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デンタル・マネジメント・コンサルティング
稲岡 勲/門田 亮
歯科医院の規模の大小に関わらず、いろいろな人が関わって一つの業務が成り立つものです。一定水準の業務を維持することはとても難しいことですが、スタッフが入れ替わっても、同じ水準で患者対応をすることは、患者さんの大きな安心感につながります。
したがって、同じ患者サービスを提供するために行うことは、一つひとつの業務に対して、一定のやり方を作る、つまり業務の仕組みを作ることに他なりません。
誰が担当しても、いつ行っても、業務の仕組みができていれば、次に向けた対策を迅速に取ることができるのです。
そのため、診療におけるあらゆる場面において、スタッフとしてどのように対処するか、一つひとつのきめ細かな積み重ねが大切になります。
たとえば、電話を受けるときの言葉の遣い方をどうするか、患者さんが来院された際の迎え入れの声掛けはどうするか、患者さんを診療室内に案内するときは、どのような言葉を遣い、どう導くかといったことを、スタッフ全員の共通認識として話し合い、共通の形として決めておくことが、仕組み作りにつながります。
仕組みができると、次に毎日の診療の中で業務として運用することになります。その際にいくつか注意すべきことがあります。
第一には、患者さんへの対応が、事務的にならないことを心がけます。スタッフの中には、責任感のあまり、温かい対応よりも業務の形を優先した対応を取ることがあります。
業務を忠実に遂行しようとする心がけは間違ってはいないのですが、まず考えるべきは患者さんの状態や気持ちです。仕組み作りは、マニュアルを作成することではありませんから、あくまでも患者さんの様子を最優先した、臨機応変な対応を必要とします。
また、メンテナンスや予防の患者さんが増えてきたとは言え、まだまだ治療で訪れる患者さんは多く存在します。特に痛みを伴って来院される患者さんは、大きな不安を抱いてきていることを、スタッフが忘れないようにしなければなりません。
スタッフ自身に余裕があれば大きな問題は生じませんが、自らの忙しさに余裕がなくなってしまうと、普段は当たり前にできることができなくなってしまうものです。
患者さんは、日常よりもデリケートな状態であることを常に意識して、対応にばらつきがないようにすることの意味を、ミーティングを通じて理解を深めることが大切です。
業務水準を一定にするための仕組みを作り、運用しようとしても、個人の特性や技量により、予定通りに進まないことがあります。
あるスタッフは一度教えると理解が早く、他の業務にも広く意識を向けることができますが、中には何度も教えなければならないスタッフもいます。
また、業務の仕組みや流れは一度作成したら終わりではなく、状況に応じて変えていくことが必要です。さらに効率を図れることはないか、改善ができる点はないかと考える必要があります。
その際注意すべきことは、院長の考えを反映したものであるかどうかが大切です。単なるスタッフの勝手な判断により業務の改善を行うべきではありません。院長の意向に沿った形で見直すようにしてください。
また、ある程度業務の仕組みが定着し、スタッフの理解が進むようになると、スタッフ主導で管理することができるようになります。医院の仕組みとしてスタッフに浸透したといえるでしょう。院長が前に出て引っ張っていく管理方法から、院長は全体を見渡しながら大局的に管理する方法へと変わります。