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第16回 (129号)

患者さんとの距離を縮め、信頼関係を築く会話のポイントは?

デンタル・マネジメント・コンサルティング 稲岡 勲/門田 亮

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THE DENTAL BUSINESS MANAGEMENT

歯科医院
経営講座129

デンタル・マネジメント・コンサルティング
稲岡 勲/門田 亮

Q

患者さんとの距離を縮め、信頼関係を築く会話のポイントは?

A

先日入ったある飲食店でのことです。店内は広く全室個室で、お鍋などのコース料理を提供するお店でした。2時間あまりで一通りの食事を終えた後、座席まで店員に来てもらい、その場で会計を済ませました。そして長い通路を通って皆で出口まで行ったのですが、何か様子が違います。そう、われわれが最後の客だったとはいえ、誰一人見送りに出てきてくれないのです。店内はし~んとして、店員は先に帰ってしまっているのではないかという静けさ。あえて靴を上から落として大きな音を立てても、結局最後まで誰も出ては来ず、我々は我々だけで静かに店を後にしたのです。
1杯400円足らずの牛丼店でも、店を出るときには「ありがとうございました~」という威勢のよい掛け声が飛んできます。座敷で会計を先に済ませているとはいえ、それほど安い店でもありません。あまりの客への関心のなさに、我々一行は「3ヵ月後には店が変わっているよ」と思うしかありませんでした。
歯科医院において、ここまでの状況はおそらく皆無とはいえ、段々と人間関係が希薄になっていると感じる中で、しっかりと患者さんと信頼関係を保っていくことは簡単なことではありません。
歯科医院では、自分の歯をじっくりと治したいと思う人ほど、必ず紹介を経て来院します。どんな歯科医院なのかをしっかりと調べた上で来院してくるのです。
歯科医院にとって、紹介率100%、キャンセル率0%のドクターは経営的に見れば最高でしょう。ましてや紹介してくれる患者さんが、友人・知人、妻・夫のみならず、両親までも連れてきてくれるとすれば予約はすぐに飽和状態です。
そうした歯科医院では、やはり日頃から患者さんとの関係作りを大切にしているようです。それも普通に会話をするだけとは少し異なり、ほんの少し意識をした会話のやり取りが、後の患者さんとの関係作りを大きく左右するのではないでしょうか。

1「意識してもうひと言会話を続ける」

お店などで商品のことを店員に尋ねると、簡潔に一言「○○です」とだけ回答が返ってくる場面があります。尋ねたこと以外に特長を教えてくれるわけでもなく、商品の意外なマメ知識を披露してくれるわけでもなく…。聞いたことには答えてくれたのですから、それはそれで間違いではないのですが、やはり希薄な関係になってしまいます。
人と人は会話によって情報を交換し、それによって人間関係を形成していくものです。聞かれていないことまでを話す必要はありませんが、少なからず不安を抱いている患者さんにリラックスしてもらうためには、意識してあと一会話続けてみることです。
「ああ、そうだそうだ」「ああ、それからね」というふうに、人との会話において言い忘れて付け加えることや、もう少しだけ強調して話しておこうと言い直す場面があります。
熱心な先生は、患者さんが会計を終える最後まで話をされる姿が見られます。患者さんに言い忘れたことがないか、きちんと理解してもらうためにもう一度言っておいた方がよいことはないかと一生懸命考えているからでしょう。その姿勢が、患者さんとの距離をぐっと縮めているのです。

2「診療以外の話題を一つする」

私が懇意にしているある会社の社長さんの周りには、いつも多くの人が集まってきます。商談の話に限らず、いわゆるちょっとした雑談から悩みの相談まで、実にいろいろな話題に人が集まってきているようです。
その会話を聞くと、必ず最後には「それはそうと…」と、それまで話をしていた内容から離れて、相手の趣味や現在の状況など、個人的な話題にも少し触れているようです。もちろん相手への興味がそうさせているのでしょうが、最初から最後まで仕事の話ばかりで終わったのではあまりに無機質に感じられます。そのため、少しでも距離が近づくようにと相手を気遣ってのことのようです。
難しい仕事の話から開放されて冗談交じりの温かな会話に入ると、相手の表情もとても和やかになるのがわかります。それまでとは一変した雰囲気の変化は、相手にも強烈な印象を与え、「私に関心を持って話を聞いてもらえる人」として信頼されるのです。

3「少し未来の話をする」

とかく患者さんに治療説明をする際に、保険診療と自費診療における材料の違いであるとか、また金額の違いに終始しがちですが、患者さんが本当に知りたいことはもう少し先にあるようです。
それは、「自分の生活がどのように変わるか」ということです。人間誰しも夢を持って生活をしたいものです。しかも、その夢が楽しく明るいものであったなら、多少通院日数が増えても、多少治療代が増えたとしても、頑張ってみようかなと思えるものではないでしょうか。
そのためには、どのように変わるか患者さんにイメージしていただくことが大切です。今と比べて格段に噛み心地がよくなるのか、あるいは笑顔に自信が持てるようになるのか、患者さん自身の変化が想像できるような話をします。
もちろん、現在の歯の状態や、どのような処置が必要であるのか、そのためにはどれぐらいの費用がかかるのかといった基本的なことの説明を一通り終えた後ではありますが、患者さんの気持ちを後押しするために、少し先の明るい話をするのです。
不景気だからという言葉で片付けて、未来に明るい希望を持てないままでいる人は、ずっと動けないままでいます。それよりも、何か楽しいことを想像し、少しだけ先の未来の自分を見据えることのできる人は、気力十分で不景気もどこへやらといった感の力がみなぎっています。

人とのコミュニケーションは一瞬一瞬の積み重ねですから、少しだけでも意識をした対応をすることが大切です。そうして徐々に患者さんとの関係を重ね、スタッフを含めた温かい医院作りを目指してください。

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