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第21回 (134号)

複数のスタッフをまとめ、医院一丸となって診療に取り組むポイントとは?

デンタル・マネジメント・コンサルティング 稲岡 勲/門田 亮

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THE DENTAL BUSINESS MANAGEMENT

歯科医院
経営講座134

デンタル・マネジメント・コンサルティング
稲岡 勲/門田 亮

Q

開業当時に在籍していたスタッフも全員入れ替わり、今は途中から引き継ぎを行ってきたスタッフ5名で、日々の診療を行っています。個性派ぞろいのスタッフですが、院内の規律・統制をしっかりとはかり、医院一丸となって診療にあたりたいと思っています。どういった点をポイントとして考えればよいでしょうか。

A

価値観の違う複数のスタッフをまとめ、医院一丸となって日々の診療に取り組むためには、院長の強いリーダーシップ、スタッフ間の公平性、仕事に対する責任の明確化、医院全体で共有する目標の設定、そして活発なコミュニケーションなどが重要なポイントになってきます。

1院長の方針、考え方は明確になっていますか?

院内の統制を行うためには、院長のリーダーシップが欠かせません。スタッフも、いろいろな価値観を持って集まってくるため、複数の考え方をまとめることは非常に骨の折れる作業といわざるを得ません。
しかし、院長の診療に対する方針や、患者さんに対する考え方が明確になっていればいるほど、院長の考え方に即したスタッフが残っていくものです。患者さんはいつも、「自分を一番に大切に扱って欲しい」と思っているものです。それを実現するために、患者さんにはどのように接するのか、受付から始まり、診療開始時、診療中、診療後における対応を考えておくことが大切です。患者さんの求めに対する医院の対応を明確にすることは、スタッフが患者さんに対するときに、どのように接していけばよいかが明確になるということです。
院長は、強いリーダーシップを持って、医院の進むべき方向性を明確に示す必要があるのです。

2院内は公平なルールに基づいていますか?

次に行うべきことは、スタッフ同士の公平性を保つための院内ルールが決められていることです。始業・終業の準備等は当番制で、スタッフ同士が持ち回りで行っていることが多いですが、ここでのルールとして、就業規則による統制を検討します。就業規則では、作成する際には必ず記載しなければならない<絶対的記載事項>と、就業規則に定めた場合には記載しなければならない<相対的記載事項>、そして、記載することが自由に決められる任意的記載事項から成り立っていますが、医院での従業員の「振舞い方」を決めておくことは大切です。

<絶対的記載事項>
  • 始業時刻および終業時刻
  • 休憩時間(○時〜○時あるいは○時間)
  • 休日、休暇
  • 賃金(固定的に支払われる賃金)の計算、支払方法、締切りおよび支払時期、昇給
  • 退職:解雇する際の要件および、解雇への予告期間、解雇予告手当等
<相対的記載事項>
  • 退職金:退職金の有無、計算方法、支払い方法等
  • 賞与
  • 安全、衛生
  • 職業訓練
  • 表彰および懲罰
3仕事に対する責任は明確ですか?

患者さんからかかってくる電話に対しては、受付担当者が応対すると決めている医院が多いと思います。しかし、窓口に患者さんがおり、その際にかかってきた電話に出られないとき、とかく電話への対応が遅れがちになります。もちろん他のスタッフも業務についていて手が離せないという場面もありますが、中には「誰かが出るのではないか」「電話機の近くに誰かいるのではないか」といった気持ちから、対応に遅れが生じることがあります。
同じような対応の遅れや不手際が、他の業務でも生じていないかを振り返ってみることが必要です。「誰かがこの仕事をしてくれるのではないか」「私はこんな大きな責任は負いたくない」といった風土が医院内に生まれることは避けなければなりません。
スタッフそれぞれが責任を持って業務にあたるためには、明確な仕事の分担と管理が大切です。歯科衛生士、歯科助手、受付担当等、職種ごとに業務を明確にし、責任を持って遂行できるような体制を整えます。もし、責任逃れをしようとしたり、責任転嫁をしたりするスタッフがいれば、厳重に注意をして改善を促す必要があります。

4仕事に対する目標は定まっていますか?

仕事を進める上で目標は欠かせません。目標を数字で表すとより明確になって取り組みやすいものです。収入目標や、材料・消耗品などの経費に関する管理のほか、新患数あるいは来院患者数などは目標として設定しやすいものです。それ以外にもレセプトの返戻をゼロにすることや、受付でのアポイント漏れをなくすことなども目標とできるものです。目標があれば、到達しなかった場合に原因を明らかにすることができ、解決策や対応策を考えることができるようになります。
考えて実行し、結果を検証することを繰り返すと、ある時点でぐんと結果が上昇するときがあります。これは、一つには仕事の慣れによる効率化がありますが、医院全体での取り組みが一つの仕組みとして機能し始める瞬間があるのです。

5スタッフとのコミュニケーションは活発ですか?

最終的には、院長とスタッフとのコミュニケーションが、いかに活発に行われているかが問われてきます。日ごろから、いろいろな話をする中で、医院内部でどういったことが起こっているのか、また、スタッフはどのような考えを持っているかが分かるものです。
コミュニケーションは、スタッフと飲みに行くことだけがその方法ではありません。朝の挨拶時、お昼の休憩時間等に、スタッフに声をかけるだけでも大きく違ってきます。また、診療の合間に時間ができたときなどは、診療から離れた話をすることもよいでしょう。
院長の影響力は絶大ですから、スタッフも院長との距離感には敏感です。前号でお伝えしたような、ミーティングを充実させることも一つの方法ですから、あらゆる接点から、スタッフとの意思疎通を図ることが大切です。

医院の統率を図るためには、厳しいばかりではなく、また規則で縛り付けるだけではなく、一方で和やかな雰囲気のもとお互いのコミュニケーションが重要です。そして、目標へ向かって日々取り組むことや、最後まで責任を持って業務遂行にあたる環境を作り、メリハリのある日常を作り出すことです。 最初に掲げた院長の方針・考え方を前面に出し、少しずつ医院の骨格を形成することに注力するとよいと思います。

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