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第27回 (140号)

今後の医院経営の注視すべきポイントは?

デンタル・マネジメント・コンサルティング 稲岡 勲/門田 亮

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THE DENTAL BUSINESS MANAGEMENT

歯科医院
経営講座140

デンタル・マネジメント・コンサルティング
稲岡 勲/門田 亮

Q

当院はそれほど規模が大きくありませんが、最近少し患者さんが減少傾向にあるように思います。どのようにして患者増加を考えればよいかということも必要だと思いますが、この先医院としてどう対応していけばよいのか不安を感じています。今後の医院経営を考えていくうえで、どういったことに注視して進めていけばよいでしょうか。

A

歯科医院の規模の大小にかかわらず、院長以外にスタッフがいて、毎日の経営が営まれているということは、組織として機能しているということです。
毎日、何らかの動きを伴って経営が持続されているのですから、経営状況が厳しい時ほど、的確にその動きをとらえながら、分析すべきものを正確に把握し、次の展開を図る必要があります。

1内部情報を具体的な数字として捉える

一日の来院患者数は何人ぐらいか、紹介で来院される患者さんはどれぐらいいるのだろうか、レセプト一枚当たりの点数は何点ぐらいか、といった、日々診療を行うことで得られる情報を数字として確認しておくことは大切なことです。
毎日患者さんはだいたいこれぐらい来ているからいいだろう、最近少し患者さんが減っているような気がする、といった漠然とした捉え方では、周辺への大きな歯科医院の進出等といった大きな動きに対して焦燥感しか生まれません。
その結果、今は景気が悪いのだから仕方がないといったことに落ち着いてしまい、効果的な対策を行えないまま進んでしまうものです。
医院の状況を確認する場合、まずは医院に来院する患者さんの動向を把握することが大切です。どういった動機から来院してきているのか、だれからの紹介で来院してきたのか、通院を途中で止めてしまい、いつの間にか来院しなくなった患者さんはどれぐらいいるのかといったことを、具体的に集計して数値として確認します。
毎日の来院患者数や、保険点数等はコンピュータを利用して確認することができますが、それ以外の情報は、患者さんへのアンケートの実施や、問診票への記載内容あるいは、予約表から一つずつピックアップして集計する必要があります。労力を要する作業ですが、月に一度、医院の実態調査という意味でも行うとよいでしょう。さらに保険診療と自由診療の比率の変化や、使用する材料や消耗品の動きなども、年間の推移を見ながら医院の動向を把握しておきたい内容のものです。
患者さんへ来院を促す対応として、①ホームページの強化や一新、②紹介患者獲得に向けた取り組み、③治療途中で来院しなくなった患者さんへの働きかけ、④家族ごとの患者管理に向けた体制作り、⑤自費診療への取り組み、⑥周辺住民の属性に合わせた医院紹介の検討など、考えるべき経営課題が山積する中で、何から始めるのか、どこに力を注いで対応を考えるのか、医院の内部情報を把握したうえで、速やかに的確に実行していきます。

2設備投資は思い切って行う

医院の競争力を維持していくためには、定期的に行う設備投資が欠かせません。チェアユニットの増設・更新、レントゲン機器の更新、内外装の改装、ホームページの再構築など、大きな額を必要とする投資から、新開発の滅菌器の導入や新たな広告看板の設置、消耗品や使用材料品の変更など比較的軽微な投資まで、支出を伴う内容は途絶えることがありません。
さまざまな投資対象の中から、医院に必要な内容を吟味して対応を行っていくわけですが、特に大きな額の投資を必要とするものに関しては、資金準備をしておく必要があります。投資を自己資金で行うのであれば、別口座を設定して資金準備に対応することも必要です。また、新たな借入により投資を行うのであれば、現在の借入の終了時期や、返済額に無理は生じないかといった、資金繰りの問題を十分に考えておく必要があります。
重要なことは、十分な検討を重ねた結果の設備投資については、最大限の投資効果を生むために思い切って行うことが大切です。そして投資を行った設備はしっかりと使うことです。高価な最新のレーザー機器などが、院長室の隅っこに追いやられている光景を目にすることがありますが、自医院の診療方針を明確にして、十分に使いこなせる判断をした上で購入を決定することが大切です。あいまいな点をすべて洗い出し、不安要素を完全に払しょくした上で投資計画を進めます。

3スタッフに仕事を任せる

院長一人で、医院のすべての業務を行うことは大変なことであり、現実には不可能に近いと言っても過言ではありません。それよりもむしろ、スタッフに管理を任せ、必要な時に院長が指示して情報を得るということのほうが、院長の負担も少なく、スタッフにも責任感が生まれてくるものです。
自分でやった方が早いという理由から、とかく院長自身が院内のさまざまなことを行うことがありますが、気が付けば事務作業的な内容のことまで院長が行っている場合があります。一見、院長のほうが早く対応できるように感じますが、資料をまとめたり、集計を行ったりすることは、スタッフのきめ細かさによって正確に行われることが多いものです。
任せるのが苦手という場合、「○○をまとめておいて…」「○○出しといてくれないか…」など、多くは指示が具体性に欠けることが少なくありません。何をどのようにまとめるのか、いつまでに行えばよいのかといった、期日、目的、内容等を明確にして指示を出す必要があるのです。
医院のデータを表にまとめて提出を求める場合や、患者さんへの通知事項を明記した、院内の掲示物の作成を依頼する際も、どういった表や掲示物を作成してほしいかということを、メモ用紙等に手書きをした下書き原稿等を渡すと、指示されたスタッフも間違えようがなく、かつ早急に対応ができます。
最初は、指示を一つ出すのにも手間がかかりますから、「自分がやった方が早い」という結論に至るのも当然のことと思いますが、一つひとつの指示を繰り返すうちに、スタッフも先生の考えを理解するようになります。次第にスタッフ自らが、必要となる資料や掲示物の作成に取り組むようになり、責任感と自主性が生まれてくるのです。

経営環境が変化してきた場合、とかく周辺に意識が行ってしまい焦りを生じがちになります。しかし、厳しい状況の時ほど医院の状況を正確に把握し、医院の方針や考え方など自らの位置を再確認したうえで、次にどこへ動いていくのかを決定しなければなりません。スタッフの力もすべて結集して、医院が一つになって進んでいくことが大切と思います。

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