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DENTAL MAGAZINE デンタルマガジン

歯科医院経営講座 -21世紀の歯科医院経営-

第31回 (144号)
スタッフミーティング等で円滑なコミュニケーションを取るためのポイント
デンタル・マネジメント・コンサルティング 稲岡 勲/門田 亮

THE DENTAL BUSINESS MANAGEMENT

歯科医院
経営講座144

デンタル・マネジメント・コンサルティング
稲岡 勲/門田 亮

Q

日々行う診療上での指示や質問に対して、なかなか的確に答えられないスタッフがいます。言葉遣いなども稚拙な面があり、年齢の割には少し幼児的な印象を受けるのですが、他のスタッフも含めた院内でのコミュニケーションに問題が生じることがあります。スタッフとの人間関係をよりよいものにしたいと考えていますし、スタッフ同士がお互いを理解しながら、円滑なコミュニケーションを取れることを目指していますが、スタッフミーティング等で話し合うためにポイントとなることはありませんか?

A

スタッフ間のコミュニケーションを円滑なものにするには、心理学的な面から考えてみることも必要かもしれません。そこで、人とのコミュニケーションがどのように行われているかを理解する方法の一つとして、交流分析の点から考えるとわかりやすいことがあります。

交流分析(TA:Transactional Analysis)は、エリック・バーンというカナダ出身の精神科医が提唱した理論で、精神分析による心の状態を誰もがわかるように整理したものです。
エリック・バーンの師であった心理学者のフロイトは、心の状態を

  • ① 人間本来の自然な姿で、生理的・本能的な欲求の世界
    「C:エス」
  • ② 本能的な欲求を環境や状況に合わせてコントロールする
    「A:エゴ(自我)」
  • ③ 自我を超えて道徳的であろうと自我を監視する
    「P:超自我」

の3つに分類しました。
エリック・バーンは、これをさらに5つの自我状態に分類しました。

  • ●C:エス
    ①FC(フリーチャイルド):自由な子供の世界
    →周囲の環境にとらわれずに欲求を満たそうとする
    ②AC(アダプテッドチャイルド):順応した子供
    →環境に順応した、いい子だと認めてほしいという願望
  • ●A:エゴ(自我)
    ③A(アダルト):状況判断や分析を行う冷静な自分
  • ●P:超自我
    ④CP(クリティカル・ペアレント)
    →父性的でルールや道徳的に厳しく、批判的な親の心
    ⑤NP(ナーシャル・ペアレント)
    →母性的で優しく、養育的な親の心

人とコミュニケーションを行う際には、いずれかの自分を使って相手に気持ちを投げかけたり、答えたりしているものです。コミュニケーションが円滑な状態の時は、相手の心の状態に即した言葉を的確に投げかけているときです。

一方で、コミュニケーションに失敗するときは、相手の異なった状態に投げかけた場合です。当然、答えも予期せぬものが返ってくるために、大きな問題を引き起こす可能性があるのです。
歯科医療の現場は、高度に専門的な知識、技術が必要とされ、難しい治療に直面するときなどは、極度のストレスに晒されることも少なくないでしょう。冷静であると同時に、厳しく自分を律し目の前の難局に立ち向かう場面では、A(アダルト)あるいはCP(クリティカル・ペアレント)な状態が強く出ているのかもしれません。
その時に、スタッフが院長の指示に対して冷静に対処する、あるいはてきぱきと迅速に対応してくれると非常に心強いものです。この場合、院長のA(アダルト)もしくはCP(クリティカル・ペアレント)に対して、スタッフの状態は、AC(アダプテッドチャイルド)であると、順応した回答が得られ関係がうまく維持できるということになります。
携帯電話で自分の気持ちをそのまま表現すれば、即座にだれかが反応して、自分の気持ちを後押ししてもらえることが一般的になりました。ところが、現実の生活の場では、厳しい人、優しい人、世話好きな人、無関心な人といったたくさんの要素に直接触れながら生活をすることになります。
今、歯科医院で働こうとする人たちの多くは、自分と考えや感じ方を異にする人たちとの交流を十分に経験しないまま社会に出ることも多いものです。歯科医院での人間関係は、院長とスタッフ、経営者と従業員、歯科医師と歯科衛生士・歯科助手といった、スタッフからすれば一般の会社以上に従属的な関係が強い職場です。交流分析で言うところのCP(クリティカル・ペアレント)→C(チャイルド)の構図が多い中で、CP(クリティカル・ペアレント)に対する返し方を身につけていないスタッフとのコミュニケーションが、円滑に進まないのは当然のことでもあるのでしょう。
したがって、「若手を活用する職場」として求められていることは、日々の仕事を通じて自分を冷静に見つめ、ルールや道徳を意識しながら、状況に合わせた行動を身につけてもらう場ということでもあります。C(チャイルド)→CP(クリティカル・ペアレント)へ的確に応えることを身につけることや、A(アダルト)同士で現在の状況を冷静にとらえた会話ができるよう導きながら、円滑なコミュニケーションを目指したいところです。

●エゴグラムテストの活用
責任感の強さ、優しさ、合理的な判断、創造性、従順性、妥協性等の性格特性を、比較的短時間に確認する方法として、エゴグラムテストというものがあります。50 問の質問形式に答えることで、5つの特性のうち、どの特性が強く表れるのかをグラフに表わそうとするものです。エリック・バ−ンの弟子でジョン・M・デュセイの考案した性格分析手法です。
医療の現場は究極のところ、優しさが求められる場でもありますから、思いやりや共感といった母性的な優しさを表すNP(ナーシャル・ペアレント)が強く表れる人を探したいところです。これから採用しようとするスタッフに限らず、現在勤務中のスタッフも含めて、お互いがどういう特性を持っているのかを理解することは、院内の人間関係を円滑にする上での一つの方法でもあります。スタッフミーティングなどで活用すると、楽しみながら相互理解を深めることにつながるものと思います。