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149号 SUMMER 目次を見る

SPI日本発売10周年

SPIシステム日本発売10周年を記念して

SPIシステム開発責任者トーメン・メディカルAG CTO Daniel Snétivy

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目 次

はじめに

「スタッフの幸せなくして患者さんの幸せはのぞめない」。平成7年の開業の時から私が常に肝に銘じている言葉です。針刺し事故や手洗いによる洗浄時の事故など、スタッフは日々の業務においてどこで事故を起こすかわかりません。消毒に関してもステリハイドを大量に使うなど、これまでかなりコストをかけてきました。近年、院内感染対策が盛んに言われるようになり、柏井伸子先生の著書を読んでステリハイドによる殺菌だけでは不十分であることに気づいたことと、スタッフを事故から守るという面から自動洗浄器も必要なことがわかってきました。

スイスメイド

トーメン・メディカル社は本社をスイス・グレンヘンにおき、SPI®システム製品は、自社での研究開発から商品の製造まですべてスイスメイドです。スイス製のミリングマシーンで製造し、Helveticな(スイス的な) 精密さを目指しています。
製造プロセス全段階での品質管理において厳しい条件に準じています。

コネクティング・サイエンス・サークル

CSC−コネクティング・サイエンス・サークルは世界中のインプラント専門医で構成されているグループです。SPI®システムのエキスパートにアンバサダーとして定期的に集まっていただき、システムのさらなる向上のためのミーティングが行われています。また、研究開発、トレーニング、教育にもご協力いただいています(図1)。
CSCメンバーの経験、専門知識により、SPI®システムは立証された科学的、医学的知識から確かなベースを元に製造されています。

  • コネクティング・サイエンス・サークル
    図1 コネクティング・サイエンス・サークル

インプラントシステムの“核心”

インプラントとアバットメントのコネクションはインプラントシステムの核心をなす部分です。SPI®システムではエクスターナル補強リングと精密に製造されたインターナルHEXで連結されます(図2)。
コネクション部分のユニークな特長はインプラントプラットフォームのエクスターナル補強リングです。この部分で軸外からの応力を受け、コネクション部分に最適な力学的安定性をもたらします。
また、インプラントとアバットメント間周縁部の接触面積が少なくなり、アバットメントスクリューへのトルクが同じでも、重要な外周部分のコネクションの圧縮性が増し、封鎖性をより効果的に高めることができます。
これによりインプラントとアバットメントの間のマイクロギャップを最小限にし、細菌汚染の発生を低減します(図34)。

  • インプラント−アバットメントコネクション
    図2 インプラント−アバットメントコネクション
  • エクスターナル補強リング:高い側方力への抵抗性と最小限のマイクロムーブメント。
    図3 エクスターナル補強リング:高い側方力への抵抗性と最小限のマイクロムーブメント。
  • 周縁部分の圧縮効果が集中するため、マイクロギャップが最小限となり、マイクロムーブメント、バクテリアの汚染が低減。
    図4 周縁部分の圧縮効果が集中するため、マイクロギャップが最小限となり、マイクロムーブメント、バクテリアの汚染が低減。

大切なのはサイズ!

SPI®システムのアバットメントスクリューは小さく設計されています(図5)。インプラント−アバットメントコネクションの巧妙なデザインによる力学的安定性の高さから、極めて小さいサイズのアバットメントスクリューが利用できます。また、スクリュー咬合面の表面積はかなり小さくなっています (図6)。
アバットメントスクリューが小さく、スクリューホールが細いことは、スクリュー固定、セメント固定どちらにも利点をもたらします。

  • ・柔軟な補綴オプション – アバットメントの側壁を肉厚に保つことができ、上部構造に自由度の高いデザインが可能です。
  • ・アバットメントの側壁の厚みが増すことから上部構造のサポートが向上し、コーティング、ベニア材など審美的修復に必要な材料がより効果的に使用できます。
  • ・アクセスホールが小さいことで上部構造の咬合面をより最適にデザインできます。スクリュー維持修復の審美性を高めることが可能です。
  • スクリューヘッドが小さいので、アバットメントの厚みを維持でき、強度が増す。
    図5 スクリューヘッドが小さいので、アバットメントの厚みを維持でき、強度が増す。
  • スクリューの咬合面サイズの比較。左がSPI®システム、右が通常のスクリュー(写真提供:Dr. A. Galasso)。
    図6 スクリューの咬合面サイズの比較。左がSPI®システム、右が通常のスクリュー(写真提供:Dr. A. Galasso)。

インプラントデザイン−外科手順は共通

エレメントとコンタクトの2種類のインプラントラインで、柔軟性の高い治療計画、インプラント治療を提供します(図7)。

  • ・エレメント
    全ての症例に適したシリンダー型インプラント
  • ・コンタクト
    抜歯窩および解剖学的状況に応じて使用するコニカル−シリンダー型インプラント

外科手順はどちらのインプラントラインでも同じです。インスツルメントも外科・補綴共通ですので、シンプルで使いやすいシステムです。
さまざまなインプラントの長さ、プラットフォーム直径により、骨、軟組織の解剖学的形態に合わせたソリューションを提供します。SPI®システムはすべてセルフタッピングスレッドで、優れた初期固定が獲得できます 。

  • 2つのラインのSPI®システム
    図7 2つのラインのSPI®システム

限られた状況では小さなサイズのインプラントで安全に

小さなサイズのインプラントで安全に狭い歯間スペース、先天的な側切歯欠損、歯槽骨が狭い場合など、小さな直径のインプラントを必要とする場合があります。SPI®システムにはこのような場合のソリューションとして、エレメント、コンタクトどちらにもプラットフォーム3.5mmのインプラントをラインナップしています(図8)。

  • 直径サイズの小さなインプラントでの良好な長期結果(写真提供:Dr. Ueli Grunder, Zurich)。
    図8 直径サイズの小さなインプラントでの良好な長期結果(写真提供:Dr. Ueli Grunder, Zurich)。

表面性状

オッセオインテグレーションの"ゴールドスタンダード"サンドブラスト、高温の酸処理エッチングマイクロラフ表面がインプラントサーフィスの“ゴールドスタンダード”とされています1〜7)図9)。
マイクロラフサーフィスをもつインプラントにより、骨とインプラント表面の間に優れた機能的、構造的結合が獲得され、より高いインプラントの安定性が導かれます8)
特に、マイクロラフサーフィスではインプラント表面と骨の結合が強化され、インビトロの研究では骨形成原細胞の分化が促進されることが示されています9)

  • サンドブラスト、高温酸エッチング処理の表面。マイクロラフサーフィス上のフィブリンネットワーク。
    図9 サンドブラスト、高温酸エッチング処理の表面。マイクロラフサーフィス上のフィブリンネットワーク。

トーメンデザイン – シンプルエレガンス

VECTOdrills™ のユニークな特長である先端のガイドにより方向、サイズも精度の高いドリリングができます。自動的に軸がガイドされるため、ドリルのブレが軽減され、インプラントの初期安定に必要な精密なインプラント埋入窩の形成が可能です(図10)。
SPI® MONO トルクラチェットは一枚の高力チタン合金プレートから製造されており、外科用、補綴用どちらにも使用できます。ワンピース構造ですので清掃のための分解、注油が必要なく、メンテナンスもシンプルです(図11)。MONO トルクラチェットは、60カ国以上の数千のデザインの中から、レッド・ドット・デザインのベストプロダクトデザイン賞を受賞しています。※レッド・ドット・デザイン賞:ドイツ、エッセンのノルトライン・ヴェストファーレン・デザインセンターが主催するプロダクト・デザインの権威ある賞。この賞は、プロダクト・デザイン分野での優れた品質と重要な技術革新に贈られる。

  • VECTOdrillsTM
    図10 VECTOdrillsTM
  • MONOトルクラチェット
    図11 MONOトルクラチェット

3D プランニングソフトウェア

インプラント埋入の成功には詳細な計画が欠かせません。SPI®システムにはほとんどの 3Dプランニングソフトウェアとガイドシステムが使用可能です(図12)。

  • プランニングソフトウェア(例:i‑view)
    図12 プランニングソフトウェア(例:i‑view)

幅広い補綴ソリューション

SPI®システムでは、インプラント-アバットメントのコネクションデザインが共通のため、補綴物には互換性があります。一貫性のあるコネクションにより、インプラントのタイプに関わらず、症例に応じた、補綴オプションを自由に選択でき、審美性にも優れた修復物が製作できます。

セメント修復−SPI® イージーアバットメント

SPI®イージーアバットメントを用いて、審美的部位にシングルクラウン、ブリッジを、簡単に、短時間に作製することができます。このアバットメントはセメント修復に適しています。SPI®イージーアバットメントにより解剖学的状態に適したアバットメントの形態が提供されます。 ストレートアバットメントと精密に適合する既製のアクセサリーパーツにも回転防止機構が付与されています。ストレート、アングルバージョンどちらも必要に応じて削合し、形態修正することができます(図13)。

SPI®イージー アバットメントの特長

  • ・単独歯、ブリッジ修復の簡単な作製。
  • ・種々の形態やサイズのストレート、アングルアバットメントを取り揃え、“エマージェンスプロファイル”(EP)バージョンはクラウンのエマージェンスプロファイルに適合した審美的デザインが可能。
  • ・コーン部に精密に適合する上部構造用アクセサリーパーツ。
  • ・アバットメントの形態調整が可能。
  • ・SPI®エレメント と SPI®コンタクト に互換性。
  • SPI® イージーアバットメント
    図13 SPI® イージーアバットメント

スクリュー固定修復 −SPI® ヴァリオアバットメント

SPI®ヴァリオアバットメントは咬合面スクリュー維持修復用アバットメントで、シングルクラウン、カスタムアバットメント、マルチユニットブリッジ修復の選択が選択可能です。非酸化性キャストオン合金ベースとスクリューを作製するプラスティックスリーブで構成されています。プラスティックスリーブはパターンに取り込まれ、焼成後に残留物はありません。
ヴァリオアバットメントはクリアランスが限られている場合にも柔軟性に富んだ修復方法を提供します。プラスティックスリーブは必要な高さに簡単にカットでき、精密なパターンを、シンプルに迅速に製作することができます(図14)。

  • SPI® ヴァリオアバットメント
    図14 SPI® ヴァリオアバットメント

CAD/CAM 修復

SPI®システムは、あらゆる種類のCAD/CAMソリューションに適応しています。SPI®システムのすべてのプラットフォームに 個別化したCAD/CAM ベースの補綴修復が可能です。

参考文献
  • 1) Albrektsson T., et al., Int. J. Prosthodont. 2004, 17, 536-543.
  • 2) Albrektsson T., et al., Int. J. Prosthodont. 2004, 17, 544-564.
  • 3) Cochran D. L., et al., J. P. Clin. Oral Impl. REs. 2002, 13,144-153.
  • 4) Wennerberg A., et al., Clin. Oral Impl. Res. 20 (Suppl. 4) 2009, 172-184.
  • 5) Junker R., et al., Clin. Oral Impl. Res. 20 (Suppl. 4) 2009,185-206.
  • 6) Bornstein M., et al., INt. J. Oral Maxillofac. Implants. 2003,18, 659-666.
  • 7) Bornstein M., et al., Clin. Oral Implants. 2005, 16, 631-638.
  • 8) Buser D., et al., Biomed Mater Res. 1999, 45, 75-83.
  • 9) Boyan B., et al., in Titanium in Medicine, Brunette D. M, et al.(eds.) Springer, 2001, 562-579. Albrektsson T., et al., Int. J.Prosthodont. 2004, 536-543.

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