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デンタル・マネジメント・コンサルティング
稲岡 勲/門田 亮
設備投資を行う際には導入目的を明確にする必要があります。歯科医院の限られた経営資源の中で、設備投資を最大限に生かすためには、何のために設備投資を行うのかをはっきりさせ、どういった設備をどの程度導入するかという計画を立てる必要がります。
患者さんの増加によりチェアユニットの増設を行う場合には、治療用として周辺設備を充実させ、主訴に幅広く対応するために導入するのか、あるいは歯科衛生士を中心として使用することを想定して、メンテナンスを中心に比較的低いコストで2台導入するのかなど、今後の診療方針に基づいて投資する設備を検討します。
また、設備投資の範囲が内外装の改装から医療機器にいたるまで、すべてに及ぶ規模で行おうとする場合は、医院全体のコンセプトに沿ったものである必要があります。院長のイメージや考え方を十分に反映したものであるか、あるいは将来の事業承継を見据えたものなのか、これから行おうとする新たな診療方針に沿って設備計画の内容は大きく変わります。
設備計画を行う際には、どのような歯科医院を目指すのか、また診療体制をどのように構築していくのかという診療方針や理念を明確にし、それに合致した設備を選択していくことになります。
設備計画を実現していくためには、資金計画を綿密に行っていかなければなりません。自己資金ですべて賄えるものか、あるいは金融機関からの融資を受けるのかといったことですが、設備投資の規模や内容によっては、さらにリースを活用することも検討しなければなりません。
歯科医院などの医療機関に対する融資姿勢は比較的緩い環境にあるとはいえ、設備投資を行うことで、どのように収入状況が変化するかという事業計画は作成しておくことが好ましいといえるでしょう。
DMCで毎年実施している収支アンケート調査結果に基づきますと、収入に対する設備投資の割合は全体平均で12.3%です。収入規模が大きくなるにつれて、相対的に設備投資の割合は下がりますが、それでも収入規模8千万円以上の大規模歯科医院の設備投資率は9.7%と約1割近くに及んでいます。設備投資率には、減価償却費やリース料など複数年に亘り経費化されるものが主になりますから、全体の投資額としてはさらに大きくなります。
競争力を維持するためには、設備が老朽化する前に対応しなければなりませんが、非常に大きな金額を要するため、前もって資金準備を行い計画的に進める必要があります。
設備計画が整い、資金計画を検討すると同時に、融資を受けた資金を滞りなく返済できるかどうかという返済計画を考える必要があります。
年齢的にいつまで診療を行う予定であるのか、後継者はどうなっているのかということも少なからず影響します。
また、理想とする設備をすべて導入しようとすると、資金計画が非常に大きくなってしまい、返済余力を大幅に上回ってしまうことがあります。
特に、内外装から、チェアユニットやCT等医療機器に関するものまで多岐に亘りますと、いずれもがとても大きな費用を要するものですから、場合によっては1期〜3期と時期を区切りながら行うことも必要です。
設備投資に対する金融機関からの借入資金は、将来的にも借り換えが難しい可能性があります。
したがって、固定的な支出となる返済資金によって資金繰りが悪化しないように、複数の金融機関からの融資を検討することや、返済期間は比較的短くなりますが運転資金融資を活用しながら、返済計画を綿密に立てることが大切です。