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第38回 (151号)

経営管理のポイントと対策

デンタル・マネジメント・コンサルティング 稲岡 勲/門田 亮

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歯科医院経営講座151

デンタル・マネジメント・コンサルティング
稲岡 勲/門田 亮

Question
毎年、比較的安定して来院患者さんが増加しており、それに伴って収入も増加傾向にあります。ところが、スタッフが少しずつ増えて、設備投資を徐々に重ねていくうちに経費がかさみ、所得(利益)が減少する傾向となってきました。経費管理をする上でのポイントや対策について教えてください。
Answer
経費の捉え方として、収入変動の影響を受けやすい性質のものと、あまり影響を受けずある程度一定してかかる経費とに分けて考えると、比較的捕らえやすく対策を立てやすくなります。また、事業用借入金のように経費ではなくとも比較的大きい金額は、資金繰りの影響を考えておく必要があります。それぞれの経費が現在どういった傾向にあるのかを把握し、比較的金額の大きな経費を重点的に管理して資金繰りの安定を図ります。
収入に関係して増減する経費

収入の増減に影響を受けやすい経費としては材料薬品費や技工料があります。収入が増えれば、材料薬品費も増加する傾向がありますから、金額だけでは一概に判断できないものでもあります。
したがって、材料薬品と技工料については、金額だけでの判断ではなく、収入に対する比率も同時に見ていくことが適切な判断につながります。
材料薬品については、収入規模が大きくなるにつれて、収入に対する比率も大きくなる傾向があります(DMC収支アンケート調査に基づく比率)。
現在、来院患者さんも増えて収入が増加しているとのことですから、材料薬品についても増加傾向となっているのかもしれません。
なお、材料薬品代の歯科医院平均では7.5%、収入規模3千万未満5.5%、3千万円台6.0%、4千万円台6.8%、5千万円台7.4%、6千万円台8.3%、7千万円台8.4%、8千万円以上の大規模歯科医院になると10.7%となっています。
収入が増えるということは、患者さんが増えますから使用する材料の量も多くなります。
今まで一つずつ購入していたものをケース単位で購入することもあるかもしれません。また、材料を使用するドクターが増え、新しい材料を開封するスタッフが増えてくると、全体的な購入量は多くなる傾向があります。
注意すべきことは、適切なときに適切な量を購入するように心がけ、使用期限があるものについては、期限内で無駄のないように使い切るよう発注頻度をコントロールすることです。
スタッフでの管理が、自分達の業務として十分に浸透するまでは院長がチェックを行う必要があるでしょう。

大きな経費への対応

一方で、家賃や人件費といった経費は、歯科医院の経費の中でもっとも大きいものであり、なおかつ収入の増減に左右されない固定的な経費の代表格です。
家賃に関しては、収入の約10%を超えてくると、経営的に苦しくなってきます。収入増加の局面にあっても、早急に増床することは避けることや、増床する場合でも、そのタイミングに合わせて坪単価の見直しができないかを交渉することも必要です。
さらには、周辺との家賃相場を比較しながら、家賃減額交渉を行うことも考えましょう。
人件費については、スタッフ数を極力少なく、かつ効率を最大限に上げて、一人あたりの月額収入を大きくすることが好ましい状況ですが、患者さんへの関わり方や、立地条件によって集まりやすい人材が異なるため、診療方針や経営環境に基づき人事構成を整えていく必要があるでしょう。
スタッフ一人ひとりのモチベーションを高め、責任感を醸成する目的がある場合は、常勤スタッフを維持し、徹底的な業務の見直しにより効率化を図ります。いわば少数精鋭で日々の業務に対応する形です。
一方、常勤でのスタッフ確保が難しく主婦層のスタッフが多い場合は、短時間勤務の主婦・学生層のスタッフを確保して対応することになります。注意点としては、業務の確実な連携を図りながら進めていく必要があることです。短時間勤務者で気をつけなければならないのは、社会保険等の加入要件です。社会保険調査等で指摘を受けるケースもありますから、勤務時間や勤務日数等の労務管理に関しては、今一度確認をしておくことが必要です。

経費外支出金への対応

事業用借入金の返済方法は、毎月元金を等しく返済する元金均等返済方式が主流です。そのため、返済初期は利息支払が大きく、元金と利息を合わせた額も大きい額になります。返済が進めば利息も減りますから、資金繰りは楽になってくるとはいえ、経費にならない元金部分は一定です。
借入金の元金も家賃などと同じく、収入の増減に影響されず一定してかかる費用として捉えることができますから、所得が減少する局面においては注意が必要となるものです。
資金繰りが難しい場合は、返済期限を延ばすことで毎月の返済元金を減らすことを検討する必要があります。運転資金を含めて借り換えを行うことの検討や、新たな金融機関から資金調達を図ることもあります。既に取引のある金融機関から、追加で新たに融資を受けやすくするために、借入金を全て返済してしまわずに、少しの金額でも取引を継続しておくことは必要です。
また、新任挨拶等で飛び込み営業を行う金融機関担当者がありますが、新規取引の場合には破格の条件を出してくる場合があります。新たな機会と捉えて融資条件等を聞くこともよいでしょう。

Advice
経費管理を行い毎月の支払いが安定してくると、資金繰りの安定につながります。いつの時点でどれぐらいの入出金があり、月末時点ではいくらぐらいの残高になるかが予測できると、設備投資などへも積極的に対策を講じることができます。定期積金や定期預金などの別口座に資金を確保できるようになると、運転資金との区別が明確になり資金管理がしやすくなります。まとまった資金を必要とする際にも、日常の支払いに影響を与えることなく資金を振り向けることができます。収入や所得が減少する局面においても慌てないために、安定した経営状態のときに資金管理を的確に行い、収入が20%程度減少しても対応できる余力を保持しておくことが大切です。

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