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デンタル・マネジメント・コンサルティング
稲岡 勲/門田 亮
社会経済全体の景況感が改善されてくると、歯科医院においては人材不足を生じがちになります。多くは長時間の勤務を強いられることや、広範囲に亘る仕事も多いため、歯科医院で働くということが敬遠されるのかもしれません。
人のためになるということが、もっとも身近に感じやすい職業の一つであるにも関わらず、雇用環境が改善すれば、どうしても残業が少なく、負担の少ない仕事に向かってしまうことは避けられないことでもあるのでしょう。
そうした中で歯科医院に人材を呼び込むためには、大きな発想の転換を図ることが必要です。
人件費はもっとも大きな経費として捉えられますが、ここで発想を大きく転換し、収入を生む資産として考えることができるかどうか。医療機器や建物設備など形のある固定資産とは違い、適切に指導し、育成することで、医院へのさらなる貢献を望むことができる無形の資産という考え方です。
スタッフ間では業務を遂行する能力に差があり、生産性や貢献度に大きな違いが生じますが、日々の成果については昇給や賞与によって差をつければよいわけです。何よりも、常に安定して医院に存在するということが、いずれ医院の大きな強みとなると考えます。
来院した患者さんは離さないという強い意志に基づき、医療である歯科医院において行うべきことは、来院した患者さんに生涯に亘り関わっていくということでしょう。
関係を維持し続けるということは、歯科医院の規模の大小を問わず、また、サービスを提供する側とされる側として捉えれば、業種に関わらず最重要な課題であると考えられます。
サービスに満足をして継続的に訪れる、あるいは誰かに口コミで紹介をすることが増えれば、どんどん支持者が増えることになります。
そのためにしのぎを削って患者獲得に力を注ぐわけですが、スタッフの問題だけではなく、医院全体の問題として捉える必要があります。
スタッフに対しても患者さんに対しても分かりやすい診療方針を打ち出せているかどうか、具体的な言葉で明確に表現しているほど伝わりやすくなります。
また、導入した時点から陳腐化が始まる器械設備を適切に更新しているかどうか、患者さんに最良の医療を提供するための投資資金計画などが的確に練られているかがポイントです。
人をはじめとして、設備などの物、あるいは人や物を得るためのお金の問題など、患者さんが離れない取り組みを行うために、歯科医院全体として何をどう行うかという投資への考え方を明確にしておく必要があります。
何か新たな試みを始めたり、新たな分野を開拓したりしようとする場合に意識しておきたいことは、継続することの難しさです。
長期的な取り組みにより、すぐに結果が出ない場合は焦りが生ずることがあります。何も変わらないのではないかという不信感や、実は変化していくことが怖いという、自ら変化を否定してしまう心も出てくるものです。誰もが心に持つ消えない癖のようなものであり、なかなか厄介なものかもしれません。
どうせ何も変わらないのではないか、あの人だからできるのだといった「内なる声」に屈せず、一度始めたら絶対にあきらめない気持ちを強く持ち、医院全体で継続して続けていくことが大切です。
人の育成、患者さんへの丁寧な治療説明、設備の適切な更新など、行うべきことを一つひとつ確実に行っている結果が患者さんからの信頼につながっていくものです。
いろいろな形で患者さんにアピールし、患者さんの心をつかむべく対応を行っていますが、それら一つひとつを丁寧に見ていくと、当たり前に行うべきことを当たり前に継続して行っていることがわかります。