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DENTAL MAGAZINE デンタルマガジン

Clinical Report
2級ダイレクトボンディングが上手くなりたい -マトリックスシステムの応用-
東京医科歯科大学大学院 医歯学総合研究科う蝕制御学分野 保坂 啓一

近年、セルフエッチング接着システムでは、2ステップ、1ステップともに、良好な接着性能を発揮するシステムが発売され(本誌158号、162号に掲載)、直接法コンポジットレジン修復、すなわちダイレクトボンディングへの信頼性はますます高まっている。本稿では、特に2級修復へダイレクトボンディングを応用する意義と、臨床上のポイントや勘どころについて紹介する。2. さよなら銀歯歯冠修復物が長年にわたり機能するためには、当然接着が重要である。ダイレクトでもインダイレクトでも、生体と生体材料である修復物との良好な接着が得られなければ、その修復治療は二次う蝕の発生や脱離を招く。接着性能の高いコンポジットレジンセメントの登場によってインダイレクトボンディングへの期待が大きく高まっているが、現時点では、なおダイレクトボンディングの歯質接着性のほうが優れる1)。臼歯隣接面(2級修復)については、ダイレクトボンディングとインダイレクトボンディングの臨床成績に有意な差がないことが報告されており、MIの理念に基づいて、健全歯質を可及的に保存することが可能なダイレクトボンディングを行うことが推奨されている2)。3. それでも2級修復は難しいダイレクトボンディングにおける材料学的な発展、すなわち接着システムとコンポジットレジンの進化には目を見張るものがあるが、依然として、臼歯咬合面(1級修復)と比較し、臼歯隣接面(2級修復)に対するダイレクトボンディングは技術的難易度が高い3)。適切なコンタクトの再現、隣接面の解剖学的形態の回復、適切なマージン適合性の獲得をクリアすることが2級修復の成功のための要件であり4)、技術や経験によって大きく左右される。これらが達成され、長期的にはマージンの変色、う蝕の再発、コンポジットレジンの破折のリスクが低減される。4. 2級修復のポイント筆者の考える2級修復の臨床上のポイント、勘どころについて、以下の点について紹介する。?プレウェッジはきほんのき修復の成功のための最初にクリアするべきステップは窩洞形成である。プレウェッジ(図2)は、隣接面窩洞形成中の歯間離開、歯間乳頭の保護を目的とし、隣在歯隣接面を傷つけること無く、歯肉側マージンの緻密な窩洞形成が可能となる5、6)。2級修復でも、必須と言っても過言ではなく、是非行いたいテクニックである(図3)。?2級マトリックスシステムの使用窩洞が小さい場合や、歯根間距離が近接している場合は、トッフルマイヤーリテーナーや透明のプラスチックテープをマトリックスバンドとして使用して修復可能である(図4)。しかし、2級ダイレクトボンディングを行う準備としては、コンポジタイト3Dマトリックス(ギャリソン)などのマトリックスシステムを用意しておくべきだろう。なぜなら、術者の予想に反して、窩洞が大きくなると、適切なコンタクト、隣接面の解剖学的形態、適切なマージンの獲得が上述の方法では不可能なためである。2級マトリックスシステムは、①隣接面形態の再現を可能にする湾曲したマトリックスバンド、②歯間離開を行い、同時にマトリックスバンドを保持するマトリックスリング、③歯間離開、および歯肉側マージンへのマトリックスバンドのフィットを向上させるウェッジ、以上3つの要素から成る(図5、6)。これらが上手く設置できると、副次的に防湿の効果も得られる。コンポジタイト3Dマトリックスの一番の特長は、コンポジタイト3Dリテーナー(マトリックスリング)が他の製品と比較し非常に堅牢で、確実に歯間を離開してくれる点である。スリックバンド(マトリックスバンド)は、内側のコーティングが硬化後のコンポジットレジン離れを良好にし、充填後ストレスのない撤去を可能にするユニークな設計である。また、昨年発売されたフュージョンウェッジ(図7)は優れもので、歯肉側マージンのクオリティが向上する。なぜなら、ウェッジ本体に付いている柔らかい樹脂のフィンがマトリックスを窩壁により密着させ、従来のウェッジと比較し、隣接面歯肉側マージンのフィットが格段に向上し(図8、9)、充填するコンポジットレジンの溢出を防止してくれるからである。一方で、3要素をすべて一つのメーカーに統一する必要はなく、様々なメーカーのものを組み合わせて、自分の臨床と合う独自のマトリックスシステムスタイルを確立されるのも良いと思う。?近遠心の辺縁隆線がポイント2級修復では、適切な近遠心の辺縁隆線が固有咬合面を決定する(図10)。コンポジットレジンの隆線を、残存する隆線と確実に一致させる。この辺縁隆線の位置が適切でなければ、コンポジットレジンの破折リスクを高めることにもつながりかねない。しかし、この調整は意外と難しい。適切な隣接面形態の回復のためには、上部鼓形空隙、?舌的鼓形空隙を意識して調整する(図11、12)が、ポイントは、プレウェッジテクニックに対してポストウェッジテクニックというべきか、ウェッジを挿入し、わずかに歯間離開させて行うことである(図13、14)。これにより少なくともマトリックスバンド一枚分の空隙は確保可能で、そこに研磨用ディスクを挿入し研磨する。バーによるラフな形態修正後、一筋の辺縁隆線を出すためには、ディスクの研磨システムを用いることをおすすめする(図13、14)。筆者は、さらにダイヤモンドペーストを用いてブラシで最終つや出し研磨を行っている。?セレクティブエナメルエッチングの効果患者の口腔内にある、術後、一定の時間が経過した2級修復を注意深く観察すると、?舌側のマージンの劣化(適合性の悪化や着色)が生じていることがある。隣接面の回復を行う2級修復の場合、マトリックスの形態と、歯質が本来持っていた形態は完全には一致しない。つまり、残存歯質の曲率とマトリックスの曲率が、?舌側で一致しないため、?舌側で窩洞マージンをオーバーして充填され、最終的な修復物マージンができ上がる。したがって、?舌側のマージンは、未切削のエナメル質となるので、接着性能を向上させる7)という観点から、残存歯質の?舌側、マトリックスバンドが覆う部位に対して、リン酸を用いた選択的なエナメルエッチングが必要であると筆者は考えている(図15)。セルフエッチングシステムの酸性度は低く、未切削エナメル質への脱灰効果が弱いためである。セレクティブエナメルエッチングには、長期的なマージンの変色の出現率を低下させる効果も期待される(ただしゼロにはできない)8)。ただし、象牙質にエッチング材が付着した場合、接着性能が低下するだけでなく、術後疼痛など大きなトラブルにつながる可能性があるので、Kエッチャントジェルシリンジなどのシリンジに入ったジェルタイプのエッチング材を使用すべきだろう(図16)。5. UBQとクリアフィルR マジェスティR ESフローを併用した2級ダイレクトボンディング臨床例30歳男性の2級ダイレクトボンディング症例を供覧する(図17?22)。6. 最後に今回、2級窩洞におけるダイレクトボンディングにフォーカスして、その意義と臨床上のポイントについて述べさせていただいた。著しい材料学的進歩によって適応症が拡大し、大いなる可能性を感じるダイレクトボンディングである9)が、基本的な術式である2級窩洞症例でさえ、隣接面の陥凹が強い場合など、完璧な修復が行えない場合も存在し、臨床的に悩むこともある。しかし多くの症例で、技術の研鑽を積み、高機能、高接着性材料を選択することによって、理想的な修復に近づけることはできると思う。口腔内で修復物を完成させるダイレクトボンディングを極められるように、術者である我々は絶えず努力し研鑽を積んでいかなければならない。本稿が、一人でも多くの読者の先生方の参考になり、多くの患者さんの健全な歯が守られることにつながれば幸いである。【謝辞】本稿イラストの作図を行って下さった東京医科歯科大学う蝕制御学分野畑山貴志先生に感謝の意を表する。