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第20回(127号)

心に通じる声かけは“Not KY”“タイミング”そして“勇気”

株式会社ロングアイランド 接遇マナーインストラクター 伊藤 純子

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ASSISTANT ASSISTANT

心に通じる声かけは“Not KY”
“タイミング”そして“勇気”~効果的なプラスアルファの声かけ~

株式会社ロングアイランド 接遇マナーインストラクター伊藤 純子

先日息子がスポーツジムに入会したいと言い出し、入会時の契約には保護者の同伴が必要とのことでしたので、一緒に手続きと説明を受けました。ところが、受付の女性がとても感じがよかったので、話を聞いているうちについ衝動的に私も入会してしまったのです。
“なぜ入ってしまったのかしら”と多少後悔の気持ちもあったのですが、オリエンテーションに行き、マシンの使い方や施設の案内をしていただきました。すると誰かしらスタッフが声をかけてくれるのです。「こんにちは、マシンの使い方分かりますか?いつでも聞いてくださいね」「今日はもうすぐ○○のレッスンがありますよ。良かったら参加してください」など、おそらく私が不慣れなことがわかったのでしょう。
そして何度か出会ったスタッフは、「こんにちは、伊藤さん。もう慣れましたか?」「昨日息子さんいらしてましたよ」という具合です。最初気後れしていた私もすっかり気が楽になり、頑張ろう!と思えたのでした。
話はかわりますが、つい1ヵ月ほど前、突然母の深刻な病気が発覚し、それ以来ばたばたと大学病院で検査や複数の科を受診しなくてはならなくなりました。慣れない広く大きな病院で○号棟から△号棟、◇科から□科へと走り回っていました。
その日のスケジュールが終わり、帰ろうと思ったとき駐車券の印をもらうのを忘れていることに気がつき、元の科に戻って「機械を通していいですか(駐車券の印)」と事務作業をしていたスタッフに声をかけました。「どうぞ」という声が聞こえたので、機械を通してそのまま帰ろうとすると、「もう全部終わられましたか?たいへんですね。お大事に…」と声をかけてくださったのです。直接お話をしたことのないスタッフでしたが、一日かけ回った私の労をねぎらって下さったようで、ほっとうれしくなりました。
それからまもなく母が入院し、手術中のことです。8時間にわたる手術を待合室で子供たちと待っていた時です。
初めてお会いする看護師さんでしたが、「長いですね。待つのも大変ですね。もう少しで終わると思いますよ」と笑顔で声をかけてくれました。
それからも受付前で家族を待ってうろうろとしていると「どこかお探しですか」と声をかけてくれるスタッフがいたり、ICUに入った母を立って見舞っていると20歳くらいの若い看護師さんが小さな声で「どうぞ」と椅子を持ってきてくれました。
この病院では、ドクターによる病状の説明や手術内容の説明のほとんどが「そこまで!」と思うほど丁寧でわかりやすい説明でした。時には難しい言葉も出てきましたが、質問すると面倒がらずに教えて下さいます。先生方も患者の満足度を高めるために努力しているのだなと実感することができました。
やはり長時間順番を待ってやっと先生の話を聴くときには多少なりとも緊張しています。診察が終わったあとや待っている間にスタッフの方がタイミングよく声をかけてくれることはこんなにもほっとするものだと、改めて実感したのでした。

最近のサービス業、接客業では、決まりきった挨拶だけでなく、プラスアルファの声かけをすることで差別化をはかろうとしています。
確かに「いらっしゃいませ」「ありがとうございました」だけでは機械的に感じます。「○○様、いらっしゃいませ、お待ちしておりました」「ありがとうございました。またお越しください」というように、もう一言言葉を足すことで親しみやすさや、特別な対応を表すようにしています。ところがそのプラスアルファの言葉すらパターン化されてきているようで、最近は心に響かなくなってきたように感じます。
では先ほどお話したスポーツジムのスタッフや病院のスタッフと何が違うのでしょうか。それは彼ら、彼女たちが出会ったそのときの相手の顔、状況をみて、とっさに判断し、その場と相手の心理にぴったりの声かけをしたからだと思うのです。
例えば、スポーツジムで慣れていないであろう会員の方に対して、「こんにちは、頑張ってくださいね」といったところで、挨拶はうれしいものの、「マシンの使い方はどうするんだっけ…」と不安を抱いているに違いありません。そんな状況を察して「こんにちは、マシンの使い方わかりますか?」はまさにベストタイミングでした。
また手術が終わるのを待っている家族に「こんにちは。今日も暑かったですね」といったところで家族はそんなこと感じる余裕はないでしょう。
要はいかに“空気を読むか”ということ。KY(空気が読めない人のこと)じゃ駄目なのです。しかしそれをできるようにするためには自分の作業や仕事に追われているだけでは無理ですね。常に周りを見渡し、状況を判断する余裕も必要です。そして何よりも最初は声かけをする勇気が必要なのかもしれません。
ICUで椅子を勧めてくださった若い看護師の方は私が「ありがとうございます」というと、「いいえ」と言いながら頬を赤らめていました。そんな彼女を見て「一生懸命なんだな、頑張って欲しいな」と心から応援したくなりました。
そんな素敵なスタッフや先生方に囲まれ、母は思う存分わがままを言い、日々驚くほどの回復を見せています。

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