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DENTAL MAGAZINE デンタルマガジン

歯科医院経営講座 -21世紀の歯科医院経営-

第24回 (137号)
就業規則を作成する際のポイント
デンタル・マネジメント・コンサルティング 稲岡 勲/門田 亮

THE DENTAL BUSINESS MANAGEMENT

歯科医院
経営講座137

デンタル・マネジメント・コンサルティング
稲岡 勲/門田 亮

Q

スタッフ全員が安心して業務に携われるように、就業規則を作成し たいと考えています。どういったことがポイントになるでしょうか。

A

医院で勤務するスタッフの数が多くなると、個々の事情もそれだけたくさん出てくるようになります。
「旅行に行くために休む」「体調不良により欠勤をする」「親族に不幸があった」「通勤の電車が遅れた」など、普段思いも寄らない出来事が待ち構えているものです。
それらのスタッフ個々の出来事に、すべて平等に対応するとなると、何らかの一定の基準を設けなければ対処のしようがありません。
歯科医院が地域に根付き、患者さん、スタッフともに増えてくると、その規模も大きくなってきます。スタッフが3人4人、さらには7人8人と増えてくると、場当たり的な対応では対処しきれず、スタッフ間の対応に差が生じてしまい、必ずと言っていいほど不満が生じるものです。
そういった煩わしいトラブルを避けるためにも、働く上での決まりごとをまとめた就業規則は、一日も早く整備しておきたいものです。

1記憶だけでは対処できない

あるとき、医院に勤務するスタッフAさんから休暇の申請があったとします。「新婚旅行に行きたいのですが、特別休暇はないのでしょうか」ということでした。
そのときの院長の答えは、「いつもよく頑張ってくれているから5日間認める」というものでした。
それから、1年が経過したある日、同じく医院に勤務するBさんから、「新婚旅行に行くとすれば何日の休みがもらえるのですか?」との質問がありました。
Bさんも結婚を控えており、新婚旅行の計画を立てようとしているところでした。
医院の状況は、患者さんは増えつつあるときでしたが、スタッフを増員するまでには至らず、一人にかかる業務の負担が重くなっている状態でした。
スタッフには1日でも多く出勤して欲しいと考えていた院長は、Bさんに4日間の特別休暇を提示しました。
院長は、スタッフのためにと思い認めた特別休暇でしたが、AさんもBさんも一緒に働いており、与えられた休暇の日数に違いがあれば不信感を抱かれてしまうことになりかねません。
こうしたことがトラブルに発展すると、院長は大変なストレスを感じることになります。こんなことなら休暇など認めるのではなかったと思っても仕方がありません。
就業に関するトラブルを未然に防ぐ、あるいはトラブルに対して解決を図りやすくすることが、医院のルールとして就業規則を作成する大きな効果です。

2就業規則に記載するべきこと

就業規則には、記載するいくつかの決まりごとがあります。

<絶対的必要記載事項>
就業規則を作成する上で、絶対に記載しておかなければならない内容です。
  • ①始業および終業時刻(1日の所定労働時間)
  • ②休憩時間
  • ③休日、休暇
    年次有給休暇、産前産後、育児休暇、生理休暇など
  • ④賃金
    日給・月給等の賃金の決め方、締切日と支払日、昇給に関する内容
  • ⑤退職に関して
    解雇となる要件、解雇のための予告期間、解雇手当
<相対的必要記載事項>
ルールを決めた場合には、記載しなければならない内容です。
  • ①退職金
    退職金の有無(退職金が支払われる対象者)
    退職金の計算方法
  • ②賞与などの臨時の賃金や最低賃金に関して
  • ③食費や作業用品他の従業員負担
  • ④安全および衛生
  • ⑤職業訓練
  • ⑥災害補償および業務外の傷病扶助
  • ⑦表彰および制裁(その種類や程度)  等
3独自のルールで医院の特徴を出す

たとえば、労働基準法に定められている有給休暇の付与日数は表1となっていますが、法令どおりの日数に何日分かをプラスして規定することができます(表2)。
勤続年数が長くなるほど付与される日数が増えることで、長く頑張ってくれていることに対して、あるいは長く頑張ってほしいから待遇をよくしていることを就業規則で規定するものです。
労働基準法の条件を上回るものであれば何ら問題はありませんし、「残業代を支払う」ことへの抵抗感からすれば、「休暇を少し増やす」ことへの意識はそれほど強いものではないかもしれません。
年1日あるいは2日ほど法令よりも休暇を多くすることは、医院にとって金額的にもそれほど大きな負担ではないと思います。
さらには、自己啓発を目的として、積極的に院長にセミナーや学会の参加を申し出てくる従業員に対して、受講費用の一部を負担することの記載をしてもよいのです。待遇は悪いことばかりではなく、医院としてもできる限り精一杯のことを考えていることを示していくことがモチベーションのアップにもつながります。

表 1:一般の労働者(週の所定労働日数が5日以上または週の所定労働時間が30時間以上の労働者)

継続勤務年数 6ヵ月 1年6ヵ月 2年6ヵ月 3年6ヵ月 4年6ヵ月 5年6ヵ月 6年6ヵ月以上
付与日数 10日 11日 12日 14日 16日 18日 20日
継続勤務年数 付与日数
6ヵ月 10日
1年6ヵ月 11日
2年6ヵ月 12日
3年6ヵ月 14日
4年6ヵ月 16日
5年6ヵ月 18日
6年6ヵ月以上 20日

表2:労働基準法の付与日数に数日をプラス

継続勤務年数 6ヵ月 1年6ヵ月 2年6ヵ月 3年6ヵ月 4年6ヵ月 5年6ヵ月 6年6ヵ月以上
付与日数 10日 11日 13日 15日 18日 20日 23日
継続勤務年数 付与日数
6ヵ月 10日
1年6ヵ月 11日
2年6ヵ月 13日
3年6ヵ月 15日
4年6ヵ月 18日
5年6ヵ月 20日
6年6ヵ月以上 23日

就業規則に関して、作成義務があるのは従業員10名以上(パート・アルバイト含む)の事業所となっていますから、作成義務が生じないうちは、最低限必要な項目のみを規定するなど柔軟に対応することができます。従業員数10名未満であっても、規定を作ることで従業員とのトラブルを未然に防ぐことや、モチベーションアップを図ることなど積極的に活用することができるのです。