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Field Report

ラミネートベニア修復の仕上げにも有効な歯科研削用メタルストリップ

東京都練馬区上野歯科院長 上野 博司

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歯科研削用ストリップにはさまざまな製品がありますが、グリップストリップは、とても手に馴染みやすく、その独特の形状や仕様に由来する操作性の良さには多くのアドバンテージを感じています。
まず、把持のしやすさが1つの特長でしょう。両端のハンドルは幅が広く、滑り止めとしてパンチング加工が施されています。そのため、濡れたグローブでもしっかりとグリップすることが可能です。このストリップを導入する以前はプライヤーでストリップスを挟んでいましたが、プライヤーでは滑ったり、あるいは挟んだ箇所が操作中に切れそうになるなど、危険を感じる場面が少なからずありました。現在では、手指操作でコントロールができるため、上記のようなエラーが起こりにくくなりました。
次に、適度な強度と柔軟性も大きな特長です。“コシ”と“しなり”があるため、歯の彎曲を再現するのにはとても有用です。
図1で示すのは矯正治療時のストリッピングの様子です。このように歯列が入り組んだ状況でも、独特な“コシ”と“しなり”により、目的の箇所だけをピンポイントに削合・研磨することが可能となります。粒度の粗さにより、「コース(80μm/40μm)」「ミディアム(40μm/15μm)」「ファイン15μm/8μm」と3つのバリエーションが用意されていることも利便性に寄与しています。それぞれがダイヤモンド粒子による高い研磨性を持ち、状況に応じて使い分けることで、粗い削合から細かい研磨まで思うような作業を可能にします。
さらには、図2で示すように「コース」のダイヤモンドコート部にはメッシュ状に穴が開いているため、目詰まりを防ぎ、連続した削合が行えます。
また、同じく図2のように、クラウンに隣接するCRの形態修正を行う場合には、繊細な器具のコントロールが要求されるものです。そうした際にもグリップストリップの操作性と研磨性の高さは大変有用だと感じています。
そのほか、耐久性もあり、オートクレーブ滅菌対応のため、繰り返し使用できる点も利便性の1つと言えるでしょう。
使用用途としては矯正時のストリッピングとCR充填の形態修正がメインとなりますが、その使い勝手の良さから、当院ではラミネートベニアの仕上げにも活用しています。その一例を図3以降に示します。
この患者さんの主訴は上顎左右中切歯の審美障害でした。正中離開をともなう切端部の破折によって、前医によるCR修復を受けていましたが、不用意な切削とみられるエナメル質の損傷を受け、本人が納得できず、転院されてきました。
診査の結果、う蝕の残存とエナメル質の誤切削が認められ、既存のCRおよびう蝕の除去後、CR再充填、またはポーセレンラミネートベニア(PLV)による修復治療が必要であると判断しました。患者さんは変色など経時的な劣化に対して強い不安を持っていたため、協議の結果、PLV修復を行いました。
ラミネートベニアは非常に薄いため、セット後に微妙な形態修正をせざるを得ないケースがあります。また、セット後のセメント除去の際、バーなどで強く削ると破損する恐れもあります。
そこでストリップを横滑りさせるように使用すると、安定して良好な結果が得やすくなります。
さて、当院では矯正治療、補綴治療を中心に、良好な咬合関係、あるいは良好な口腔内環境を整えるべく、日々の診療を心がけています。そうした中、よりクオリティの高い治療結果を導き出すために、歯科研削用ストリップは有用な器材であり、大いに役立つものと考えています。

  • 図1 歯科研削用ストリップを用いた矯正治療時のストリッピングの様子。入り組んだ歯列に対しても削合や研磨が可能。
    図1 歯科研削用ストリップを用いた矯正治療時のストリッピングの様子。入り組んだ歯列に対しても削合や研磨が可能。
  • 図2 「コース」はダイヤモンドコート部にメッシュ状の穴が開いているため、削片による目詰まりを防ぐことができる。
    図2 「コース」はダイヤモンドコート部にメッシュ状の穴が開いているため、削片による目詰まりを防ぐことができる。
  • 図3 症例1-1。30歳女性。主訴は上顎左右中切歯の審美障害。既存のCRおよびう蝕の除去後、PLVによる修復治療を行う。
    図3 症例1-1。30歳女性。主訴は上顎左右中切歯の審美障害。既存のCRおよびう蝕の除去後、PLVによる修復治療を行う。
  • 図4 症例1-2。旧充填物を除去して、患者さんの持つ本来の形態をCR充填にて再現する。この状態でシリコン印象を行い、削除量チェックのためのガイドとする。
    図4 症例1-2。旧充填物を除去して、患者さんの持つ本来の形態をCR充填にて再現する。この状態でシリコン印象を行い、削除量チェックのためのガイドとする。
  • 図5 症例1-3。シリコンガイドにて削除量を確認しながら支台歯形成する。エナメル質に限局するので無麻酔下での形成となる。0.2〜0.3mmの削除量を目指す。
    図5 症例1-3。シリコンガイドにて削除量を確認しながら支台歯形成する。エナメル質に限局するので無麻酔下での形成となる。0.2〜0.3mmの削除量を目指す。
  • 図6 症例1-4。支台歯形成終了時。もともと正中離開ということで、隣接面部においてはエナメル質内の形成でもこれだけ空隙が生じた。
    図6 症例1-4。支台歯形成終了時。もともと正中離開ということで、隣接面部においてはエナメル質内の形成でもこれだけ空隙が生じた。
  • 図7 症例1-5。同咬合面観。切削量がよくわかる。
    図7 症例1-5。同咬合面観。切削量がよくわかる。
  • 図8 症例1-6。完成したPLVを試適後、無水アルコールにて脱脂と脱水をする。
    図8 症例1-6。完成したPLVを試適後、無水アルコールにて脱脂と脱水をする。
  • 図9 症例1-7。PLV SET時。
    図9 症例1-7。PLV SET時。
  • 図10 症例1-8。SET後の微妙な形態修正に用いるときもあるが、主に固く硬化してしまったセメント除去に用いる。角度が肝要。
    図10 症例1-8。SET後の微妙な形態修正に用いるときもあるが、主に固く硬化してしまったセメント除去に用いる。角度が肝要。
  • 図11 症例1-9。すべての内容が終了した状態。周囲組織との調和、自然感が得られている。
    図11 症例1-9。すべての内容が終了した状態。周囲組織との調和、自然感が得られている。
  • 図12 症例1-10。SET後の咬合面観。
    図12 症例1-10。SET後の咬合面観。

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