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第19回 (132号)

患者さんに安心してもらえるコミュニケーションのポイント

デンタル・マネジメント・コンサルティング 稲岡 勲/門田 亮

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THE DENTAL BUSINESS MANAGEMENT

歯科医院
経営講座132

デンタル・マネジメント・コンサルティング
稲岡 勲/門田 亮

Q

患者さんから当院がどう見られているのかを知りたくて、アンケートを行ったところ、治療説明について不安だという意見がありました。自分では丁寧に説明しているつもりだったのですが…。患者さんに安心してもらえるコミュニケーションのポイントはどういったところでしょうか。

A
【ノンバーバルコミュニケーションを意識する】
作業の合理化、効率化等によって便利な世の中が進めば進むほど、人間対システム間で物事が完結してしまい、コミュニケーションの過程に人間の入る余地がなくなってしまうという皮肉な関係に陥ってしまいます。
企業が利益確保のために人員を削減し合理化を推進した結果、コストの削減には成功しました。しかし、同時に消費が冷え込み、商品の値段を下げなければ売れない状況の先に待ち受けていたのはデフレ経済でした。
歯科医院という現場は、人間対人間のコミュニケーションを欠かすことができません。だからこそ、人の存在意義を常に確認できる場でもあります。物事が進む上で、常に人が介在するということは、何らかの動きを伴ってコミュニケーションが交わされますが、そこでは感情や見たものから受ける雰囲気などが大きな影響を持ちます。
今回は、コミュニケーションの多くを占めているといわれるノンバーバルにポイントを当ててみます。
ノンバーバルとは、「非言語的な」ということを意味します。言葉や文字による伝達ではなく、広い意味では写真やイラストや音楽までを含めて意思を伝達する手段としてノンバーバルと称しますが、ここでは人間同士の関わりにおける手段として、特に顔の表情、体の動き、声のトーンや速さの影響について考えてみます。
1顔の表情はどう影響するか

患者さんがドクターやスタッフの話を聞くときに、やはり気になるのは顔の表情です。痛む歯の具合がどういう状態なのか、抜歯を余儀なくされる深刻なものか、あるいは少しの治療で改善されるものなのかを表情からも読み取ろうとします。
また、豊富な臨床実績に裏付けられた治療説明は自信となって表情ににじみ出てくるものです。難しい表情で会話するよりも自然な笑顔で接する方が、安心して話を聞くことができますし、温かい印象を与えます。患者さん、スタッフを含めた医院全体への影響を考えると、顔の表情一つは非常に大きな影響力を持っているといえるでしょう。歯科医院の中は、人対人の関わりの連続です。当然、患者さんの表情にも気を配らなければなりません。
ある衛生商品を集めた展示会でのことです。休憩ブースでくつろいでいる二人組のお客さんのところへ、パンフレットを持った営業マンが近づいていきました。ほっと一息つき、お互いの近況報告会とばかりにちょうど会話が弾みだしたタイミングでの接触です。もちろん二人の表情は迷惑そのもの。その後も売りたい一心の営業マンはしゃべり続け、挙句の果てにはお客さんの方から席を立つ始末でした。
歯科医院は物を売るところではありませんが、患者さんの都合を無視して長々と治療説明をすることは避けたいものです。患者さんは先生の話にじっくり耳を傾けているか、何かそわそわした感じがないか、その表情にも気を配っておきたいものです。

2体の動きの意味

これだけはどうしても相手に伝えたい、そのようなときは身振り・手振り、体全体を使って表現しようとします。「大きい」「高い」といった形容詞を表現する際に、手を挙げたり広げたりすることでイメージがしやすくなりますし、また、「ここがポイント!」といった場合、人差し指で指し示すことでも強く相手に印象付けることができます。
多少大袈裟な体の動きでも、相手にとってみればちょうどよいぐらいなのです。言葉を強調する手段として、体を使ったジェスチャーの意味は大きいものです。雑誌に登場する人物写真等では、手の動きを含めた写真掲載が多く見られます。体の中でも、手や腕の動きは、ポイントを強調し、意思を表現する大切な要素なのでしょう。
こうした体の動きは、自分の気持が乗り移るほどに活発になってくるものです。診断には沈着冷静さが欠かせませんし、治療説明も落ち着いた雰囲気の中で患者さんに安心感を与えたいものです。
しかし、重要なポイントやどうしても伝えておきたい内容などは、体が動くほどに感情を込めて説明すると患者さんの理解も進みます。

3声のトーンや速さを意識する

たくさん話をする人、高い声で話す人、ゆっくりと穏やかに話す人、人によって声のトーンや速さは実に様々です。
どれも正解があるわけではありませんが、声のトーンを変えることでどのように印象が変わるのか、強調したいところを声でどう表現するかを試してみることもよいでしょう。
ある商談の席でのことです。担当の営業担当者は、非常に落ち着いた声のトーンで商品の説明を行っていました。非常に分かりやすく筋道も通っており、話が脱線することも、支離滅裂になることもありません。申し分のない説明内容のように思うのですが、終わってみると印象に残るものがありませんでした。あまりにもまとまりすぎていて、記憶に残る場面を作ることができていなかったのです。声は落ち着いていたのですが、大きな抑揚がないため子守唄のようにさえ感じるものでした。
セミナーの講師が、声の大きさを変え、トーンを変え、速さを変え、あの手この手で話を進めていくのには、何か一つでも受講者にプラスとなることを持ち帰って欲しいと願う気持ちの現われでしょう。強調したいこと、ぜひ覚えておいて欲しいことは、意識して声に変化をつけることも必要な要素です。

元気がよく、バイタリティーに溢れる先生の姿をつぶさに見ていくと、実に様々な手段を使って表現をしていることが分かります。ノンバーバル、つまり非言語的なコミュニケーションを意図的に行って、考えを伝えやすくすることに大変意識を向けているようです。
ノンバーバルコミュニケーションがよい方向に作用すると、自分の考え方をうまく伝えることができるだけでなく、自分にどのように接すればよいかも理解してもらえやすくなります。そうすると、患者さんも心を開いて話がしやすくなり、人間関係が円滑に進むのです。歯科医院経営には、方針や理念が欠かせません。日常の患者さんとの関わりにおいて方針や理念を生きたものとするために、考えを伝えやすく、また理解してもらいやすいノンバーバルな表現にも気を配りたいところです。

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