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デンタル・マネジメント・コンサルティング
稲岡 勲/門田 亮
歯科医院をどう維持するかを考える際、患者さんの受け入れ方が強く関係してきます。価値観が多様化した現在、患者さんが歯科医院に求めるものも千差万別です。
予約をしている患者さんの気持を優先し、予約システムを守ろうとすれば、新患で訪れる患者さんの予約は、10 日先、2 週間先という事態が生じます。反対に新患の「すぐに診てほしい」という気持ちを優先すれば、前々から予約をしている患者さんの時間を削らなければならなくなります。
歯科医院の規模がまだそれほど大きくなく、院長の目がすべてに行き渡っているときは患者さんもまだ納得できるのですが、規模が大きくなり院長の手から離れて、勤務医、スタッフが直接対応するようになると、「すぐに診てもらえない」あるいは「待ち時間が多い」と、患者さんからの不満が出やすくなります。
したがって、歯科医院として日々来院する患者さんに対して、どのように接していくかはしっかり定めておく必要があります。
予約システムを崩すことなく患者さんの要望を受け入れようとするのか、多少予約が前後して崩れたとしても、今すぐにという患者さんの要望に応えようとするかは、歯科医院の基本方針ともいえるものです。自らの診療方針に沿って、どんなときもぶれずに対応していくことが、将来にわたる信頼へとつながるものです。
歯科医院として、どのような人材を採用するかについては、面接時点での採用の考え方が大きく影響します。単に募集する職種と応募者の希望が一致すればよいというものではありません。
歯科医院の風土と、採用しようとする人材の気質は、後に大きく関係してくるものです。
人懐こく子供好きの気質を持った人材が、ビジネスマンや OL が主に集まる都心部の歯科医院の風土とは合致しないかもしれません。
やる気は十分にあったとしても、自らの性格や気質と、歯科医院の風土や雰囲気がどうしても合わないことがあります。
すべてを兼ね備えた人材を確保することは難しいわけですから、院長としてどのような人材なら一緒に働きたいかを考えておき、研修や教育によって医院の考え方をしっかり定着させることを考えます。
急を要するから、あるいは切羽詰っているからという理由で、だれでもいいからとにかく人材を確保することは避けなければなりません。
思うような成果が得られず人件費ばかりが高騰し、経営の安定を図るために給与の削減や、人材の整理を行う事態になれば最悪の結末となります。
一人の人材投資の失敗が、全体のモチベーションにも影響し、それまで良好であった人間関係がぎくしゃくし始めることにもなりかねません。
診療に必要な設備機器は、診療方針に沿って大きく変わります。
最近の時流に合わせてマイクロスコープを導入したとしても、一人の患者さんに対する診療時間や診療体制が伴っていなければ、マイクロスコープを使用してじっくりと治療を施す時間が取れないかもしれません。
また、患者さんへの負担が少ないからと考えてレーザーを導入しても、診療スペースの身近な場所にレーザーを置くことができなければ、頻繁に使うことはできないかもしれません。
設備機器は、十分に使用しなければ導入の効果が生まれません。
多くの歯科医院が導入しているから当院も導入する、あるいは、導入しておかなければ患者さんが離れていってしまうのではないか、という焦りから導入を決めることは避けたいものです。
デモ器を使用して、導入後のシミュレーションを十分に行い、医院にとって必要か否かを十分に検討することが必要です。