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第15回(122号)

顧客満足とロイヤリティ ~スタッフの顧客意識、仕事へのやりがいを育てる~

株式会社ロングアイランド 接遇マナーインストラクター 伊藤 純子

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顧客満足とロイヤリティ~スタッフの顧客意識、仕事へのやりがいを育てる~

株式会社ロングアイランド 接遇マナーインストラクター伊藤 純子

仕事でホテルを利用することが多いのですが、できればきれいで応対の気持ちの良いホテルに泊まりたいと思うのは私だけではないと思います。
先日、都内でオープンしたばかりのホテルをネットで見つけました。立地条件もよく、おしゃれでオープン記念のため料金も都内としてはリーズナブルで、仕事にも都合がよかったので、何泊も連続して利用することになりました。
オープンしてわずか2週間ほどしたころに泊まったときには、慣れないものの、笑顔で元気良く対応しているスタッフや大変丁寧な支配人かオーナーのような方の姿が目に付きました。それから何回か宿泊しました。
関西から移動して夜遅くに入ることもあるのですが、フロントのスタッフはいつも“いらっしゃいませ”。チェックインを済ませた後は“どうぞごゆっくり”という言葉です。毎回「当ホテルのシステムは…」と同じ説明が始まります。部屋に荷物を置いてから再び外出するときには、チラッと見て何も言いません。帰ってくるときもチラッと見て何も言わず、再び目線を伏せてしまいました。
もっと安いホテルでも何泊も泊まるとさすがに顔を覚えていてくれ、仕事から戻ってくると「お帰りなさいませ」。再び出かけるときには「いってらっしゃいませ」。夜遅く帰って部屋に向かう際には「ごゆっくりおやすみ下さい」など、その相手や状況にあわせた挨拶なり言葉が返ってくるものです。まだ慣れないのかもしれない…。な~んて寛大な気持ちで見ていたものの、3ヵ月が経っても一向に変わる気配がありません。
それどころか、元気な笑顔はもうすでにしまい込まれ、妙な気取りのような口調だけが研ぎ澄まされていました。
フロントではさみを借り、返しに行くときも、片手で受け取り、「わざわざありがとうございます」の一言もありませんでした。
ある時、朝食のチケットを部屋に忘れて降りてしまったのですが、急いでいたため、フロントで交渉したところ、「今回限り、再発行させて頂きます。見つかりましたら必ずもって来て下さい」と今にも舌打ちをしそうなきつい口調と面倒そうな表情で言うのです。前日にそのスタッフから朝食チケットを買い、調べれば支払っていることもわかるのです。
今までどんなホテルでもこんな対応を受けたことはなかったので、大変驚きました。こんなときこそ臨機応変な対応ができ、顧客満足が得られる場面なのに…。このスタッフはこの仕事に誇りがないんだと思いました。
このホテルは、全国的に展開しているビジネスホテルで、このたび“ワンランク上質のおもてなし”という言葉をキャッチフレーズに名前も変えてオープンしたホテルです。確かに設備は新しくきれいですが、おもてなしの何がワンランク上なのか…、まさに広告に偽りありです。
当初見かけた支配人かオーナーのような方はホテルマンらしい気配りがありましたが、その方の姿もだんだん見られなくなってきました。順調に回りだしたと判断したのかもしれません。その代わりといっては何ですが、部屋にはホテルの理念が綴られたパンフレットとアンケートが置かれてありました。これらの不快な気持ちをアンケートに書こうかとも思ったのですが、無駄な努力はやめました。
はっきりいって先ほどのホテルのスタッフは接客に向いていないと思うのです。接客に向いていると思えるスタッフは教えられなくとも、顔を覚えれば自然に「お帰りなさいませ」「いってらっしゃいませ」も言えるのです。人材として悪いのではなく、適材適所がなされていないと思うのです。なぜアンケートに書かなかったかと言うと、不向きな方がいまさら変わるとも思えないし、なにより、そのことに気づかないオーナーに言っても無理かな…と思えたのです。

クレームの考え方についての理論の中で、「クレームは氷山の一角である。つまり、たとえ不満を持っていても実際にその不満を訴えるお客様は5パーセントであり、それ以外の95パーセントの方はどうしているかというと、黙って2度と利用しないか、もしくは10人の人にその不満を話す」と言われています。確かにアンケートで顧客の声を集めるということも前向きな取り組みだとは思います。しかし私のように不満を持っていてもアンケートに書かない、実際に申し立てない人が実に多いということです。
だからこそアンケートに書かれた意見を少数意見だと流さずにきちんと受け止めていけば、その他95パーセントの不満にも対応していくことになるのです。
また、クレーム対応に追われる前に、なすべきことがあるのではないでしょうか。まず、働くスタッフのロイヤリティ(ここでは企業への愛着や仕事への高い意識、自身の価値をいかに自負するか)をどう育て、いかに持たせるか…でしょう。
接客業はマニュアルだけでこなせる仕事ではありません。常にお客様が何を望んでいるのか、どう考えているのかを観察し、見抜く力が必要です。その上で状況にあった言葉や対応ができる資質が何より大切です。このことを日頃からスタッフと問答し、考えさせ、育て、自信を持たせることが必要でしょう。しかしこれはあくまでも資質ですので、人と接することが嫌いであれば、苦痛以外のなにものでもありません。まずは、好きである、楽しい、やりがいを感じるということが原点であり、目指すところでもあるでしょう。雇う側もその方が人と接する仕事に本当に向いているのかどうか、好きなのかどうかを採用段階、研修期間に見抜くことも大切ではないでしょうか。
もちろんこれは、病院や歯科医院においてもいえることです。
作業に追われる毎日ではなく、ぜひ自身の仕事のロイヤリティを高める場、考える場(たとえばミーティングや勉強会だけでなく、ちょっとした時間に患者さまのことを考えてみるのもよい)を多く持って下さい。
皆さんは自分の働いている医院に愛着がありますか?そして自分の仕事に誇りを持っていますか?

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