THE DENTAL BUSINESS MANAGEMENT
デンタル・マネジメント・コンサルティング
稲岡 勲/門田 亮
今後の医院の方向性についてスタッフとミーティングを行ったのですが、あまり活発な意見が出ることもなく終わってしまいました。これからのことを考えると、スタッフには問題意識をもって積極的な姿勢を見せてもらいたいと思いミーティングを開き始めたのですが、どうすればもう少し前向きに関わってくるようになるでしょうか。
スタッフは最初から院長と同じように考えることはできませんから、まず医院の現状を把握してもらい、現在医院が置かれている立場を理解してもらうことからはじめます。
収入実績がどのように推移してきているのか、来院患者数は増えているのか減ってきているのか、さらに今後予想される医院の経営状況について、可能な限り情報共有を進めます。
また、経営の数値だけでなく、例えば患者アンケートを実施して、現在来院してきている患者さんがどのようなことを感じているのか、医院に対してどういったことを期待しているのかを探ることもよいでしょう。
「いつも親身になって診てくれるので安心です」といった好意的な意見が多い中で、「治療前後の対応が雑」「とても長く待たされる」など、否定的な意見が挙がるのもまた事実です。
スタッフが知っても差支えない情報に関しては、積極的に開示するようにして、「なるほど、そうなのか」と、自分が勤める医院がどういう状況にあるのかを理解してもらうのです。
院長も含め、スタッフ同士が大切な時間をミーティングに費やすのですから、しっかりと目的を持って意義のある時間にしなければなりません。
「現状の把握からこういった懸念が出ている」「スタッフ間でうまく連携が取れていない箇所がある」といった問題点や改善点が、現状を知っていく中で分かってきますから、次には解決策や対応策をスタッフ全員で考えます。
実はこれがミーティングを行う目的や必要性であり、スタッフ全員に伝える必要があるのです。医院を少しでもよくするために、どういったことを変えていく必要があるのか、スタッフとしてどう取り組んでいくのかを考えて決めていくことが、ミーティングの目的なのです。
場合によっては、日数をかけて、各自が考える時間を与えることも必要でしょう。スタッフがアイデアを持ち寄ることもよいですし、さらに患者さんと活発なコミュニケーションをとるために、会話の方法を研究したり説明用ツールを作成したりということもよいと思います。
注意したいのは、あまり期間があくと次第に意識が薄れてきますから、遅くとも次の週には持ち寄って議論をしたいところです。
モチベーションを高く維持する人は、進むべき目標と、それをいつまでに達成するかという計画性を持ち合わせています。また、実行するためのスピードも、素晴らしく早いものがあります。
貴重な時間を費やして決めた内容ですから、そのまま実現せずに終わらせてしまっては、すべてが無駄になるばかりです。時には担当を決め、時には全員で取り組みながら、着実に到着地点へ向かうことが大切です。そのためには、誰が、いつまでに、どのように行うかという計画性に基づいて、物事を進めていく必要があるのです。
「やって終わり」では、どのような結果になったのかという検証ができませんし、評価をすることもできません。評価ができなければ、また次の問題を見つけて対策を考えるという循環がとまってしまいます。
評価をする、検証をするといっても難しいものでなくてもよいのです。一生懸命考えて、精一杯取り組んだことに対しての結果ですから、「スタッフ同士の声掛けが増えた」「患者さんに感謝されることが多くなった」「コスト意識を持って資材を購入したら、月々いくら削減できた」といった、スタッフ自らが評価できる形でよいのです。
どのような形であれ、目標に到達した、目的を達したということを自覚することで区切りをつけることができますし、自らがきちんと振り返ることは気持ちの上での充実感を覚えることができます。その達成感が自分への信頼感を生み、さらに次の課題を議論するためのモチベーションへとつながっていくのです。
スタッフの意識を変えていくためには、院長が先頭にたって強い意識で取り組むことが大切ですが、一つ一つの過程を丁寧に進めていくことも大切な要素です。今置かれている状況を理解し、進むべき場所を見つけることができれば、スタッフは自ら考えるようになるものです。