのCMやイメージ、うたい文句を参考にスーパー、コンビニ、ドラッグストア等で買い求めているのが現状である。
しかし、歯科医院に足を運んで下さる方には、その方に合ったものを使用していただくことで、予防だけでなく治療やメンテナンスの様々なステージで効果を上げることができるであろう。そのためには、我々歯科医療従事者がもっとセルフケア用品の積極的利用に力を入れる必要がある1)

■2. システマ薬用“デンタルリンス”&“歯間ジェル”の導入効果

ライオンのシステマには、一般市販品と歯科用のDENT.商品群がある。歯科用は殺菌剤や抗炎症剤などが増量配合されているため、状態に応じて治療段階から積極的に取り入れることで効果が得られやすい。
システマデンタルリンス(図1)と歯間ジェルの最大の特長はIPMP(イソプロピルメチルフェノール)が配合されていることである。IPMPはバイオフィルムに浸透して殺菌効果を発揮するところが他の殺菌剤と異なる点で2)、細菌をターゲットにした歯周内科治療や補綴修復の各ステージでも活用する機会は多い。もともとこのようなセルフケア用品については、基本的には患者さんまかせで、一回はお薦めしたものを購入しても使い切ると、またスーパーや薬局などで買い求めているケースも多いのではないだろうか。
当院では、数多くのケア用品の中から状態に合ったものを選択し、チェアサイドで選択した理由と使い方を説明してお渡しする「院内処方」という認識でセルフケア用品を購入していただいている。
これは、患者さんに予防だけでなく治療の一部を自分で担うという感覚をもってもらうように意図しているものである。発症している人は予防のためのブラッシングではなく、明らかに治療の一環としてのブラッシングと捉えるように指導し、また発症していなくても感染が疑われるケースには細菌をターゲットにしていることを伝えて積極的にIPMP製剤配合製品を取り入れている。
たとえばシステマデンタルリンスはセルフケアが不得手な方、不十分な方やリスクファクター保有者などのハイリスク層にも受け入れられやすい。ノンアルコールタイプは低刺激により高齢者や唾液量の少ない症例にも適応するため、当院での処方はほとんどノンアルコールタイプとなっている。
80mLサイズ(図2)は携帯用というだけでなく、毎回の歯周治療前後にも処方しやすいサイズであり、また450mLボトルで継続していただくためのステップとしても活用している。
一方、同じくIPMP配合の歯間ジェル(図3)は滞留性がよいため日常的な歯間部の清掃用としてだけでなく、治療中の清掃不良になりやすい部位や、炎症のある歯肉等の歯周ケアの目的部位にワンタフトブラシとともに処方している。研磨剤無配合で、潤滑効果があるため、歯磨剤をつけないブラッシングよりも微細な粘膜の損傷やそこからの感染を防ぐことができる点で活用範囲が広く患者協力を得るためのツールとしても重宝している。
このようなセルフケア用品の処方をルーティン化するためには検査データや情報を集め、投薬と同じように処方する感覚を持って臨むことが大切である。これによってセルフケア用品は治療の一助となり、その成果は治療成績の向上や治療期間の短縮だけでなく患者意識の向上をもたらす結果、物販の売上額にあらわれてくることは医院にとってもメリットがある。

  • システマ薬用デンタルリンスは液剤の浸透性と簡便性の利点を活かして適用症例が幅広く、セルフケア導入が容易である。
    図1 システマ薬用デンタルリンスは液剤の浸透性と簡便性の利点を活かして適用症例が幅広く、セルフケア導入が容易である。
  • 80mLサイズのデンタルリンスは工夫次第で院内処方の有力商品となる。
    図2 80mLサイズのデンタルリンスは工夫次第で院内処方の有力商品となる。
  • システマ歯間ジェルはその滞留性を活かし、ワンタフトブラシと併用して的を絞った使用法が有効である。
    図3 システマ歯間ジェルはその滞留性を活かし、ワンタフトブラシと併用して的を絞った使用法が有効である。

■3. 細菌を指標にした歯周治療をサポート

細菌を見ながら治療やメンテナンスを進める内科的な治療が歯科においても重要視されつつある。
当院においても、位相差顕微鏡による運動性菌の観察(図4)やBML等の検査機関を利用した歯周病関連細菌検査の導入により、従来のポケット測定や出血点等の歯周組織検査から始めるスタイルから、感染状態を把握してから初期治療を行う細菌を指標にした歯周治療へ転換している。
医院側が、先ず細菌をターゲットにした歯周治療に目を向けることで、患者さん側にも細菌を意識したアプローチを受け入れてもらうことが可能となった。とくにIPMP製剤は前述のとおり、バイオフィルムを形成する細菌にアタックすることを目的としていることを理解納得していただくためには、ポケットデータを提示するよりも細菌の動画を比較できるようにデータベース環境を整えることが必須である(図5)。
院内において細菌を指標にすることが可能となれば、IPMP製剤の使用目的が明確になり、歯周内科治療の一部として除菌後の効果を維持する目的で使用を薦めることができる。また、抗菌内服薬が効かない症例には、バイオフィルムの機械的破壊と併用することで有効性を示していくことができる。

  • 位相差顕微鏡による運動性菌の観察は歯周治療の指標となり、スクリーニングとしても有益な判断材料となる。
    図4 位相差顕微鏡による運動性菌の観察は歯周治療の指標となり、スクリーニングとしても有益な判断材料となる。
  • 位相差顕微鏡の観察記録は、動画としてデータベースに入力し、いつでも比較できるように管理することが細菌をターゲットにした治療には欠かせない。
    図5 位相差顕微鏡の観察記録は、動画としてデータベースに入力し、いつでも比較できるように管理することが細菌をターゲットにした治療には欠かせない。

症例1:高血圧、糖尿病で歯周疾患のコントロールが難しくなっている症例(図6)。インプラントも3本埋入されていたが、過去に1本失っている。初診時、位相差顕微鏡で運動性菌の活発な動きが観察されたため(図7)、BMLにて歯周病関連細菌について調べたところ、Pg菌がハイリスクで検出された(図8)。そこでPg菌のバイオフィルム形成抑制に対する効果が報告されているアジスロマイシン(ジスロマック:ファイザー)を処方し、2週後の来院時に再度位相差顕微鏡にて観察を行った結果、運動性菌の動きはほとんど認められなくなった(図9)。
その後システマデンタルリンスを継続使用しながら、メンテナンスを2ヵ月毎に行っている。来院時には毎回顕微鏡の動画記録を比較して細菌の動きを観察することで感染状況をマークしている。一年経過後もアジスロマイシンを再投与することなく、IPMPに期待したセルフケア中心のケアによって比較的良好な状態を維持している。

  • 長期間のブランクを経て来院。糖尿病と循環器疾患で歯周状態が悪化し始めたため、細菌を考慮したアプローチに転換。写真は再来初診時の口腔内写真。
    図6 長期間のブランクを経て来院。糖尿病と循環器疾患で歯周状態が悪化し始めたため、細菌を考慮したアプローチに転換。写真は再来初診時の口腔内写真。
  • 位相差顕微鏡観察の結果、運動性桿菌が活発に動き回る像が認められたため、歯周病関連細菌についてさらに調べることにした。
    図7 位相差顕微鏡観察の結果、運動性桿菌が活発に動き回る像が認められたため、歯周病関連細菌についてさらに調べることにした。
  • BMLのキットを使用して検査した結果、Pg菌がハイリスクで検出されたため、歯周組織検査、初期治療に先立ちアジスロマイシンを3日間内服。
    図8 BMLのキットを使用して検査した結果、Pg菌がハイリスクで検出されたため、歯周組織検査、初期治療に先立ちアジスロマイシンを3日間内服。
  • アジスロマイシン内服の結果、運動性菌が除菌され、正常な細菌叢と考えられる顕微鏡像が観察された。
    図9 アジスロマイシン内服の結果、運動性菌が除菌され、正常な細菌叢と考えられる顕微鏡像が観察された。

症例2:全身状態については健常者であるが、口腔内は歯周疾患が進行している症例。本人の歯周病に対するモチベーションが上がらず、夜間のブラッシングは行わない習慣と清掃不良が重大な課題となっていた。毎週欠かさないゴルフによる咬合圧の過大負担が歯周疾患の進行にも影響していると考えられる。所々に歯根破折によるクラックが走り、P急発時の来院を繰り返していた。
位相差顕微鏡により、当時急発を頻繁に起こしていた右下6番より試料を採取して観察したところ、大量の運動性菌とトリコモナスと考えられる原虫が観察された(図10)。これを機に患者自身も歯周治療に協力的になった。
しかし、アジスロマイシンやトリコモナス治療薬の服用後も原虫は消失せず、服用の効果が認められなかった。洗口液ならば習慣に取り入れられるとの理由から、プロケアでのP-Maxによるバイオフィルムの機械的破壊とセルフケアでのシステマデンタルリンスの併用を継続して行ったところ、1ヵ月後、原虫は消失し(図11)、さらに1ヵ月後には運動性菌が減少した(図12)。
システマデンタルリンスは継続しながら、初期治療により歯周ポケットの改善をはかり、一年経過後も病状は安定している(図13)。

  • P急発を繰り返す部位の位相差顕微鏡観察の結果、トリコモナスと考えられる原虫が観察された。
    図10 P急発を繰り返す部位の位相差顕微鏡観察の結果、トリコモナスと考えられる原虫が観察された。
  • 超音波治療機器P-Maxによるバイオフィルムの機械的破壊とシステマデンタルリンスの導入により、約1ヵ月後、原虫は消失した。
    図11 超音波治療機器P-Maxによるバイオフィルムの機械的破壊とシステマデンタルリンスの導入により、約1ヵ月後、原虫は消失した。
  • さらに1ヵ月後、運動性菌の活動もおさまり、歯周初期治療を行った。
    図12 さらに1ヵ月後、運動性菌の活動もおさまり、歯周初期治療を行った。
  • 歯周初期治療後1年経過時の口腔内写真。システマデンタルリンスを継続し良好な予後を得ている。
    図13 歯周初期治療後1年経過時の口腔内写真。システマデンタルリンスを継続し良好な予後を得ている。

症例3:下顎半埋伏智歯周囲炎に処方した症例。右下8番の近心傾斜した半埋伏歯が原因となって7番遠心付近より排膿していた(図14)。8番抜歯は見送りとなり、システマデンタルリンスと歯間ジェルを併用して経過を追ったところ、高い浸透性が功を奏して細菌叢の変化が見られ、出血排膿は止まった(図1516)。

  • 右下7番遠心部位より出血排膿があり、口臭と慢性的な不快感主訴に来院。
    図14 右下7番遠心部位より出血排膿があり、口臭と慢性的な不快感主訴に来院。
  • 同部位の位相差顕微鏡観察の結果、多量の運動性桿菌、スピロヘータが観察された。
    図15 同部位の位相差顕微鏡観察の結果、多量の運動性桿菌、スピロヘータが観察された。
  • システマデンタルリンスと歯間ジェルを朝晩2回使用した結果、2週後の来院時には運動性菌数は減少し、症状も改善した。
    図16 システマデンタルリンスと歯間ジェルを朝晩2回使用した結果、2週後の来院時には運動性菌数は減少し、症状も改善した。

■4. 補綴修復ステージでの処方

システマデンタルリンスと歯間ジェルは歯冠補綴修復の領域においても利用価値が高い。
プロビジョナルあるいは、その前段階のTekはプラークが付着しやすく形態によっては歯肉炎、出血をひきおこす要因が残されている。
補綴修復の各ステップにおいても、歯肉がコントロールされていることで形成や印象採得を成功へと導き、接着時の操作においても滲出液や出血等のトラブルを回避することができる。たとえば歯間ジェルはワンタフトブラシとともに処方して、支台歯の清掃や支台歯辺縁歯肉の状態を改善し、補綴修復を成功に導くために患者さん自身の協力が必要であることを伝えると受け入れられることが多い(図1718)。

  • 形成、印象前からプロビジョナル周辺をシステマ歯間ジェルとワンタフトブラシでケアすることで、接着に至る一連の補綴修復処置が格段に進めやすくなる。
    図17 形成、印象前からプロビジョナル周辺をシステマ歯間ジェルとワンタフトブラシでケアすることで、接着に至る一連の補綴修復処置が格段に進めやすくなる。
  • 歯間ジェルとワンタフトブラシでケアしていた支台歯は縁下深いケースでもマージン周囲の歯肉のコンディションが良好である。
    図18 歯間ジェルとワンタフトブラシでケアしていた支台歯は縁下深いケースでもマージン周囲の歯肉のコンディションが良好である。

■5. システマ処方を実践して

IPMP配合によりバイオフィルムに対して優れた浸透殺菌効果を有するシステマであるが、その臨床的効果を最大限に引き出すためには、セルフケア用品という範疇を超えて治療に取り入れていくことがポイントとなる。
その効果に期待している根拠を細菌観察等によって示し、患者さん側にも十分に納得して使用していただくこと、そして再評価を欠かさないことが大切であると感じた。

参考文献
  • 1) 加藤正治、相澤真奈美:どうする?プロケア&セルフケアグッズの効果的な選び方. DHスタイル2007. 2月号特集17-37, デンタルダイヤモンド.
  • 2) 森嶋ほか:第53回日本口腔衛生学会発表. 口腔衛生会誌54(4):437, 2004.

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