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第25回 (138号)

利益(所得)を確保できる経営体質へ変換するには、どのように経費の見直しを進めるべきでしょうか

デンタル・マネジメント・コンサルティング 稲岡 勲/門田 亮

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THE DENTAL BUSINESS MANAGEMENT

歯科医院
経営講座138

デンタル・マネジメント・コンサルティング
稲岡 勲/門田 亮

Q

収入をある程度確保できたとしても、大きな経費負担によって経営を圧迫されることから脱却したいと思います。無駄な経費を抑えて、しっかりと利益(所得)を確保できる経営体質へ転換したいと考えていますが、どのように経費の見直しを進めるべきでしょうか。

A

利益(所得)の確保が、収入の増減もしくは経費の増減によって行われていることは言うまでもありませんが、思い通りに収入の伸びが期待できない現在の経営環境にあっては、いかに経費をコントロールするかにかかっているといっても過言ではありません。
同じ収入規模の歯科医院であっても、経費のかけ方によって経営状況は大きく異なってきます。経費の見直しを進める際には、とにかく目に付く経費をすべて削減していくということではなく、競争力を維持するために、しっかりとかけるべきコストと、一円でも多く削減するべきコストに分けて考える必要があります。

1かけるべきコスト

収入を維持するために、あるいは収入増加を図るために、積極的にかけるべきコストとして、以下の内容が挙げられます。
<材料薬品費、外注技工料、研究図書費、減価償却費、給与賃金、福利厚生費、リース料、衛生管理費、広告宣伝費、(租税公課)>
研究図書費は、セミナーの参加費が主な内容ですが、院長以外が受講する場合には、誰がどういった目的を持って受講するかを検討した上で行います。受講後には、スタッフ全員での勉強会を開催して、研修内容の医院全体への浸透を徹底的に図ります。
減価償却費やリース料は、設備の老朽化に対応して設備更新を行うものです。患者さんにとって気持ちのよい空間を常に維持できているかどうかがポイントですが、内装工事あるいはユニットの更新等といった場合には、大変大きな金額を必要とします。定期的な設備更新に向けて、自己資金をどの程度投下するのか、金融機関からはどの程度借入が可能かといった、事前の資金計画を立てておく必要があります。
一見すると、給与賃金は少しでも抑えておきたいコストですが、スタッフのモチベーションを維持することや、定着を高めるために、昇給や賞与の支給は欠かせません。多くは、業績に基づいて支給するものとはいえ、どの程度までなら許容できるのかを計画し、できるだけ許容度いっぱいまで対応できるよう準備をしておくことです。
かけるべきコストとはいえ、いくらでもかけてよいわけではありません。これまでの状況や、あるいは歯科医院の平均的な経費比率等を参考にしながら年間計画を立て、その範囲内で積極的に対策を講じます。
同じ広告宣伝費に含まれる経費であっても、やめてよいと思われるものは思い切ってやめることが必要な場合もあるのです。

2抑えるべきコスト

一方で、経営的には一円でも少ない方がよく、日ごろから抑えていきたい経費として、以下の内容が挙げられます。
<水道光熱費、旅費交通費、通信費、損害保険料、修繕費、消耗品費、利子割引料、地代家賃、諸会費、事務用品費、燃料費、雑費>
水道光熱費に含まれる電気料金等は、電気の種類や容量の見直しによって削減が可能な場合があります。無駄な回線の契約をして、通信費が多くなっていないかどうかも見直すポイントです。ボールペン1本、消しゴムひとつにしても、長く大切に使えば無駄に買い換える必要はありません。ひと月の金額としてみれば、そう多くない経費であっても、削減できるものなら削減するに越したことはありませんから、一つ一つの内容を精査して、徹底して削減する姿勢が大切です。
水道光熱費や通信費、事務用品費や雑費等の経費は、スタッフの心がけによっても十分に対応可能なものですから、院長の指示によって、スタッフが管理できる仕組みが整えられることが理想的です。
医院全体の目標として、スタッフ全員が、少しずつでも日々意識をして取り組むことで、驚くほど大きな効果が出てくるものです。

3借入返済元金の資金繰りへの影響

借入金の額が大きいと、毎月の返済金額も大きくなってしまいます。返済元金は経費科目として表れてきませんから、資金繰りへどれほどの影響があるのかが不明確です。特に、歯科医院の経営規模が大きくなって、借入の本数が増えてくると、毎月どれぐらい返済しているのか、それぞれの借入がいつまで続くのかを把握しておくことは難しいものです。
借入金の返済元金は、収入から経費を差し引いた利益(所得)から払っていくものですから、返済額が利益(所得)のうちのどれぐらいを占めているのかを常に考えておく必要があります。
毎月の返済額が大きく、あまりにも負担が重いようであれば、借り換えによって返済年数を延ばすことや、複数の借入をひとつにまとめていくことなどを検討しなければなりません。
設備投資のための資金計画と同様、借入についても返済計画を欠かさず、資金繰りへの影響を常に考えておく必要があります。

経費管理をする際には、かけるべき経費はしっかりとかけ、抑えるべき経費は徹底して抑えるという、メリハリのある対応が必要です。すべての経費を削減するばかりでは、競争力を維持することができなくなり経営を維持することも難しくなりますから、スタッフとのミーティング等を通じて院長の経費に対する考え方を明確に伝え、医院全体の問題として積極的に取り組むことを検討します。収入規模がそれほど大きくなくとも、経費管理が適切に行われ、利益(所得)を十分に確保できていれば、定期的な設備投資を計画性を持って行うことができますし、必要な診療材料を常に把握することができますから、在庫管理も適正に行うことができます。総勘定元帳や出金伝票等から現在の出金状況を把握し、見直すべきものは思い切って削減し、一方、積極的に投資をするものは年間の計画を立て、全体の金額を見積もることで計画的な経費管理を進めることができます。

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