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DMR ディー・エム・アール

No.229 2017年4月1日発行
「Veraview X800」 さらなる高みへ CT専用機に匹敵する高画質を複合機で実現
日本大学歯学部 特任教授 新井 嘉則

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「Veraview X800」の開発ではこれまで培ってきた膨大な設計ノウハウをあえてゼロから見直し、モリタCBCTの最上位器種「3DX」に匹敵する高い解像度と全域に渡って読影しやすいパノラマ撮影の両立を実現、さらに優れた操作性と高いデザイン性を兼ね備えることに成功しています。「3DX」の画質を複合機で実現するために  ―「Veraview X800」の開発コンセプト司会(モリタ) 国内でコーンビームCTが発売されてから15年が経過し、普及が進むとともに様々な特徴をもった器種も見られるようになってきましたが、歯科用CTを取り巻く現状について、新井先生はどうお感じになりますか。新井 2001年にCT専用機「3DX」が発売された当時は、ごく一部の先生しかお使いにならないのではないかという懸念がありましたが、15年が経過した現在、2012年の保険収載などもあり急速に普及が進んでいる現実に驚いています。司会 この度発売になった「Veraview X800」(以下「X800」)ですが、いつ頃から開発に着手されたのでしょうか。また開発に関して新たなコンセプトは存在したのでしょうか。開発部門(モリタ製作所) 歯科用CTの開発に着手したのが1996年のことですから、今年で20年以上が経過したことになります。当初はXII管という、ブラウン管のチューブのようなものを使っていました。その後2004年頃に半導体のセンサーが開発されFPDタイプへと進化します。これがきっかけでようやくパノラマ複合機の開発が可能となり、フィルム-デジタルパノラマ装置「Veraviewepocs」を改良してCT機能を付ける際に、新井先生にご指導いただきました。それを製品化できたのが2007年のことです。ただ、もともと新井先生の開発コンセプトはCT専用機でしたので、それと比較すると画質に違いがあり、設計的にかなり無理をしている部分がありました。そこで、そうした複合機の様々な課題を解決すべく、2008年に「X800」の開発に着手しました。そのコンセプトは「3DX」そのものであり、「3DX」の画質を複合機で実現するために、X線の水平照射や360度回転、さらに高解像度モードなどの様々な新しい機能が考えられていきました。新井 「3DX」の開発のときと同様に、今回も実現不可能と思われるものにチャレンジするモリタ製作所の底力を感じますね。「X800」の開発でもAll-in-Oneの装置でCT専用機「3DX」と同じ性能を持たせるという、一見不可能と思われるテーマに対して全く白紙の状態からスタートしています。ゼロから設計をしていますから、全てが新しいコンセプトで、強度計算や材料選択にいたるまで、くまなく新しい技術が導入されています。司会 「X800」開発の中でユーザーの視点を取り入れた部分があると伺っています。新井 従来のAll-in-One装置にはなかった対面位置付けを初めて採用しています。患者さんとコミュニケーションをとりながら位置付けできますから、患者さんに安心感を与えます。さらに先生にも扱いやすく、より正確な位置付けが可能になりました。この対面式を採用することで、デザインそのものが大きく変わりました。司会 360度撮影、対面位置付けが可能なCTは、現在一般的になっていますが、モリタとして特にこだわった部分はどこでしょうか。開発部門 やはりデザインですね。「X800」は他にはない独特のフォルムをしています。司会 デザインにはモリタのブランドデザインであるドイツの「f/p design」を起用していますね。開発部門 開発スタート時点では、私たちは目標とするCTの画質を最も実現しやすく、かつコストや部品数も抑えた基本構成を考え、それをもとに最初のデザインを練ってもらいました。最初は、ほぼ意図した通りの構成をもつデザイン案が上がってきましたが、フラッグシップと位置づける製品のデザインとしてはありきたりだったので、練り直しをお願いしました。そして最終的に、今の製品に近いデザインが上がってきたわけです。しかしながら、斬新であると同時に非常に設計者泣かせのデザインでもあったので、短期間で製品化までこぎ着けなければならない現場はとても苦労しました。照射角度を切り替えることでCT、パノラマの画質向上の両立を実現司会 ところで固定装置とアームが別々の動きをする理由はセンサーの切り替えに対応するためですか。開発部門 CT装置の場合、X線が水平に照射されることでアーチファクトが少なく、より鮮明な画像を得ることができます。「3DX」ではこの水平照射を採用しているのですが、複合機ではパノラマ撮影に合わせた打ち上げ照射が基本となり、CTの画質が専用機の画質にとどかないという課題がありました。「X800」ではCT撮影は水平照射、パノラマ撮影では打ち上げ照射になるように照射方向の切り替えが可能になり、CT、パノラマ両方の画質向上を実現しています。新井 X線を水平に照射することで、金属アーチファクトやガッタパーチャポイントが入っているケースなどで、影響を受けにくいより鮮明なCT画像が得られます。「X800」では、理論上は「3DX」と全く同じ状態を実現できており、All-in-One装置としてそれが可能になったという意味で大きな進歩と言えるでしょう。パノラマにおいてはパノラマ撮影の理想的な位置関係、CTではCT撮影での理想的な位置関係という2つを別々に実現することができたという点で画期的だと考えています。頭部の固定装置とX線管アームが独立している「X800」の機構は現在のところ世界でも例がないと思います。司会 CTの新機能として360度撮影がありますが…。開発部門 「3DX」で360度撮影は実現できていますから、今回の課題は複合機でそれを実現することでした。課題は明確で、それを技術的にどうやって解決するかが最大のポイントでした。新たな機能で全域に渡ってフォーカスの合った読影しやすいパノラマ画像の提供が可能に司会 「X800」では、AFP(全顎自動焦点補正)機能と、AGS(自動濃度強調)機能という2つの新たなパノラマ撮影機能が設けられました。新井 パノラマ撮影機は断層撮影装置ですので、本来はピントの合う場所は一つです。ところが患者さんによって歯列の形状は違いますから、理想的なピントを作ることが難しいわけです。実はもう30年以上前、私は学位論文でAFP機能の基本的原理を証明して、理論的に可能なことはわかっていました。ただ、センサーやコンピュータの計算能力などの様々な問題があって実現が難しかったのです。それがようやく30年以上の歳月を経て、どの患者さんでも理想的な断層を与え、どの歯にもピントが合う、そういったパノラマ撮影機能を実現できたことは素晴らしいことですし、技術の進歩を感じます。司会 具体的にどのようにして実現したのでしょうか。新井 例えば、最近のデジタルカメラでは、全部で10人いたとしても手前の人から後ろの人までみんなピントが合ってしまうという“あとからフォーカス”のような機能がありますね。それと同じようなことを全歯列において行っているということです。それ以上は企業秘密なので言えません(笑)。開発部門 従来の装置においても、画像上で前歯部分の3か所を指定して断層を調整する機能がありました。AFPでは、前歯だけでなく、歯列全体から顎関節、上顎洞にいたる全領域において、自動でピントを合わせていくということを行っています。ただ、撮影領域から外れてしまった場合はどんなに頑張っても合いませんから、撮影時の位置付けは適切に行っていただくことが前提です。司会 では、AGS機能はどのような発想から生まれたのでしょうか。開発部門 ひとくちに診断用の画像といっても、診断される先生の目的やお好みによって、コントラストの調整が必要になってきます。それを考慮していった結果、今回1つの提案として搭載しました。新井 先生方は患者さんに説明しやすい、理解していただきやすい画像を常に求めておられます。そういう観点からシーンに応じて使い分けていただくとこの機能の有効性が高まると考えています。ただし、ピントが合っていない画像に対しては、ミスリーディングや誤診につながる可能性もありますから、まずはピントの合ったパノラマ画像を電子的に作って、その後見たい部分のコントラストを調整していくことで効果的に機能するということです。開発部門 もともと最初のデジタルパノラマ装置を作った際に、先生のお好みで調整して見ていただける機能を付けたのですが、先生方にしてみれば、最初から適正なコントラストで見たいということでした。AGS機能は、おおむね臨床で要望されると思われるコントラストに予めチューニングを施しています。ただし、それでもコントラストや関心のある部位が違うようでしたら、AGS機能をOFFにしてお好みで調整していただくことも可能です。司会 選択の幅が広がったということですね。新井 先生方には患者さんへの説明や実際の診療に神経を集中していただきたいので、画質の良し悪しのレベルでご苦労をかけたくないということです。従来よりさらに磨きをかけた低被ばく、高解像度へのこだわり司会 「X800」に関して、カタログに掲載されていないメリットがあればお話しいただけますか。新井 従来のパノラマ撮影機は撮影するたびに少しずつピントがズレることもありましたので、ピントのズレによって画像が違うのか、それとも病態が変わったのかという判断が難しい場合がありましたが、「X800」ではいつでも意図的にピントの合ったパノラマ画像が提供できますから、それを比較して病気が治癒しつつあるのか、あるいは進展してきているのかを精密かつ早期に診断できます。この常に安定した画像が提供できるということが臨床現場では最大のメリットになると考えています。さらに、患者さんご自身も「良くなってきたな」とか「ちょっと悪化してしまったな」ということを視覚的に理解することができますので、正確な情報を患者さんに提供できるという点でも大きな武器になるのではないでしょうか。司会 複合機の場合、やはりパノラマ撮影の重要度が高いですからね。CTの画質に関してはいかがでしょうか。新井 専用機である「3DX」と同等の画像が得られることは研究室レベルでは確認できていますが、今後それを臨床レベルでも実証していきたいと考えています。司会 被ばく量の問題は従来通り配慮されていると思いますが、「X800」で新たに試みられている低被ばくに対する取り組みがあれば教えてください。新井 X線を照射するスリット(範囲)を自由に選べますから、必要最小限の部分にだけX線をあてるという機能が従来の装置よりも強化されています。この技術は実は「3DX」の最高峰器種「3D AccuitomoF17D」という装置と同じ機能のものが「X800」にも搭載されています。司会 さらに低被ばくになったということでしょうか。新井 高度な制御が行われ、より最適化された状態になっているということです。撮影ごとに理想的な照射パターンを選択することで照射効率が上がり、結果として患者さんに低被ばくの検査をお届けすることができます。今まで固定されていたコリメーターが、撮影に応じて自由にスリットを変えられるのでフレキシビリティの高い照射パターンが撮れるようになっています。司会 現在、8種類の撮影パターンがありますが、用途に合わせて照射量をコントロールしながら違う撮影サイズにも対応できる可能性も将来的に考えておられるのでしょうか。新井 要望があれば別のパターンの撮影方式を追加することはできますので、そういう意味では将来的にも成長性のある装置、つまり導入後もソフトウェアの入れ替えだけで新しい撮影モードを追加することができるポテンシャルを持っている装置と言えます。これが、従来の装置にはなかった、まさに“ロボットが中に入っている”という表現がふさわしい理由の1つでもあります。司会 「X800」のCT撮影では、φ40×H40サイズのハイレゾリューション(高解像度)モードが搭載されています。このモードは本来撮影に時間を要する機能だと思うのですが、従来の125μm画像と同じ9.4秒で撮影が可能になった理由は、センサーの向上など技術的な進歩によるものでしょうか。開発部門 はい。新機能の実現のために、新たにセンサーを開発したことで、これまで以上に性能が良くなっています。新井 従来の装置ではハイレゾリューション機能は搭載できませんでしたので、それが「X800」で搭載できたということに大きな技術革新があったことを感じさせますね。さらなる高みを目指してモリタの“歯科専用”CTが目指す境地とは司会 もともとコーンビームCTという原理は医科でも使われている技術ですが、その後II管タイプが歯科専用として開発されました。この“歯科専用であることの強み”とは具体的にどんなところでしょうか。新井 医科では主に軟組織を診断します。ですから、筋肉や脂肪を区別する必要がありますが、両者のX線の吸収率差は非常に小さいので画像化が難しい。それを明確に区別するためには、X線コントラストの濃度分解能が高くなければなりません。一方、歯科では主に硬組織を診ますが、硬組織はX線に吸収されやすいので、コントラストが高いのです。しかも、非常に細かい部分を診なければならないので、今度は高い空間分解能が必要になります。ただ、濃度分解能を上げようとすると空間分解能が落ち、空間分解能を上げると今度は濃度分解能が落ちてしまうという相反する性質があります。具体的には、軟組織をよく診ようとすると硬組織が疎かになってしまうし、硬組織を診ようとすると軟組織が疎かになってしまうのですが、モリタの歯科用CTの場合は100パーセント自社製品を使って硬組織の空間分解能を高めるための独自のアルゴリズムを開発しているところが強みだと思います。実際にモリタのi-Dixelで画像を見ていただければ、その鮮明さは圧倒的です。開発部門 歯根膜空隙まで診ようとすると30μmの解像度が必要だと以前新井先生がおっしゃっていたので、もう少し解像度が上げることができればと思うのですが…。司会 歯根膜空隙を診るにはそんなに高い解像度が必要なのですか。新井 そうですね。今私たちが見ているパノラマ画像で200μmくらいですから、200μmのものを見るためには、その半分の100μmが必要ということですね。デンタルフィルムだと50μmや30μmの解像度がありますから、最終的にそこまで目指す必要はあると思っています。“患者さんは動くことなく全ての撮影が可能”「スペースライン」から変わらないモリタのDNAを継承司会 最後にDMR読者の先生方にメッセージがあればお願いします。新井 「3DX」という歯科用CTにおける最高峰の装置を作った経験があるからこそ、その経験に基づいて「X800」が開発されたことを強調しておきたいですね。技術者が一貫して20年以上独自に開発していますから、膨大なノウハウが蓄積されているということと、何よりブラックボックスが全くありません。全て自分たちで開発していますから、改良点も全てわかっています。もしブラックボックスがあれば「ここを直さなくてはいけない」と分かっていても手をつけることができません。モリタ製作所にはそれがないというところが、開発において常に先進的な製品を出せる背景にあります。ブラックボックスなく歯科用CTを開発しているのは、私が知る限りではモリタ製作所だけだと思います。開発部門 当社製のX線ヘッドはとても信頼性が高いという自負があります。要するに壊れにくいという意味ですが、「X800」ではヘッドについても白紙から見直しましたので、今まで以上に信頼性の高い製品ができ上がったと思っています。司会 それはやはりパノラマ装置の時代から培ってきたものですか。開発部門 そうですね。デジタルパノラマについても、日本国内で最初に手がけるなど、システム全体について長年の経験の積み重ねがあります。そして長年のトライ&エラーがこの10数年間積み重なった集大成として生まれたのが「X800」だと言えます。新井 パノラマ時代に直流ヘッドを開発し、その後ベラビュースコープという多機能断層撮影装置を開発していたので「3DX」が生まれ、ベラビュースコープを開発していたから2007年にAll-in-One装置ができ、CT専用機「3DX」があったから「X800」が新たに開発されるという、常にその世代の技術を極めることで次世代の新たな製品が生まれてくるんですね。私はそれこそがモリタの歴史だと思っています。決して真似をしないので、とても時間はかかりますが必ず良いものが出てきます。さらに「スペースライン」ではドクターも患者さんも動くことなく診療に集中できるという考え方が根底にあるのと同じで、「3DX」や「Veraviewepocs 3Df」、今回の「X800」にしても、患者さんを1ミリも動かすことなく全ての撮影が可能です。ですから“患者さんを動かさない”というコンセプトは変わりません。そこがやはりモリタ製作所から生まれたユニットであり、X線装置なのだと私は感じています。ベースには同じDNAが流れていますよね。今後の展開を楽しみにしたいと思います。司会 本日は貴重なお話をありがとうございました。X線診断装置は、モリタグループの扱う製品群の中でも、中心的な製品の一つに挙げられます。患者さん、歯科医師、放射線技師などの皆様のために、この技術を絶えず開発し続けることは、革新的な企業としての目標の一つと言えます。この 度 、モリタグ ル ープから新しい X 線 診 断 装 置Veraview X800が発表されました。この装置には一連の最新技術が応用され、非常に高解像度の撮影を実現しながら、同時に放射線被ばく量を最小限に抑えることを可能にしています。私たちf/p designは、Veraview X800に先進的で高品質な製品デザインを施しました。Moritaは数十年に及ぶ歯科用X線システムの開発経験をもち、世界でこの分野を代表する存在の1つです。私たちの仕事は、同社の追求する最高の水準を、技術面に対してだけでなく、デザイン面でも実施することでした。まずはじめに、CT撮影、パノラマ撮影、セファロ撮影の各撮影要素の、コンパクトな製品システムへの明確な再配置が行われました。同時に、歯科医師や放射線技師による対面ポジションでの患者位置付けの実現が考慮されました。これにより、Veraview X800では患者さんとのコミュニケーションが容易になり、撮影位置の正確な定義がより行いやすくなりました。昇降可能な回転式操作パネルは、直感的な操作が可能な画面デザインを持ちます。歯科医師や放射線技師は患者さんから離れることなく、撮影の設定や操作を行うことができます。また、下顎や頭部の支持具は、車椅子使用者を含むあらゆる患者さんの身体寸法に合わせて調節可能です。このような明快な構成を通して、全体として説得力を持つ製品デザインが生まれました。デザイン形状の成り立ちそのものが、本装置の優れた操作性や高い精度、さらにはMoritaのDNAを伝えているのです。