Office
Business
Management
デンタル・マネジメント・コンサルティング
稲岡 勲/門田 亮
コスト削減と言っても、やみくもに支出を抑えればよいわけではありません。常に使用するものであっても、しっかりと費用をかけた方がよいものがあれば、一方で、1 円でも低く抑えた方がよいものとがあります。
かかる費用がどちらに分類されるかを考える際には、その支出が収入に結びつくものであるかどうかで判断することが必要です。診療材料一つにしても、品質が高く、患者さんの大きな満足につながるものであれば、将来収入を得るための費用として認識するべきものであり、支出を惜しむものではありません。他の材料と比較して多少単価が高くても、必要なものであれば採用し、一回の使用量に無駄がないようにするなどの工夫により対処法を検討します。
少額の機器類にしても、保有していれば患者さんへのより細かな診療に役立つということであれば、積極的に導入したいものです。スタッフの業務効率の改善にもつながるようであれば、生産性が向上するということですから、医院経営にとってプラスに働くと判断できるものです。
一方、抑えるべきコストとしては、水道光熱費や通信費、事務用品費といった経費です。電気代などの公共料金はコントロールが難しいものですが、診療中に使用しないスタッフルームの電気やエアコンを消すことで意識付けが可能です。
コスト意識が浸透しますと、材料薬品や消耗品、あるいは事務用品といった経費が大きく下がります。さらに、意識の高まりによってコストがかからない経営体質が生まれてきます。
スタッフ全体に、無駄を省いた業務の取り組みが浸透することで、全体の経費が下がり、徐々に利益に反映され始めます。歯科医院全体としても資金的余裕が生まれてきます。
資金の余裕が生まれることで、本当に必要な時に、品質の確かなものを購入することができるようになります。材料も品質の良いものを購入できますし、設備機器も診断、治療に対してより確かなものを導入することができるようになります。
したがって、コスト意識を持って経費の削減に励むことは、必ずしも出ていくお金を少なくするということだけではないのです。
支出を減らした先に、医院にとって本当に必要なものを購入するための資金作りの意味もあるのです。
医療の世界は日進月歩ですから、材料薬品や小器具に始まり、CT やマイクロスコープなど診療用器材の発展は目覚ましいものがあります。
歯科医療の質を向上させるためにも、積極的に新しいものを導入していく必要がありますが、歯科医院の経営体質が強化されていると資金的な不安は少なく、常に迅速な対応ができるのです。
コストを抑えること一辺倒ではスタッフは疲弊してしまいます。コスト意識を持つことは必要なことではありますが、ただやみくもに減らすばかりがよいことではありません。
なぜ、コストを減らさないといけないのか、コストを抑えることによって、経営的に、つまりスタッフが働く上で、どのような影響があるかを示す必要があるのです。
コスト削減には、スタッフ一人の力ではどうにもなりませんから、全スタッフが一丸となって取り組む必要がありますが、その過程において、考え、悩み、スタッフ同士が協力するということが必要になります。協力して取り組み続けることで数字として単に減らすということではなく、スタッフ同士の関係強化、スタッフ自らが考えて行動する組織へと変わっていくのです。
院長の役割として大切なことは、経費削減に捉われてスタッフが疲れ切ってしまうことがないように働きかけなければなりません。取り組みの目的とゴールを明確に示しつつ、同時に成果を発表して取り組みが実感できる場を設ける必要があります。