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私の臨床

患者さんの予防意識が変わるリコール100%を目指すための光学式う蝕検出装置

千葉県船橋市医療法人健恒会 細野 隆也

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当院のリコール率は限りなく100%に近いのです。だからといって、リコール葉書を出すといった活動を積極的に行っているわけではありません。ただ、患者さんには定期的に行うダイアグノデントペンによる測定記録をお渡しし、それに基づいた予防指導を治療や検診のルーティーンとして徹底しているのです。
私が光学式う蝕検出装置ダイアグノデントを導入したのは10数年前のことで、当時はまだクラシックタイプしかありませんでした。初期のう蝕をレーザー光で診断できるということで購入しましたが、使ってみると明らかにう蝕のない部分にも高値で反応が出てしまうんです。コンポジットレジンや歯石にも反応するという噂を聞くこともあって、「どうも扱いにくい器械を買っちゃったな」それが当初の私の感想でした。
しかし、レーザー光が何に反応しているのか、納得できる答えを得たかった私は様々な文献を当たりました。そんなときに見つけたのがRaimund Hibstの論文でした。そこには、う蝕の中のバクテリアにより検出されたプロトポルフィリンがレーザー光に反応しているのではないか、という考察が書かれていたのです。ダイアグノデントのレーザー光がう蝕に反応することは確かでしょうが、この論文を契機に、別の見方もあるのではないかと考えるようになり、その後もデータ集積を続けながら、あらゆる文献を読みあさりました。
そうして知り得た知見から推察するに、ダイアグノデントは「虫歯菌を検知しているのでは?」という考えに至ったのです。いわゆる虫歯菌として知られるストレプト・コッカス・ミュータンス菌(SM菌)は大量にグルカンを産生するため、歯に付着するとバイオフィルムの形成が生じやすく、そこに口腔内細菌が集積します。その結果、乳酸濃度が高まり、う蝕が始まる̶̶というのが教科書的な考え方です。
私が文献を探る中で見つけたものの1つに「口腔内細菌のほとんどがプロトポルフィリンを産生している」と論じた論文がありました。先のHibstの考察などと合わせて鑑みると、ダイアグノデントのレーザー光は口腔内細菌によって産生されたプロトポルフィリンに当たったときに蛍光反射を得るのではないかと私は推測しているのです。語弊があるかもしれませんが、つまり、ダイアグノデントはう蝕を検出するとともに「虫歯菌(SM菌)を測っている」と解釈すると通りがよく、実際に患者さんから集めたデータと照合しても、そう推察すると納得のいく結果が揃ったのです。
ちょうどそのころ隣接面の測定に適したダイアグノデントペンが発売になったと聞いて、発売と同時に導入しました。状況に合わせてクラシックタイプと併用して使っていますが、ダイアグノデント ペンはコードレスで取り回しがしやすく軽いので使用頻度は増えています。
ダイアグノデント ペンの測定は月1回を目安に、すべての患者さんに行っています。厳密に言えば違いますが、患者さんには「虫歯菌を測りますよ」と説明し、計測値をもとにブラッシングなどの指導を行っています。そして、診察後には計測値を記入した表とともに次回までの課題として指導コメントを書いた用紙をお渡しします。数値が低い方はやはり虫歯にはなりませんし、自分の口腔内の状況を数字で見ることができるので、患者さんの食後のブラッシングへのモチベーションも高くなります。指導通りに毎食後のブラッシングを徹底できた方は本当にダイアグノデント ペンが反応しなくなるんです。
そして、1ヵ月の課題をクリアした方は3ヵ月、6ヵ月、1年というようにリコールの間隔を空けていきます。特筆すべきは、1年後にも皆さん、きちんと来院されること。なぜなら、自分の口腔内環境がどうなっているのか、数値が気になるんですね。だから、葉書を出さなくても100%に近いリコール率を実現しているのです。ただし、数値に惑わされてはいけません。口腔内環境は日によって変わるため、当然数値も変動します。当院では数値を「虫歯菌」と解釈していますから、どんな値であれ、主訴がなく実質欠損がなければ、まずは様子見にします。数値はあくまで目安なのです。
今までの歯科治療は定期検診でたまたま見つけた虫歯を治療するといったように、結果に対する対症療法に過ぎませんでした。しかし、虫歯の原因そのものを減らす予防歯科の方向に今後の歯科医師の活路はあると思っています。

  • 患者さんにお渡しする「治療・予防プログラム」
    患者さんにお渡しする「治療・予防プログラム」
  • 数値を確認できることで患者さんのモチベーションアップにもつながる。
    数値を確認できることで患者さんのモチベーションアップにもつながる。
  • 患者さんにお渡しする「治療・予防プログラム」
    患者さんにお渡しする「治療・予防プログラム」
  • 日の管理指導説明書。それぞれ左上にダイアグノデント ペンで計測した数値が記入されている。
    日の管理指導説明書。それぞれ左上にダイアグノデント ペンで計測した数値が記入されている。
  • 2013年4月3日、8月7日、2014年2月4日の管理指導説明書。患者さんは所見欄を参考に次回来院時までの目標を設定する。
    2013年4月3日、8月7日、2014年2月4日の管理指導説明書。患者さんは所見欄を参考に次回来院時までの目標を設定する。

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