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第28回 (141号)

未経験者や新規学卒者を採用するメリットと活用できる施策

デンタル・マネジメント・コンサルティング 稲岡 勲/門田 亮

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THE DENTAL BUSINESS MANAGEMENT

歯科医院
経営講座141

デンタル・マネジメント・コンサルティング
稲岡 勲/門田 亮

Q

歯科助手や受付の定着を図りたいと思います。これまでは、歯科医院で十分に経験のある中途採用者を採用してきましたが、少し幅を広げて、未経験者でもやる気のある人材を探し、当院の方針を十分理解してもらいたいと思います。未経験者や新規学卒者を採用するメリットやデメリット、あるいは活用できる施策等があれば教えてください。

A

歯科医院での業務は、取り扱う器具や備品の名前も一般的ではなく、歯を患って来院する患者さんを相手にする点でも、医療という専門性が問われる業種です。物品の販売や接客とは異なるため、経験者を強く求める傾向があります。ところが、医療分野に興味を持つ人材は多く、中には未経験でも精一杯頑張って働きたいというモチベーションの高い人材が控えていることも確かです。
医院の診療方針を再確認し、改めて医院全体に定着させるべく、幅広い人材の活用に取り組むことは、今後、歯科医院が一つの方向に向かって進むためにも必要なことではではないでしょうか。特に、新規学卒者を採用するということは、医院の雰囲気や文化、方針といったものに一から取り組むことができるメリットがあります。正社員として初めて働くということは、本人にとっても非常に緊張を強いられる場面ではありますが、同時に大変意欲的に取り組もうとする時期でもあります。モチベーションの高い時期には、新たな仕事への取り組みも積極的に行えるものですから、特に新たに医院の雰囲気を変えるときや、診療方針の転換を図る際は、皆で方針を共有しやすいというメリットがあります。
未経験者や新規学卒者を採用するデメリットとしては、研修等に時間がかかる点が挙げられます。大企業のように集団研修をすることができませんし、外部のセミナーへ参加して研修を受けるにしても、限られた時間の中で、どのように研修計画を立てるかといったことや、セミナーに参加するための費用といったコスト面での問題も出てきます。
また、膨大な種類の器具器材の名称や使い方を覚えてもらうのにも一苦労しなければなりません。このように新規学卒者や未経験者を採用するにあたり、歯科医院のスタッフとして一人前に働けるようになるまでが大変ではありますが、行政としても、そうした人材を後押しする制度があります。
昨今の新規学卒者の就職状況は非常に厳しいものがあり、高卒・大卒ともに7割を少し超える程度の就職率でしかありません。したがって、学校は卒業できたものの就職先がなく、卒業後も就職活動を続ける新規学卒者が少なくないのです。ハローワークでは、こうして学校卒業後も就職活動を続ける新規学卒者を採用する企業に対して、助成金(奨励金)を支給して採用につなげようとしています。
歯科医院においては、即戦力を求められることが多く、医院で人材育成を行う時間的なゆとりや、人員配置が難しいのが現状であるため、一般求人誌等で経験者を採用する機会も多いかもしれませんが、奨励金を上手に活用して新規学卒者や未経験者を育てていく方法もよいのではないでしょうか。
座学等の助成対象になる費用としては、院内研修・院外研修共に対象となります。外部講師に支払う講師料等、あるいは実習室や研修室などの会場使用料のほか、必要な教科書や教材等も含まれます。したがって、こうした奨励金を活用し、新人研修プログラムといったものを整備して、スタッフの教育をより充実させることが可能になるのです。
ハローワークを通じた奨励金規定ですから、歯科医院として雇用保険の適用事業所であることや、対象となる従業員は雇用保険に加入することなどの条件が必要ですし、出勤簿や賃金台帳等の労働関係帳簿の整備等が求められます。しかし、歯科医院としても教育にかかる費用や研修費、あるいは、院内でつきっきりで指導をしてくれる先輩スタッフにかかる経費へ充当できるなどの大きなメリットがあります。

1試行雇用(トライアル雇用)奨励金

本採用前に3ヵ月程度の試用期間を設けている歯科医院があります。雇う側も勤める側も、どちらも歯科医院での勤務特性があるかどうかがわかりませんから、試用期間中にお互いの相性や特性を見極める期間として設定している医院が多いようです。
ハローワークでは、試行的に3ヵ月間の短期雇用を行った場合に、労働者一人につき月額4万円、最大12万円を支給する制度があります。40歳未満の若年者や母子家庭の母等が対象となりますが、トライアル雇用終了後に本採用するかどうかを決めることができる点が特長です。

23年以内既卒者トライアル雇用奨励金

有期雇用期間(原則3ヵ月):対象者一人につき月額10万円(最大30万円)
有期雇用終了後の正規雇用での雇入れ:対象者一人につき50万円(正規雇用から3ヵ月定着した場合に支給されます)

33年以内既卒者採用拡大奨励金

正規雇用での雇入れから6ヵ月定着した場合に100万円を支給

*対象者ごとではなく、雇用保険適用事業所単位で1事業所あたり1回限り。

4既卒者育成支援奨励金

有期雇用期間(原則6ヵ月):対象者一人につき月額10万円(最大60万円)
有期雇用期間の座学等に要した費用(3ヵ月以内):対象者一人につき月額上限5万円(最大15万円)
有期雇用終了後の正規雇用での雇入れ:対象者一人につき50万円(正規雇用から3ヵ月定着した場合に支給されます)

業務の引き継ぎや教育の煩わしさなどから、とかく未経験者や新規学卒者は敬遠されがちですが、医院の方針を真に理解してくれるスタッフを育てることができる点でも、幅広く人材を募ることを検討することもよいと思います。

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