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DENTAL MAGAZINE デンタルマガジン

アシスタントのためのイメージアップ講座

第1回(108号)
きれいな日本語を話したくないですか?
株式会社ロングアイランド 接遇マナーインストラクター 伊藤 純子

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ここ10数年、日本語は乱れている、敬語を話せない若者が増えている、と言われ続けてきました。確かに新入社員の研修などをみても、敬語が苦手という人は多くなっています。一方、「声に出して読みたい日本語」といった本がベストセラーになり、日本語のもつ美しい響きが注目を浴び、また話し方検定、漢字検定もブームとなっています。明らかに、日本語が注目を受け、見直されつつあるのはうれしい傾向です。新しい教育システムでは、英語にかなり力をいれ、公用語にもなりかねない勢いで、教育に力を注いでいます。これからのボーダレス社会に生きる若者は、英語を自由自在に操ることも必要なことでしょう。しかし、日本という国は、もともと日本語を母国語としているのです。英語を話す前に、まずは日本語を自由に、正しく、操れるようでありたいものですね。ところで、日本語をうまく操る、話すとはどういうことだと思いますか? 日本語には“敬語”という表現があり、これは日本語の特徴の一つと言えるでしょう。本当の意味で日本語を話すことができるというのは、敬語を正しく話すことを表すのではないでしょうか。先日、テレビを見ているとこんなことがありました。ある番組に新婚のカップルが出ていて、司会者と話をしていました。ご主人は有名国立大学のK大学、奥様はH大学と自己紹介。会場からは、“ほーっ”とどよめきがありました。司会者は、“えっ、あの有名なH大学? ほんとですか?”と驚きと疑いの声が…。その時、私と一緒にテレビを見ていた娘は、“お母さん、H大学ってすごい大学なの?”と不思議そうに聞くのです。“そうよ、T大、K大につぐぐらい難しいところよ”というと、“信じられない!!”というのです。というのも、この女性は、番組に出きれいな日本語を話したくないですか?伊藤純子株式会社ロングアイランドてきていきなり、“ほんでな、何とかやねん”。司会者の問いかけに対しての返事は、“ウン!”なのです。これには、司会者も面食らったようで、“旦那さん、奥さんはいつもこんなしゃべり方ですか?”と聞きくと、だんな様は“そうなんです。頭は良いのですが、口が悪いんです”(一同爆笑)。私の娘は、“頭のいい人にはとても見えないよね、頭のいい人なら、普通こんな場所に出てきたら、せめて、『ハイ』ぐらいは、言うよね。この人、変わってる!”と、驚いていたのです。普段は、どんな話し方でもいいのですが、一応、知らない人の前で話すとなると、大人として社会人として、『…ます。…です。』ぐらいは使い分けないと、いわゆる『知性』が問われるのではないでしょうか。敬語は社会人になってから使いこなせるようになっても遅くはないでしょうが、25歳あたりを過ぎると、さすがに“まだ、若いから…”とも言ってられません。ましてや、この新妻はご主人の会社の人と会う時や様々な場所での人との初めての出会いではどうするのでしょうか…。本当の意味での賢い女性であって欲しいものです。一方、こんな話もあります。ある会社のお客様窓口担当の方に研修をしたときのことです。A子さんはとてもまじめでこつこつと仕事をしています。彼女の電話でのお客様とのやり取りは、いつ聞いても、敬語は完璧です。今まで、いろんな方の応対を聞きましたが、彼女ほど完璧に敬語を使いこなす方にはめったにお目にかかったことがありません。ところが、そんな彼女にも問題点がありました。この窓口では、単にお客様から言われたことだけを処理するだけでなく、お客様との会話の中から、お客様の気づいていない問題点やニーズを掘り起こし、新たな提案をして、販売につなげていくという役割があります。ところが、彼女の応対を見ていると、商品知識や業務知識は豊富で、詳しく説明はできるのですが、お客様はなかなか打ち解けては下さらないので、なかなか営業成績が上がらないのです。彼女の弱点は話し方にありました。長い間話していても、完璧で丁寧すぎる話し方であるがゆえに、堅苦しいのです。なので、いつまでたっても、お客様の本音に踏み込むことができずに終わってしまうのです。おまけに、話すとき、あまり声の抑揚がなく、淡々と聞こえます。初めて人と話すときは、最初は緊張もするし、どんな人か分からないので、きちっとした言葉遣いで話すことは、先にお話したように、社会人として大人として当然のことです。しかし、だんだん慣れてくると、表情が和らぎ、ユーモアの一つも交えながら、親しみを感じる話し方になることで、リラックスし、そんな雰囲気の中で親近感や信頼感が生まれ、“実は…”と本音や愚痴のひとつも出て、アドバイスもできるというものではないでしょうか。言葉の硬さ、やわらかさの度合いは相手との距離をアピールしていると言ってもよいのかもしれません。そういえば、似たような話を聞いたことがあります。歯科衛生士の方が患者さんとカウンセリングするのですが、その時、自分には何も言わなかった患者さんが、ドクターには色々と相談していて、ショックだったと…。つまり、様々な方と良いコミュニケーションを築くためには、敬語が使えないのも困りますが、敬語だけ完璧でもダメだということです。要は使い分ける、すなわち操るということ、もちろん話すときの表情や声の感じ、感情も大切な要素です。どんなときに、どんな人に対して、どれぐらいのレベル(堅さ、ソフトさ)の言葉を使うべきか、さらに、同じ相手であっても、状況によって使い分ける判断が必要になってきます。例えば、同僚と休憩室では、“〇〇チャン、それ取って!”とざっくばらんに普段の話し方で良いと思います。しかし、いったん患者さんの前に出ると、さっと、気持ちを切り換えて“〇〇さん、△△を御願いします”となります。また、親しくなった患者さんやお客様に対しても、いらっしゃった時には、“おはようございます”“いらっしゃいませ”“おだいじに”“ありがとうございました”というけじめの言葉はきっちりと話し、途中の世間話などは“~ですよね。うわ~、すごいですね”と少し崩した話し方にしたほうが、親近感がわきます。歯科医院のスタッフの方を見ていると、患者さんに対して親しい話し方はしているのですが、それがお友達に対する話し方と変わらず、終始同じという方があります。患者さんに親しみを持つのはいいことですが、患者さんも“お客様”。医院の顔として、けじめある使い分けが求められるのではないでしょうか。そして、どう使いこなせるかで、あなたの知性も見られているのです。そこで、皆さんも『適材適所』で、敬語を使いこなし、患者さんとだけではなく、いろんな方や状況においてスムーズにコミュニケーションを図っていただけるよう、敬語の意味、効果、使いこなし方からお伝えしましょう。次回は、まず、敬語と一口に言っても、どんな種類があるのか、そしてそれぞれがどんな役割を果たすのかをお伝えしたいと思います。さあ、あなたも、きれいな日本語を話せる魅力的な人を目指してみませんか。●アシスタント講座