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DENTAL MAGAZINE デンタルマガジン

歯科医院経営講座 -21世紀の歯科医院経営-

第53回 (166号)
人材確保・維持のポイント
デンタル・マネジメント・コンサルティング 門田 亮

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Office 歯科医院経営講座 166BusinessManagementデンタル・マネジメント・コンサルティング門田亮90 Dental MagazineQuestion 医院経営について将来のことを考えた場合に、近隣に歯科医院ができることによる患者さんの減少も心配ですが、診療を維持するための十分な人材が確保できないのではないかという不安も大きくなってきています。求人募集の際に、応募が何名かある中で採用を出した人材が、勤務後数日でやめてしまうことも多々あります。それならいっそ応募者すべてを採用しようとも考えますが、経費が大きくなるのではないかと踏み切れないでいます。そうしたことを繰り返していますから、実際、歯科助手にしても受付にしても、的確に採用できることが少なくなってきているように思います。打開するポイントはあるのでしょうか。Answer 全体として、仕事に就いていない人口の割合を示す完全失業率が極めて低い水準で推移しており、求職者に対する企業からの求人数を示す有効求人倍率も1.5倍を上回っています。したがって現在は、職種や年齢などで条件が合わない人材も少ない、完全雇用状態と言われています。企業の好業績を受けて、正社員としての採用活動も活発に行われていることや、生産年齢人口といわれる15〜64 歳未満の人口が、この10 年間だけでも約10%、約700 万人減少していることも、人材確保が難しいことに影響しているのかもしれません。それでも、まだ応募者があるということですから、人材を確保し育てることができる可能性があります。とにかく積極的に前向きになれるように働きかけることが、一日でも早く職場に溶け込み、力を発揮できるようになるポイントです。歯科医院での就業経験の有無を問わず、新たな職場で一歩を踏み出すことは、不安が大きくのしかかり相当のプレッシャーがあるものです。現在働くスタッフも、全員が同じ道を通ってきているはずなのですが、周りに慣れてしまうと入職当時のことをすっかり忘れてしまうものです。院長の指示を、すぐに実行に移すことができる力や、日々、多くのことを学び、職務遂行に生かすことができる力が大切なのは言うまでもありませんが、職場に慣れて自信が持てるようになるまではなかなか難しいものです。したがって、失敗したこと、ミスをしたことを正すことよりも、うまくできたことに注目して褒める言葉をかけることが大切です。スタッフは、自分自身を肯定できる自己肯定感や、あるいは、新しい仕事に挑戦して乗り越えたときに、自分にもこれだけの仕事ができる力があるのだ、と自信が持てるような働きかけを必要としています。自分に自信がつくことによって、仕事に対する気持ちも前向きになり、積極性が生まれるようになります。常に注意をされ、叱られてばかりでは、なかなか仕事に意欲や意味を持つことができるものではありません。自信を持って自ら考えながら業務にあたることができるようになるには、スタッフの気持ちを盛り立てる働きかけが重要なポイントです。うまくできたことに注目して褒めるBusiness ManagementDentalMagazine 91Advice スタッフの採用が思うように進まないだけでなく、一生懸命選考して採用したはずの人材が、入職後ほどなくして退職してしまうことは、院長にとっては相当の負担となります。しかし現在、これだけたくさんの求人があり、条件を比較して職場を選ぶことができる状況ではやむを得ないことでもあるのでしょう。その中でも、決して給与水準だけではない、医院の良さを感じてもらうためには、職場に早く溶け込んでもらう以外に方法はありません。仕事に自信を持って取り組むことができる働きかけを行うことや、近くにゴールを置いて、とにかくここまでは頑張ってみるという環境を整えることがポイントです。短期間雇用で短いゴールを決める学んだことをすぐに実践できる任せ方業務上で身につけた知識や学んだことを、すぐに実行に移すということは、なかなか難しいものです。スタッフ自身が、しっかりした考えを持ち行動する力が必要ですが、その前に、頭では理解していても、いざ言葉にして発したり、行動で示そうとしたりしても、簡単にいかないことが多いからです。たとえば、勉強会やセミナーの後には、学んだ内容をスタッフ全員で共有できるように、レポートや報告書にまとめることを行いますが、そのままでは日々の業務において活かすことが難しいことがあります。学んだ技術を、業務のどの場面で活用できるかがわかるように、院内でシミュレーションを行い、学んだことと実際が頭の中でつながるような取り組みを行うことが大切です。そして、いきなり現場に一人で立つのではなく、シミュレーション等で練習した作業が活かせる場面を、ひとつずつピックアップして任せることが自信につながる進め方となります。院内で、スタッフ同士が患者さん役になってバキュームテクニックを練習したのであれば、診療時にはバキューム業務を中心に任せていくなど、学んだことをすぐに実践できるような業務の任せ方をします。頭の中で知識と実際の場面がつながれば、次への自信とやりがいにもつながるものです。スタッフを採用したのち数日で退職を希望してきたとしても、医院側に引き留める術はありません。期待していた楽しい職場や、あるいは面白い職場と感じられなければ溶け込んでいけないという、自分の感情が先に立つのですから難しいことです。そこには、院長を始めとする医院スタッフに対する関心のみならず、職場の雰囲気や文化など、周囲への関心が低い若者が多いといわれる、現代の特徴が出ているのではないかと思います。自己中心的な思いが先に立ち、強い意志で続けることができないのが現状ではないでしょうか。そうした中でも、応募はまだ比較的あるとのことですから、一旦すべての応募者を、1ヵ月程度臨時的に採用することも検討します。人件費の高騰を心配されていますが、1ヵ月間の雇用ですから対応できる水準ではないかと思います。実際、応募者の中で誰が頑張って続けるのかわからない、また、応募者自身も続けていけるのかわからない中で、有期雇用として短期間のゴールがある形で迎え入れることは、医院、当人双方にとってもメリットのあることです。当然、応募者にも雇用期間は1ヵ月であることを説明しますし、短期雇用期間を経過して、なお当院で勤務したいと希望する場合には、新たに雇用契約を結ぶことを説明します。