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Clinical Report

マニーダイヤバー ショートシャンクの有効性

上野歯科(東京都練馬区) 上野 博司

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■目 次

■はじめに

日常臨床において、支台歯/窩洞形成は頻度の高い処置ですが、対象とする部位によっては、とてもストレスに感じることが多いものです。
その理由として、切削器具がスムーズに入るための開口量が確保できない場合、対合歯が邪魔になってしまう場合、舌がとても強く抵抗してくる場合、嘔吐反射が強い場合、など様々な要因で切削処置が難しくなってしまうことが挙げられます。
大臼歯部、特に第二・三大臼歯の切削は、これらの解剖学的制約により、とてもアクセスしにくい難易度の高いものと言えます。もし、そういったことから少しでも解放されたら…、それは我々にとって、大きな福音となるのではないでしょうか。
周知のとおり、現代において歯科を取り巻く技術的な進歩は目覚ましいものがありますが、これら主に大臼歯部を切削する際に生ずる問題は、意外なことに過去から現在まであまり改善されてこなかった、または改善するための試みがなされていてもあまり満足のいく結果が得られなかった、臨床家にとっては頭の痛い問題でした。
この度、「マニーダイヤバー ショートシャンク」<発売:(株)モリタ>を、「ツインパワータービン ウルトラM」<発売:(株)モリタ>に装着することにより、ダイヤモンドバー先端からタービンヘッド上部までの高さを短縮でき、今までアクセス困難だった箇所にも比較的スムーズに対処できるため、これらの問題とストレスを軽減できる感触を得ましたので、レポートさせていただきます。

■特徴

まず、このダイヤモンドバーについてご説明すると、臨床で遭遇する様々なシチュエーションに対応すべく、よく吟味された形状がラインナップされており(図1)、あらゆるケースに対応できると言えます。
また、良好なダイヤモンド粒子の性状により、切削感が非常に良いということも特筆すべき点です。内側性、外側性ともに軸面形成を目的とするバーにおいては、同じ形状でもスタンダードとエクストラファインの2種類の粒度が用意されており、より精密な修復治療を具現化してくれることでしょう。
この全長の短いダイヤモンドバーは、把持部が短縮されており、ヘッドの高さが低い「ツインパワータービン ウルトラM」に装着されることにより、十分な注水を得られます。
先にも述べましたが、ダイヤモンドバー先端からタービンヘッド上部までの高さを飛躍的に減少することができます。これらはいうまでもなく、口腔内での操作性を向上させ、切削を確実かつ容易にするものであり、修復治療の根幹をなす正確な支台歯形成を行う上で、とても有意なことであります(図2)。これらのコンビはより良好な視界を確保する助けになっており、まさにベストな組み合わせと言えます(図34)。
「ツインパワータービン ウルトラM」の特色は、従来のツインパワータービンの使用感を損なうことなく、その短いヘッド高により優れたアクセス能を有している点にあります1、2)
ヘッドのデザインは術者の可視角を大きくとれる優れたもので、実際の使用感はヘッド自体が歯牙に近くなっているのにも関わらず、視認性がとても良いというものです(図5)。

  • ダイヤモンドバーの写真
    図1 様々な形態が展開されている。
  • スタンダードとの比較写真
    図2 スタンダード(右)との比較。ともにEX‑SS13を装着している。
  • スタンダード使用時の写真
    図3 スタンダードの場合。タービンヘッドが歯牙に近い。
  • マイクロヘッド使用時の写真
    図4 マイクロヘッドの場合。歯牙まで余裕ができている。使いやすさの所以である。
  • 視野角の比較図
    図5 可視角(明視できる領域)を広げて大きな視野をキープ(文献1:デンタルマガジンVol.137 P10からの抜粋)。

■臨床例

以下に実際の臨床例をご提示し、このダイヤバーの特色について、ご紹介いたします。
<ケース1>
「マニーダイヤバー ショートシャンクEX‑SS13」を用いて、下顎右側第二大臼歯の舌側面から遠心面へと支台歯形成を行っているところ(図6)。
隅角部での形成量が不足しがちな箇所であり、滑らかなバー運びがポイントになってくる。短いバー形状により対合歯の影響を受けにくく、歯軸に対して垂直にバーを作用させることができ、スムーズな形成が可能なっている。この様な部位に最適のバーである。
この患者さんは開口できる時間が短く、とても舌の力が強い方で、特に舌側の軸面形成が非常に難しいケース。このような時も、小さなタービンヘッドと短いバーのおかげで対応しやすく、結果として短時間での処置が可能となり、患者さんの負担も少なくなっていると思われる。
<ケース2>
「マニーダイヤバー ショートシャンクMI‑S45」を用いて、舌側傾斜した下顎右側第三大臼歯(歯牙移動予定歯)の咬合面う蝕を除去しているところ(図7)。
歯軸が傾斜しているため、本来ハンドピースが舌や対合歯に阻まれ、非常にアクセスしにくい位置だが、「ツインパワータービン ウルトラM」の形状と適切なダイヤモンドバーのデザインのため、容易にアプローチできている。
ダイヤモンド部からシャンク部までの長さと形状が程良いため、MIの概念から行う内開きの窩洞形態にも対応しやすい。
コンポジットレジン充填後、「マニーダイヤバーショートシャンクCD‑57F」により咬合面形態の修正を行っているところ(図8)(注意:歯牙移動を目的として、近心舌側咬合面上にコンポジットレジンによりボタン状の突起を賦形している)。
<ケース3>
「マニーダイヤバー ショートシャンクMI‑S45」を用いて左下Dの遠心カリエスを除去している(図9)。
小児治療において、ショートシャンクバーは優位性を最大限に発揮する。
<ケース4>
補綴されている第一小臼歯に楔状の欠損とう蝕があり、応急的に充填処置をすることになった。Ⅴ級窩洞形成中。「マニーダイヤバー ショートシャンクTR‑S14」を用いてベベル状形態を付与しているところ(図10)。
粒度はスタンダード、金属に対しても切削感はとても良い。「マニーダイヤバー ショートシャンクMI‑S45」を用いてう蝕除去中。バーのデザインが優れているため、複雑に進行した深いカリエスに対してのアクセス能力が高い(図11)。
コンポジットレジン充填を行い、「マニーダイヤバーショートシャンクEX‑SS14EF」にて余剰レジンを除去して形態修正(図1213)。
最後臼歯部ではなくても使い勝手の良いダイヤモンドバーである。
<ケース5>
従来型のタービンとバーで本来対応できる前歯部への応用。TR‑S14を用いて支台歯形成を行った(図14)。
補綴物完成後、マージン適合精度のチェック時(図15)。前歯領域においての使用感も良好だと感じる。
<ケース6>
上顎第一、第二大臼歯の支台歯形成と印象面(図16)。シリコーン本印象前に形成のチェックをするため、寒天-アルジネート印象を行った。石膏模型にて支台歯形成のチェックを行っているところ(図17)。
模型にすることでプレパレーションのチェックが行い易くなる。使用バーはEX‑SS13、 EX‑SS13EF、EXSS14、EX‑SS14EF。

  • EX‑SS13使用時の写真
    図6 <ケース1>EX‑SS13使用。アクセスがとても良い。
  • 第三大臼歯のう蝕除去時の写真
    図7 <ケース2‑1>第三大臼歯のう蝕除去。MI‑S45を使用。強い舌側傾斜に注目。
  • CD‑57Fにて咬合面の修正を行う写真
    図8 <ケース2‑2>CD‑57Fにて咬合面の修正。
  • MI‑S45 にて乳歯のカリエス除去時の写真
    図9 <ケース3>MI‑S45 にて乳歯のカリエス除去。
  • TR‑S14にてう窩の開拡中の写真
    図10 <ケース4‑1>TR‑S14にてう窩の開拡中。
  • MI‑S45使用中の写真
    図11 <ケース4‑2>複雑に進行したう蝕の追求に、MI‑S45はもってこいである。
  • クリアフィル マジェスティを填入している写真
    図12 <ケース4‑3>フロアブルレジンでライニング後、クリアフィル マジェスティを填入している。
  • EX‑SS14EFにて形態修正を行っている写真
    図13 <ケース4‑4>EX‑SS14EFにて形態修正を行っている。
  • TR‑S14にて上顎中切歯の軸面形成を行う写真
    図14 <ケース5‑1>TR‑S14にて上顎中切歯の軸面形成。
  • 最終補綴物のマージンフィットをチェックを行う写真
    図15 <ケース5‑2>最終補綴物のマージンフィットをチェック(圧排糸を使用している)。
  • 上顎大臼歯部の支台形成写真
    図16 <ケース6‑1>上顎大臼歯部の支台形成を主にEX‑SS13とEX‑SS13EFを用いて行った。
  • スムーズな形成面の写真
    図17 <ケース6‑2>ショートシャンクのダイヤモンドバーを使用することによって、第二大臼歯遠心面もスムーズな形成面を得られる。
  • マニーダイヤバー ショートシャンクの一覧
    マニーダイヤバー ショートシャンクの一覧

■まとめ

「ツインパワータービン ウルトラM」が発売されてからというもの、すぐに私もこの素晴らしいタービンを使用してきました。そしてヘッドの低いタービンに適したダイヤモンドバーが早く発売されないものか、と心待ちにしてきました。今回待望のショートシャンクタイプのダイヤモンドバーが発売され、喜び勇んで使用して感じたことは、“よく考えられて、使い勝手のよいものがでてきてくれた”と思わせるものでした。
我々臨床家が日々使用する器具として、従来製品の使用感を損なうことなく、より良い結果が得られるものとして開発された「マニーダイヤバー ショートシャンク」は優れた製品と思われます。
この製品を使用して感じたことは、冒頭で述べた過去からあまり変わってなかったこの分野における問題点を、進歩的に改善し得るものとして、評価に値するものであると感じています。

参考文献
  • 1) 麻生昌秀:ツインパワータービンを進化させた臨床家の気づきと着想.デンタルマガジンVOL137(2011年夏号)P8‑11.
  • 2) マーティン・B・ゴールドスタイン:私の予想を覆した「ツインパワータービン ウルトラシリーズ」の性能.デンタルマガジンVOL 142(2012年秋号)P20‑21.

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