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DENTAL MAGAZINE デンタルマガジン

歯科医院経営講座 -21世紀の歯科医院経営-

第47回 (160号)
常に方向性を見失わずに安定した経営を維持するために
デンタル・マネジメント・コンサルティング 稲岡 勲/門田 亮

Office

Business
Management

歯科医院経営講座160

デンタル・マネジメント・コンサルティング
稲岡 勲/門田 亮

Question
患者さんとの積極的な関係作りを意識しているためか、来院する患者さんも増えつつあり、歯科医院の規模も徐々に大きくなってきました。そのことはとても好ましいことなのですが、来院患者さんが増えることで予約が取り難くなり、患者さんのなかには少し不満を感じておられる方もいるようです。また、スタッフを数名増員しているのですが、給与や法定福利費等の人件費が大きくなってきています。当初から、歯科医院の規模はあまり大きくするつもりはないのですが、今後、どのように歯科医院の存続を考えていけばよいでしょうか。
Answer
国が行う医療施設調査等の統計資料を見ますと、個人の歯科医院が減少し、医療法人の歯科医院が大きく増えてきていることがわかります。スタッフや設備機器を充実させ、患者さんを積極的に受け入れる体制づくりが進んでいることの表れでしょう。大型化された歯科医院では、徹底した経営の合理化が不可欠となり、勤務歯科医師をはじめとするスタッフの確保が大きな課題です。一方で従来から存続する歯科医院では、患者さんとの強い人間関係を築き、より一層患者さんからの信頼を得ることが必要となっています。安定した歯科医院経営に向けて、さまざまな特長を前面に押し出して存在感を示す中、今後も患者さんの支持を集めながら、歯科医院を長く存続させることが不可欠です。院長の強いリーダーシップのもと、いかに明確な方針を打ち出せるかが大きなポイントです。
どのような患者さんを診るか

歯科医院をどう維持するかを考える際、患者さんの受け入れ方が強く関係してきます。価値観が多様化した現在、患者さんが歯科医院に求めるものも千差万別です。
予約をしている患者さんの気持を優先し、予約システムを守ろうとすれば、新患で訪れる患者さんの予約は、10 日先、2 週間先という事態が生じます。反対に新患の「すぐに診てほしい」という気持ちを優先すれば、前々から予約をしている患者さんの時間を削らなければならなくなります。
歯科医院の規模がまだそれほど大きくなく、院長の目がすべてに行き渡っているときは患者さんもまだ納得できるのですが、規模が大きくなり院長の手から離れて、勤務医、スタッフが直接対応するようになると、「すぐに診てもらえない」あるいは「待ち時間が多い」と、患者さんからの不満が出やすくなります。
したがって、歯科医院として日々来院する患者さんに対して、どのように接していくかはしっかり定めておく必要があります。
予約システムを崩すことなく患者さんの要望を受け入れようとするのか、多少予約が前後して崩れたとしても、今すぐにという患者さんの要望に応えようとするかは、歯科医院の基本方針ともいえるものです。自らの診療方針に沿って、どんなときもぶれずに対応していくことが、将来にわたる信頼へとつながるものです。

どのようなスタッフが必要か

歯科医院として、どのような人材を採用するかについては、面接時点での採用の考え方が大きく影響します。単に募集する職種と応募者の希望が一致すればよいというものではありません。
歯科医院の風土と、採用しようとする人材の気質は、後に大きく関係してくるものです。
人懐こく子供好きの気質を持った人材が、ビジネスマンや OL が主に集まる都心部の歯科医院の風土とは合致しないかもしれません。
やる気は十分にあったとしても、自らの性格や気質と、歯科医院の風土や雰囲気がどうしても合わないことがあります。
すべてを兼ね備えた人材を確保することは難しいわけですから、院長としてどのような人材なら一緒に働きたいかを考えておき、研修や教育によって医院の考え方をしっかり定着させることを考えます。
急を要するから、あるいは切羽詰っているからという理由で、だれでもいいからとにかく人材を確保することは避けなければなりません。
思うような成果が得られず人件費ばかりが高騰し、経営の安定を図るために給与の削減や、人材の整理を行う事態になれば最悪の結末となります。
一人の人材投資の失敗が、全体のモチベーションにも影響し、それまで良好であった人間関係がぎくしゃくし始めることにもなりかねません。

どのような設備を準備するか

診療に必要な設備機器は、診療方針に沿って大きく変わります。
最近の時流に合わせてマイクロスコープを導入したとしても、一人の患者さんに対する診療時間や診療体制が伴っていなければ、マイクロスコープを使用してじっくりと治療を施す時間が取れないかもしれません。
また、患者さんへの負担が少ないからと考えてレーザーを導入しても、診療スペースの身近な場所にレーザーを置くことができなければ、頻繁に使うことはできないかもしれません。
設備機器は、十分に使用しなければ導入の効果が生まれません。
多くの歯科医院が導入しているから当院も導入する、あるいは、導入しておかなければ患者さんが離れていってしまうのではないか、という焦りから導入を決めることは避けたいものです。
デモ器を使用して、導入後のシミュレーションを十分に行い、医院にとって必要か否かを十分に検討することが必要です。

Advice
限られた経営資源の中では、多面的に投資をすることは難しいものです。人への投資、設備への投資は、どういった先にどういった資金を投入するかによって、得られる効果が大きく変化します。歯科医院の長期的な存続を考える場合、院長の明確な考え方に沿った資金活用を図りたいものです。適切な投資によってスタッフのモチベーションが正しく保たれ、歯科医院全体の雰囲気がよくなります。そのことが、安心して患者さんが通院することにつながり、経営安定へとつながっていくのです。常に方向性を見失わずに安定した経営を維持するためには、歯科医院の経営方針、経営理念に基づいて意思決定を進めることが大切です。柱となる経営方針に基づいて患者さんとのコミュニケーションを構築し、人材の確保、新たな設備機器の導入まで、一貫した取り組みを進めてください。