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DMR ディー・エム・アール

No.208 2003年5月30日発行
「デンタポート」と新しいニッケルチタンロータリーファイル /「エンドウェーブ」を用いた安全で効率的な根管形成方法
小林千尋、山田邦晶

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「デンタポート」と新しいニッケルチタンロータリーファイル「エンドウェーブ」を用いた安全で効率的な根管形成方法東京医科歯科大学大学院 医歯学総合研究科 歯髄生物学分野 助教授: 小林 千尋 京都府開業: 山田 邦晶小林 この度、(株)モリタより発売されますニッケルチタンファイル「エンドウェーブ」は、既に発売されている根管長測定機能付き根管拡大装置の「デンタポート」とベストマッチングのファイルだと感じています。そこで今日は、この新ファイルを実際の臨床でご評価された山田先生とともに、「エンドウェーブ」の特徴と臨床応用について、お話しさせていただきたいと思います。まず初めに、なぜニッケルチタンファイルを使って根管形成するかということです。ニッケルチタンファイルは折れやすいし、値段も高いと言われていますが、そのデメリットを補うメリットがあるのかどうかということを、山田先生にお聞かせ願いたいのですが。山田 臨床家にとって最も大変なのが大臼歯部の彎曲根管の治療です。それを短時間で効率よく行うには、彎曲根管のカーブに追従性がある材質で、より切削性に優れたファイルであり、それにエンジンが使えるということが大きなポイントになります。そういう意味でエンジン用ニッケルチタンファイルが最適だと考えています。小林 エンドばかりを行っていると、腕が疲れて腱鞘炎になるくらい大変ですが、そういう点ではどうですか。山田 当然手用でやっているころに比べると、数段疲労度は少ないですなぜニッケルチタンファイルで根管形成するか?人に優しい歯科診療を考えるデンタルをテーマに明るい情報をお届けします。  「 デンタポート」と新しいニッケルチタン  ロータリーファイル「エンドウェーブ」を  用いた安全で効率的な根管形成方法なぜニッケルチタンファイルで根管形成するか?クラウンダウン法のいいところ・・・ニッケルチタンファイルは折れる?デンタポートのアピカルスローダウンがいいですよ■商品紹介対 談208ね。ハンドのみの時代だと、右往左往するような症例であれば、初回のアポイントで遠心根を予め形成して、近心根を少し開けます。次回に遠心根を根充して、近心根をそこそこやって、最後に近心根の根充という形の3回のアポイントでやるところ、「エンドウェーブ」なら1回で終わりなんですね。トータルの治療時間も3分の1に短縮されます。臨床家にとって時間の短縮というのはものすごく大きいですね。小林 患者さんは早く終わるので喜ばれますか。それとも器械を使うことによって、なんか変な感じがすると言う人はいませんか。山田 ニッケルチタンファイルは確かに振動がありますが、長い時間、口を開けているよりは、振動があっても短時間で終わるほうがいいと思っておられる患者さんのほうが多いのではないかと思いますね。また、デンタポートは従来品と比較して振動が少なくなっていますから、そういったクレームはありません。逆に私の診療所では、そういう最新器材を使っているというのを売りにしていますので、「あそこの先生のところに行くと面白い」という感想をよく耳にしますね。小林 次に、ニッケルチタンファイルを使った根管形成法として、クラウンダウン法(クラウンダウン・プレッシャーレス・テクニック)が13年前ぐらい前に導入されたわけですが…。それについてはいかがですか。山田 私がエンドを習ったときは、細いファイルをとりあえず入れるということで、ある程度根管の中が拡大された時点で入口を開けるという感覚が強かったのですが、クラウンダウン法では上から開けていくため、根管形成がより楽になりました。小林 クラウンダウン法のいいところは、上のほうが先に広くなっているので、後から入っていく細いファイルが根尖に到達しやすいということと、洗浄がよくできるので、細菌などを根尖孔外に押し出すことが少ないと言われています。それと、とにかく形成された形が非常にきれいですしね。山田 きれいですね。小林 クラウンダウン法で拡大する場合、まず上のほうの拡大には山田先生は何をお使いですか。山田 私はテーパーを付けるというのを基本としていますので、テーパーのない種類のものは使わないですね。今は「エンドウェーブ」を使っています。小林 あと、ニッケルチタンファイルは折れやすいので、まず手用ファイルで根尖孔まで穿通するべきだとの意見もありますが。山田 私は基本的に手は一切使わないを売りにしています。(特にエンドウェーブを使用するとほとんどいらない)小林 私も同じですね。初心者は手で開けて道をつくっておいたほうが安全だとは思うのですが、全部ニッケルチタンファイルでやったほうがきれいに速くできるし、上級者のテクニックとしてはいいと思いますけどね。山田 いや、私の講習会では、逆に手用ファイルで開けさせたほうがよく折るんですよ。ニッケルチタンファイルのほうが失敗は少ないですね。小林 そうかもしれないですね。根管  の際も、バーティカルでうまく根充するためには、良好なテーパーと根管壁がスムーズだということが効いてきます。ニッケルチタンファイルのロータリー運動で形成すると根管壁がきれいで、垂直加圧しやすいと思います。いまだに側方加圧がいいと言う意見もありますが、日本でも若い先生を中心に垂直加圧の方向に動いているかなぁ、と思っています。山田 垂直加圧はあまり根尖孔を大きくしないというのがポイントで、クラウンダウンはいい方法だと思います。小林 ところで、一般的にニッケルチタンファイルは折れないのかといえば、折れるんです。特に先端を固定して回転したときに、ステンレスファイルの半分ぐらいの力で折れてしまうという困った問題があります。ファイルに回転力を加クラウンダウン法のいいところは?ニッケルチタンファイルは折れる?1,5001,00050050 100 150(1,600)(1,032) 正回転の角度g・cm トルクステンレスファイル降伏点ニッケルチタンファイル★ABファイルの先端を固定し破折するまでファイルを回転する。横軸は発生したトルク。縦軸は回転角度。ニッケルチタンを一度に連続的に押し込むとAのように、いっきに破断点(★印)まで達してしまう。Pecking motionでファイルを用いると、引き抜くたびにファイルはグラフの原点にまで戻り負荷から開放される(B)。結局、いつも低いトルクで回転し、ファイルの変形が小さい状態で用いられることになるので、破断の危険が非常に小さくなる。Pecking motionとは、小刻みにファイルを上下して用いる方法で、上記の理由により、ニッケルチタンファイルによる根管形成ではファイル破折の危険を少なくするために非常に有効である。(Svecら、1998のデータを改変)●根管壁との接触。小林 千尋先生接触部分接触部分非接触部分非接触部分「デンタポート」と新しいニッケルチタンロータリーファイル「エンドウェえて、折れるまで回していった時、ステンレスファイルの場合には弾性限界を超える降伏点というのがあり、それを超えるとファイルが塑性変形し、ずっと伸びていって折れるのですが、そのときに手に感じるトルクは小さくなるので、伸びたなというのが分かるのです。それに対してニッケルチタンファイルは、トルクが増していくと、あるところでプツッと何の前触れもなく折れます。この前触れがないというのが非常に困るところです。ずっと押し込み動作を続けると折れる限界を超える危険があるわけです。その点、「エンドウェーブ」は刃と刃のピッチが異なる螺旋形状で、根管壁への接触点が一定間隔ではない形態ですから、ファイルに過度なトルクがかかりにくくなっていますので、むずかしい根管には強いと言えます。また、むずかしい根管での破折を避けるためのテクニックとして、キツツキが木をトントントンと叩くような動作、つまりペッキング・モーションというのがいいと言われています。ファイルを上下動させて細かく抜くということはそこでトルクがゼロになるわけですね。ゼロからスタートして、それを繰り返すわけですから、小刻みに動かしている以上は限界点を超えないということで、破折防止に有効です。その代わりペッキング・モーションだけでやると非常に時間がかかります。そこで、押してもいいときは押して、危ないところではペッキング・モーションをという方法がいいと思います。山田 ファイルの先端を使っていくと折れにくくて、ファイルの全体を根管壁にあてるようにすると折れやすいですよね。小林 ペッキング・モーションは先端だけを使っています。だから、イメージとしては先端でひっかいて上げ、ひっかいて上げてという感じですね。それと、破折のもう一つの原因は金属疲労の問題です。1回転するごとに伸びて、縮む。これを繰り返す。この変化量が結構大きく、通常は数%ですが、大きい彎曲になると十数%変形することになります。山田 彎曲根管にファイルを使って、いつ折れるのか知るのが難しいですね。消費者としては使えるところまで使いたいので、将来的には何かそういう捨てるタイミングが分かる方法があるといいんですが…。小林 今の技術では難しいでしょうね。破折を減少させるには、ファイルの回転数を低くすること。さらに「デンタポート」などのオートトルクリバース機構が役立ちます。また、ファイルの直径が増すと変化率が大きくなるんです。この観点からすると、細いファイルの場合には折れにくいのですが、ファイルが太くなると、彎曲で回転するということはすごく変化率が大きくなるので、亀裂や、折れの原因になります。つまり、彎曲根管では太いファイルほど折れやすいということです。しかし、クラウンダウン法で根管口付近を先に拡げておくと、ファイルは折れにくくなります。これは相対的に彎曲が小さくなるからです。山田 臨床的に折れた原因を見ていきますと、まずはファイルの先端径と根管の内壁の径の不一致による破折です。また、それと類似した形で、いきなり大きなテーパーを突っ込んでしまうことです。さらに、C字、S字、L字とかの立体的な彎曲根管のとき、追従がうまくいかないと折れてしまいます。あとはエンジンの回転数が合っていない場合。それから、刃こぼれしているとか、ザラザラしていると感じたときに結構折れるというのが私の実感なんです。小林 刃こぼれやザラザラ感は金属疲労によるのものだと思いますが、表面の滑らかさというのは余分なトルクがかからないという点でも大切ですね。「エンドウェーブ」には電気化学的に表面処理加工が施されていますので、滑らかで、その分破折しにくくなっていると思います。山田 それと、根管口の上に天蓋が残っていると、曲がってファイルが入りますから破折の原因になりますね。だから、やはり入口を先に開けたほうが確実だと思うのです。また、根管内が乾燥しファイルは彎曲部では、1回転ごとに伸縮を繰り返す。白点の付近の溝の幅がAでは大きいが、Bでは小さくなる。 ていたりとか、ファイル全面に削り滓がPecking motion上下動によりファイルの先端のみを使うようにすると、ファイル破折の危険が減少する。機械研磨後(従来のニッケルチタンファイル)エレクトロポリッシング後(エンドウェーブ)微細で滑らかな表面により、破折の原因となる過度なトルクがかかりにくく耐久性が高まりました。粗造面の傷が目立ち、その傷にトルクがかかり、破折の原因になっていました。山田 邦晶先生A Bェーブ」を用いた安全で効率的な根管形成方法巻きつく場合も折れやすいと感じます。小林 それを防ぐにはどうしたらいいのでしょうか? 洗浄ですか?山田 潤滑剤とやはり洗浄を小まめにすることですね。小林 そうですね。確かに削り滓はバカにならないですよね。乾燥状態でびっちりついた状態というのは確かにファイルも進みにくくなるし、折れやすくなりますしね。ところで、最近気づいたのは、今までのプロファイルなどは、ステンレスファイルで言うとカタチ的にはKファイルなんですよね。「エンドウェーブ」はリーマーなんです。要するに刃のピッチが長いというか、シャベル型ですくい取ってくるという形なんです。リーマー型ですから非常に柔軟でいいんですが、ちょっと伸びやすい傾向があるんじゃないでしょうか。山田 伸びますけど、柔軟で折れないので、いいですね。小林 伸びるけど、折れにくいというところがポイントになるわけですか。山田 伸びるということに関しては、臨床家はそんなに怖くないんですね。折れるというのはもう最悪です。小林 次に、EMRについてですが、EMRは私が大学院で2年間お世話になった鈴木賢策先生、さらにその後12年間お世話になった砂田今男先生が研究されていた方法で、日本独自の世界に誇る技術の一つだと思っています。私も運良く、ルートZXという器械の開発に立ち会うことができました。東京医科歯科大学の研究室では長年にわたって電気的根管長測定を研究していたという下地があり、私の大学院のテーマ自体が「根管治療の省力化」ということもありまして、柔らかく、折れないファイルができればエンジンで回して非常に簡単に形成できるはずであるということまでは考えが及んだのですが、残念ながら、当時はそういう材料がありませんでした。その後、1980年代終わりごろになって超弾性を持つニッケルチタンファイルをエンジンで使って拡大できるということになりました。それに加えEMRの技術で根管の作業長を知りながら形成できるという考えで開発したのがトライオートZXです。さらに今回は「デンタポート」という発展型を出してきたわけなんですが、山田先生、どうですか、EMRとエンジンの組み合わせは。山田 私はEMRがあって、エンジンがあるということでトライオートZXはずっと使っています。フリーハンドで根管形成ができて、EMRがあるというのは素晴らしい革命だと思っています。「デンタポート」に関しては、スローダウン機能が素晴らしいですね。私は400回転でスタートするのですが、すごく軽い力の上下運動でかなりの彎曲根管を簡単に進むことができるんですね。根尖部付近の彎曲部では250回転に下がってくれるんですね。臨床的には危ないぞというところで、250回転になるんですよ。さらに250~50回転に変わる…というシステムは最高傑作だと思います。小林 「デンタポート」について、従来のシステムのどこに課題を見つけ、発展させたのかということなんですが、まず第一に、回転数を変えられるようにしたことです。今までのトライオートZXはLモード、Hモード、マニュアルモードと3つのモードがあり、その順で回転数がだんだん速くなると思っておられる先生が多かったのですが、回転数は変わりません。それを「デンタポート」では50~800回転の範囲で変えられるようにしました。その変えた回転数で各々トルクの制御がちゃんとできるようにしたということです。第二に、先程、山田先生のお話にもありましたが、オートアピカルスローダウンモードと言って、要するにファイルが根尖孔に近づくにつれて回転数が低くなるモードを付加させたということで、これは根尖近くでは根管が急に曲がることが多いので、そういうところで折れにくくするために考えたのですが、山田先生のお話によると、なかなかいいということでホッとしています。ひとつ心配しているのが、初めての人でも容易に使えるかどうかということなのですが…。山田 基本的には、初めての先生には『デンタポートのスローダウンがいいですよ』ということを言っているのですが、「デンタポート」は回転数の選択肢が多いですから、どういうふうに設定したらいいかは、画面の表示を写真に撮り、その写真で覚えて下さい、というふうに私はセミナーなどで紹介しています。たとえば400回転で、こういうトルクでこういうふうに使っているので、この写真と同じ設定で使ってくれ、という感じですね。小林 画面の表示は見やすいですよね。少し大きくなったし。山田 そうですね。器械に弱い先生にはトライオートZXをお薦めしますが、器械が好きな先生はいろいろ工夫できますから、「デンタポート」は非常に喜ばれると思います。小林 今回ご紹介した、根管長測定機能が付いた根管拡大装置のデンタポートと破折しにくいニッケルチタンファイルの「エンドウェーブ」は、ベストマッチングな組み合わせだと感じています。これによって、エンドに携わっておられる多くの先生方が、根管治療の煩雑さ、難しさ、時間的問題などを解決し、“根管治療の省力化”を実現していただきたいと思います。デンタポートのスローダウンがいいですよKファイルリーマーエンドウェーブスライド1:遠心根の処置。手用ファイルなしで#25/06テーパーまで処置、即座に根充。歯周病由来による抜髄症例です。抜歯も考えなくてはならない歯牙ですが本人の希望により処置を進めた症例で、すべての根管は狭窄をしておりましたが「エンドウェーブ」の最も特徴的な穿通力に期待をして始めました。   スライド2:時間に余裕があったので近心根を少し拡大だけのつもりで始めましたが「エンドウェーブ」#20/02テーパーは根が細く歯髄腔も狭窄しているものに強くあっという間に根尖に到達した。スライド1:遠心根は歯髄腔の張り出しを考慮して#35/08テーパーを軸に予防形成を行い、終了。(オピアン法で根充)近心根は歯髄腔があまり太い症例ではないので#25/06テーパーで終了し、ポイントで根管充填した。スライド2:図の近心根にテーパーの付与したものをイメージ源として入れましたが、従来ならば多くの歯質を犠牲に近心側を削除して直線化とテーパーの付与を行なってきたと思われますが「エンドウェーブ」を使用し、近心側に多くの歯質を残せたと思います。スライド3:スライド2を拡大したもの。イメージからするとエンドウェーブでの形成が多くの歯質を残す結果となった。スライド1:術前;ある程度根管  をされている為、根管口は削除されている。スライド2:術中;#25/06~02へ移行して根尖部まで穿通されていきます。スライド3:根管  後;#30/06テーパーを中心に形成を終了し、根管  へ移行した。(この症例は全て・オピアン法)スライド1:「エンドウェーブ」にて穿通、#25/06~02を中心に反復形成する。スライド2:ポイントと「エンドウェーブ」にて確認し、最終の根尖孔径とテーパーを決定する。スライド3:#30/06テーパーで根管形成を終了し、同一形状の#30/06テーパーのポイントで根充した。スライド3:あとは、#25/04テーパー、#25/06テーパーと付与すればよいが、歯質の残存量を考え、#20/06テーパーで終了。スライド4:#20/06テーパーが与えられた近心根を根充、1回診療で終了できた。本来であれば、細い号数の手用ファイルを使用し苦労したことを思いますと「エンドウェーブ」のすごさを確信した症例です。症例1症例2症例3再治療の症例ですが、このような場合、すでに根管口が削除済の為、それなりにテーパーを付与して形成を終了する必要がある。症例4上顎大臼歯、3根管性のものであるが、全ての根が湾曲しており、おまけに狭窄も有する症例であった。遠心根は、比較的歯髄腔が広く、 舌側に髄角の張り出しがあった為、根尖孔部を#35にして06テーパーを付与し、後に予防形成を追加し根管  をした。近心根は根管口が髄床底に近いこともあり、#25/06テーパーにて終了した。●アソートB(狭窄根管用)の場合テーパー06テーパー04テーパー02ISO#25ISO#25ISO#25反復形成法を使用します一般的に、#25/06テーパー、#25/04テーパー、#25/02テーパーの3本を反復的に使用する“反復形成法”にて根尖から形成を終了しますが狭窄している場合、#20/02テーパーと#20/06テーパーのファイルを使用します。歯髄腔のないものは、それなりに。歯髄腔の太いものは太い号数に順次上げていきます。テーパー06ISO#20を使用しますテーパー02ISO#20#25/04から#25/06へ戻りにくい場合作業長へ到達しない狭窄した根管の場合