会員登録

歯科医院経営講座 一覧を見る

第23回 (136号)

スタッフと上手に接する方法はありますか?

デンタル・マネジメント・コンサルティング 稲岡 勲/門田 亮

PDFダウンロード

THE DENTAL BUSINESS MANAGEMENT

歯科医院
経営講座136

デンタル・マネジメント・コンサルティング
稲岡 勲/門田 亮

Q

毎日の診療の現場では、スタッフに対して厳しく接しなければならない場面がありますが、スタッフと上手に接する方法はありますか?スタッフが仕事に対してミスをしてしまったときなどの対応が難しいと思います。多くの患者さんが訪れるところですし、仕事に対しては緊張感を持って取り組んで欲しいと考えていますから、厳しく指導することは必要と考えていますが、やる気を失わず前向きに取り組むことができる促し方はないでしょうか。

A

院長とスタッフの間には、一つ一つの仕事に対する取り組み姿勢や考え方に、大きな隔たりがある場合があります。日々指導を繰り返しながら、院長が考える理想の姿へと近づけていくものですが、時には厳しくスタッフを指導していく必要があります。その場合に、スタッフのモチベーションを高めながら、次につながるように促すために、以下のポイントを考えます。

1「怒る」ことと「叱る」ことの違い

以前、ある高校の理事が、所属する教員に向かって「返事や挨拶がしっかりできていないときは、もっと生徒を怒ってください」という指導をされていました。
このとき理事の発した「怒ってください」という言葉には、「返事をするように注意をしてください」という意味がありました。ところが、「怒る」と言ってしまうと、注意にとどまらず、何やら大変物騒な雰囲気になってしまいます。
「怒る」と対比してよく使われる言葉に「叱る」という言葉があります。部下を育成する、あるいは指導する際には、「怒る」のではなく「叱る」ようになどとよく言われますが、この二つの言葉をどのように理解しておくべきでしょうか。
「怒る」は、自分が対象になっている場合に使われるものでしょう。注意をしたのに言うことを聞かない、あるいは、聞いているのに知らぬフリをするなど、自分自身の感情が害されたり、不愉快にさせられたりする場合があります。
そのときには、「言うことを聞かないか!」といってふつふつと心の中に沸き起こってくる感情がありますが、これが「怒り」の感情であり「怒る」ことです。
一方、「叱る」ときには、自分が対象にはなっていません。患者さんに迷惑をかける行為があったので叱った、あるいは、不注意が続いたので態度を改めるよう叱った、など、事実に基づくもので感情を含むものではありません。「叱る」場合には、イライラ感は存在しないものです。
感情を含まず、事実にのみ注目して「叱った」場合は、スタッフにとっても受け入れやすいものとなります。院長の指導も整理ができた上でのものとなりますから、理解がしやすいのです。真摯に反省をし、次に同じことを繰り返さないためにはどうすればいいかという、前向きな考えに切り替えやすいものです。

2取り組みによる変化に注目する

前向きな考えを持ちやすいといっても、人材育成のためといって、いつも叱ってばかりではスタッフもうんざりしてしまいます。褒めるということも重要な要素なのですが、かといって、よくできたね、よく頑張ったねと安易に褒めるばかりでは、根拠がなく仕事への緊張感が薄れてしまうものです。
そこで、スタッフの取り組みによってもたらされた成果に注目して、事実に基づく話として評価をし、褒める言葉をかけることが効果的です。具体的な会話になるほどスタッフの実感の度合いも大きく違ってくるものです。
「患者さんに対して、必ず一声かける取り組みが患者さんには大変喜ばれているよ」「和やかな雰囲気が安心できるというもっぱらの評判らしいね」と実際の場面を返りながら話をすることで、スタッフも院長にしっかり見てもらえているという充実感を得ることができるのです。
同時に、客観的に事象を検証するために、アンケートなどを実施して患者さんの声を直接聞くことができると、より取り組みの成果が一目瞭然になりますし一層モチベーションが上がります。
スタッフが気持ちを切り替えて、新たな取り組みを行っている場面では、必ず何らかの変化が表れてくるものです。小さな変化をしっかりと捉えて実感ができると、次のステップへのモチベーションへとつなげていきやすいものです。

3質問を投げかけるときのポイント

「どうしてこれができていないのだ!」「なぜ、こうなるまえに私に報告しないのだ!」。ミスが顕在化し、問題となった時点で院長の耳に入る場合があります。院長にとっては、たとえ小さな問題であったとしても、少なからず衝撃を受け、つい詰問口調でスタッフに問いただすことがあるのではないでしょうか。スタッフを信頼するがゆえに、任せておいたときに起こるミスは、「なぜ?」「どうして?」という感情が伴いますから、受け入れたくないという感情が一旦は働き、こうした反応が出てしまうのも仕方のないことでしょう。しかし、「どうしてこれができていないのだ!」と聞くだけでは、スタッフも萎縮してしまい、ただ「すみません」という返答しか返ってきません。とにかく、この場をやり過ごそうとすると、次への前向きな発想が閉ざされてしまうのです。
そこで、「〜できない」という否定的な言葉によって、事実関係を確認するのではなく、どこまでできているのかということに注目して、次につなげることを考えます。「肯定的な質問」として、人材育成の場面で活用されている、コーチングの中で取り組まれている考え方です。
例えば、「どこまで対応できているのだ」と聞くと、スタッフも自分が行ってきた内容を振り返って考えることができます。普段の診療の現場では、起きてしまったミスをいつまでも引きずる時間はないはずです。できなかった原因を探ることも必要なことですが、まず、次にどうすれば難局を乗り越えることができるかということを考える必要があるのです。
「〜できる」ことに注目していくと、考える内容も積極的になります。一度は落ち込んでしまったとしても、挽回できるチャンスがあると実感することで、再び自信を持って仕事にあたることができるようになるのです。

院長を中心とする歯科医院の現場では、院長の言動・指導の影響力は計り知れないほど大きなものです。スタッフが積極的に仕事に向き合えるかどうかは、すべて院長の一言によって左右されますから、非常に神経を遣うところでもあるでしょう。院長のリーダーシップ、指導力を存分に発揮してモチベーションの向上を図りたいところです。

他の記事を探す

モリタ友の会

セミナー情報

セミナー検索はこちら

会員登録した方のみ、
限定コンテンツ・サービスが無料で利用可能

  • digitalDO internet ONLINE CATALOG
  • Dental Life Design
  • One To One Club
  • pd style

オンラインカタログでの製品の価格チェックやすべての記事の閲覧、臨床や経営に役立つメールマガジンを受け取ることができます。

商品のモニター参加や、新製品・優良品のご提供、セミナー優待割引のある、もっとお得な有料会員サービスもあります。