Office
Business
Management
デンタル・マネジメント・コンサルティング
門田 亮
支出の中でも多くを占める、人件費、設備投資にどれぐらいの費用を振り分けているかを確認します。人件費は給与賃金、賞与、法定福利費および福利厚生費を含めて考えますが、概ね収入の25%以内が平均的な水準です。医院の経費でもっとも高い比率を占める経費ですから、後に示す生産性とともに把握しておくことが大切です。
設備投資として考える経費科目には、減価償却費、利子割引料(支払利息)、地代家賃、リース料、修繕費、租税公課を含めます。減価償却費およびリース料は、導入したチェアやCT、マイクロスコープなど、大型設備機器が耐用年数に応じて経費化されたものですし、利子割引料は設備投資のために借入をした利息になりますから、積極的な経費として捉えることができます。これら設備投資は、概ね収入の12〜14%前後が平均的ですが、開業当初や設備を更新した際には比較的大きく表れます。その分、周辺の歯科医院と比較して、設備が新しく充実していると考えることができます。
また、外注に出す補綴物等は外注技工料として表れますが、概ね収入に対して8〜10%弱が平均的な水準です。この比率が、平均から大きく外れて高い比率となっている場合には、質の高い補綴物だとも考えられますから、医院の経営資源として捉えることができるものです。
医院の強みを考える際には、スタッフの生産性にも目を向けたいところです。スタッフ一人が、医院収入にどれぐらい寄与しているかを考えるものですが、歯科医師を除くスタッフ数(パートは0.5人と考える)で全収入金額を割った場合、月額にして約125万円前後が平均的な水準です(デンタル・マネジメント・コンサルティング調べ)。
この金額を大きく上回る場合には、少ない人数でも医院収入に大きく寄与していると捉えることができます。生産性が高いことは、将来、医院収入の増加や経費の削減にもつながることから、医院の大きな強みとして捉えることができます。
一方、医院の設備や環境に目を向けた場合、立地条件のよい場所では収入に対する地代家賃の比率は相対的に高くなります。つまり立地のよさが医院の強みであると捉えることができますが、そのことが本当に強みとして存分に活用できているかを確かめておく必要があります。
大きな商業ビルの好立地を生かすために、相応の内装や雰囲気を醸し出すことができているかどうか、あるいはテナントビルの一階で路面に面しているのであれば、患者さんが入りやすい雰囲気になっているかどうかといったことです。立地条件や医院設備に関することは、それ単独で強みとなるものもあれば、適切な対応が伴って初めて強みとなるものもあります。
医院の経営資源を把握し、強みとできるものを明確にしていくと、実にさまざまな特長を有していることを確認することができます。充実した経営資源や強みを他医院との明確な違いとするためには、患者さんに対して積極的にアピールすることが大切です。
たとえば、研究図書費が高い場合には、多くのセミナーや講習会に参加し、あらゆる場面に対応できる治療技術を身につけていると推測することができます。しかし患者さんは、ドクターがセミナーに参加していることを直接目にすることがありません。
したがって、どういった技術を持っているか、どの分野に注力して取り組んでいるかといったことを、積極的に患者さんに情報提供することが必要です。
ホームページ上で力を入れている分野を紹介したり、あるいは院内掲示板に講習の修了証等を掲示したりすることは、一定の技術を習得したことを、確かな情報として患者さんに提供することにつながるのです。
患者さんにアピールするということは、単に患者獲得、収入増加を狙うものではなく、確かな治療技術や先進の医療機器等があることを伝え、患者さんに安心して通院してもらうためでもあります。
患者さんへの情報提供が多いほど、医院の特長として強く認識されることにつながります。