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DENTAL MAGAZINE デンタルマガジン

Clinical Hint
CBCT読影虎の巻Part4 歯槽骨・顎骨の微細構造を読む
歯科放射線専門医、デンタルアカデミア代表 神田 重信/歯内療法専門医、吉岡デンタルオフィス院長 吉岡 隆知

歯の微細構造を鮮明に画像化するには、現在のCBCT性能はまだ十分には達していない。しかし、歯が原因となって周囲骨に変化や影響を生じた場合は、骨の変化として骨梁構造が様々な病的変化を呈する。現在の高性能なCBCTでは、1本の骨梁を鮮明に画像化できるので、骨梁の病的変化を把握することにより、原因となった歯の疾患や骨の病変を理解することができる。今回のPart4では、歯を支えている周囲骨の変化として、歯根感染病変について解説し、さらにインプラント診療を念頭に入れた顎骨の性状について触れたい。2. 根尖病変を読む歯の感染病変で最も頻繁にお目にかかるのは根尖病変である。これは歯の主根管を介して根尖孔を中心として病変が広がる。大きく発育すると歯根肉芽腫から歯根嚢胞へと変化する場合があるものの、その画像診断学的鑑別は難しい。従来のX線写真による診断基準では病変の直径が1cmを超えると歯根嚢胞の確率が高いと言われてきた。CBCT画像による根尖病変の診断基準はまだ報告されていないが、病変のサイズは正確に測定できるものの、サイズで診断をするのは妥当ではなく、広がり方や境界性状などを参考にしたい。一方、根尖病変は根尖孔を中心に発育して腫大していくが、その多くは歯根とは反対方向(下顎では下方へ、上顎では上方へ)に発育する。歯頸部方向への発育は大きく腫大してもその多くは歯根の1/3レベルで止まっており、せいぜい1/2止まりとなる(図1?3)。したがって、根尖病変が腫大して歯根1/2以上まで拡大している場合は、次項に述べる根側病変の存在が強くなる。3. 根側病変を読む■根側病変:歯根の根側から発生し、歯根に沿って上方や下方へ進展するが、横方向への発育は大きくない。多くは無髄歯に生じ、その発生原因としては歯根破折、根管拡大時の主根管からの穿孔、側枝感染などが挙げられる。病変が小さい場合は発生原因まで推測できるが、大きくなると判別がつかなくなる。図にそれぞれの典型画像を示す(図4?6)。■唇側・?側の根側病変:根側病変が歯の唇側や?側の薄い骨壁に生じた場合は、容易に骨壁が消失し、歯根に沿った透過性病変の形状は呈さず、単に唇側・?側の骨消失の所見となる(図7?9)。前歯部を覆う唇側骨は健常人でも一般に薄く、病変がなくても部分的に唇側骨が消失している場合がある。また、極めて薄い唇側骨はCBCTでも描出が困難であり、骨が被覆しているのか消失しているのか判別できないことがしばしばである(図10)。CBCT画像の読影操作では歯軸を回転中心としてゆっくりと回転させながら、唇側骨の有無を精細に観察する。4. 顎骨性状の異常な変化―骨硬化症と骨粗鬆症インプラント診療において、インプラント体の埋入の可否を画像上で検討する場合、埋入部の顎骨の形態や骨量をまず把握することから始める。次に、埋入部の骨性状についてインプラント稙立に耐えられるか否かについて骨梁の変化を読むことが重要である。仮に埋入部の骨形態や骨量が十分であっても、骨梁の異常な変化を無視して埋入術を行うと、インプラント体は早期に脱落したり、あるいは長期間の植立維持ができない結果となる。■骨梁の異常な変化とは大きく2つに分かれる。その第1は骨硬化症であるが、軽度でびまん性の骨硬化症では個々の骨梁はしっかりしており、血液循環も保たれているのでインプラント植立にはあまり問題にならない。しかし、高度な骨硬化症では骨梁構造がなくなり全体に無構造で白いパターンを呈している。この場合は骨梁が本来の健全な形態や活性を失っており血液循環もほとんど低下した状態であり、インプラント体周囲にはosteointegrationは起こらないので、仮に埋入術を行っても早期に脱落する(図11?13)。■一方、第2の異常な骨梁変化は骨粗鬆症である。骨粗鬆症は顎骨全体に均等に生ずることは少なく、局所的や部分的に生じていることが多い。その領域の骨梁は個々の骨梁が脱灰され、本来の形態が崩れて短小化して断片状となり、次第に砂粒化してくる。このような脱灰が進んだ骨粗鬆症領域では、インプラント体の埋入後にosteointegrationが生じることはあっても、歯冠部からの応力に耐えるような支持力がなく、やはりインプラント体は倒れたり脱落する(図14、15)。以上のような異常な骨梁変化を鮮明なCBCT画像で読み取り、インプラント体埋入の可否を決めたい。5. 抜歯窩の骨脆弱症を判別する歯が抜去された後の抜歯窩の治癒過程は、順調に進行すれば6ヵ月後にはほぼ抜歯窩全体に石灰化が見られ、骨梁への骨改造も進行し、1年後には健常な骨梁再生が完成に近づく。しかし、骨再生が順調に進まず、石灰化はしても骨梁化が大幅に遅れてしまったり、止まっている状態も見られる。その場合の抜歯窩は脆弱で未熟な石灰化で占められ進行した骨粗鬆症状態となっており、インプラント埋入には耐えられない。抜歯窩が石灰化されていく様子を順を追って述べると次のようになる。抜歯窩の治癒経過は正常範囲ならば、抜歯後3ヵ月でCBCTにより辛うじて弱い石灰化がみられるようになり(図16)、5ヵ月で抜歯窩全体を石灰化が埋めるようになり、同時に画像上では骨梁像としての骨改造が始まる(図17)。もし、抜歯術において骨補填材が併用されれば、化骨治癒は早まるように見える。抜歯後11ヵ月後には、抜歯窩の幼弱な石灰化はほぼ骨改造が進み、骨梁構造が全体を占めるようになり、顎堤頂の皮質化も見られる。この時点が抜歯窩の化骨治癒完成と言えるだろう(図18)。ところが、顎堤頂の皮質化は十分に完成しているものの、本来の抜歯窩には正常な骨梁構造が見られず、幼弱な石灰化、あるいは骨濃度が低い骨梁様像が見られ、形態的に骨脆弱症を呈する(図19)。この状態は抜歯窩の幼弱な石灰化から骨改造が進まず、正常な骨梁構造にならないままで一種の局所的なosteoporosisを呈している(図20、21)。この骨脆弱症のままでインプラント埋入を行った場合、osteointegrationは可能であっても、インプラントからの応力を支える支持構造がないので、インプラントは倒れたり脱落するだろう。6. おわりにCBCTの利用において、歯冠部の読影はアーチファクトの出現のために障害されるので、通常は読影困難であり、読影する場合は相当に慎重に行わなければならない。むしろ、デンタルX線写真の方が正しい所見を呈している。歯根部やその周囲の歯槽骨の変化については、CBCTは大いにその実力を発揮して診断に効果的であり、CBCTの自由断面像を大いに活用したい。歯や骨の微細構造を読んでいくには通常のCBCT装置を使用して、鮮明な画質にする画像処理が必要である。一般歯科診療で通常に取り扱われる歯科疾患すなわち歯内療法関係疾患では鮮明な画質を使って所見の読影と診断が必要になる。一方、インプラント診療においても、たんに骨形態や骨量を見るだけにCBCT画像を利用するのではなく、微細な骨性状をしっかりと読んでいきたい。