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第55回 (168号)

事業継承のポイント

デンタル・マネジメント・コンサルティング 門田 亮

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歯科医院経営講座168

デンタル・マネジメント・コンサルティング
門田 亮

Question
私の年齢も 70 歳を間近に控え、そろそろ事業承継を考える時期となりました。幸い、息子が歯科医院を継いでくれる意思があるようですが、現在の診療所はチェアが 3 台のため、歯科医院の規模としてはそれほど大きくありません。今後、事業承継を検討するにあたり、立地や診療規模をそのまま引き継ぐか、あるいは場所を変えて、新規開業歯科医院と同じようにすべて一から行うべきかを検討しています。事業承継後も、数年間は一緒に診療できることを望んでいますが、ポイントとなる点がありましたらご教示ください。
Answer
後継者をどうするかということに頭を悩ませる歯科医院が多い中、事業承継のめどが立っていることは好ましいことと思います。しかし、現診療所の規模がそれほど大きくないようですから、事業承継後も一緒に診療を行うために、両先生がそれぞれ快適に診療できる環境を整えることが必要です。また、患者さんを引き継ぐ点では、今の立地で承継することの方がメリットは大きいと考えますが、その場合はチェアの増設など、規模を拡大できるスペースがあるかどうかが問題となります。一方、新たな場所に移転をした場合は、新規開業と同じくとにかく患者さんを確保することに全力を注ぐ必要があります。
診療スペースの拡張は可能かどうか

現在通院している患者さんの利便性や医院の認知度、あるいは承継時に必要な設備コスト等からすると、現在の場所で診療を継続することは、事業承継を安定的に行うことにつながります。
現に一定の来院者がいらっしゃるわけですから、患者さんからすれば、スムーズに引継ぎが行われ、これまでと変わらず安定して診療を行っていただくことに越したことはありません。さらに、引き続き活用できる設備があれば、新たな設備を導入することの方に資金を活用することができます。
また診療の内容としては、今後はさらに歯冠修復や欠損補綴から、歯科衛生士による予防処置やメインテナンスの診療形態が加速するであろうことが考えられます。必然的に点数は下がる傾向になりますが、一方で定期的に来院する機会が増えるため、全体の患者数が増加する傾向がみられます。
したがって、同じ場所で事業を承継する際には、効率のよいアポイントの取り方を追究するなど、患者さんの増加に適切に対応できるようにしておきたいものです。
そのためには、チェアユニットを 1台あるいは 2 台増設し、増加が見込まれる患者さんに対応できる設備を整えておく必要があります。
診療所を拡張して、新たなチェアを導入できるスペースを確保できるのかどうか、待合室を広くして椅子を増やせるかどうかを検討する必要があります。

別の場所に新たな診療所を建てる

現在の歯科医院に、拡張する十分な余地がない場合は、別の新たな場所に診療所を建てることを検討します。その場合は、十分な広さを確保してチェアユニットの台数も増やし、また待合室や受付周りの動線もゆとりのあるものにします。より多くの患者さんが、快適に過ごすことができるよう、十分な規模で開業を行うことを検討します。
一からの立ち上げになりますから、設備にかかるコストが大きくなることがデメリットとして挙げられますが、新規開業歯科医院と同じく、綿密な事業計画を作成し、金融機関からの信用力を得て十分な資金調達を図ってください。また、できる限り現在の診療所から近い場所で立地を選定できると理想的です。新たな患者さんの確保と同時に、現在通院してきている患者さんにとっても、新しい診療所が近くにあれば安心です。それほど離れた場所でなければ、環境の変化に戸惑うことも少ないと思われますし、引き続き通院することにそれほど大きな支障はないと考えられます。
なお将来、旧診療所から新診療所へ患者さんを引き継ぐ場合には、患者さんに大きな負担をかけないために、早い段階から移転をすることの案内を徹底し、患者さんの十分な理解を得るようにしながら、スムーズな転院を図るようにしてください。

事業承継のメリットを最大限に活用する

親から子へ事業を承継することのメリットは、現在通院している患者さんを引き継ぐことができること、および現有設備やスタッフ、あるいは慣れ親しんだ立地による土地勘を含めて、医院の経営資源を最大限に活用できる点にあります。
事業承継が完了するまでには、親子の診療方針の違いが浮き彫りになり、診療に対する考え方が対立してしまうなどのリスクもありますが、お互いの診療スペースをしっかりと確保すること、患者さんの担当を明確に分けること、あるいは干渉しすぎないように心がけることなどの取り組みによって対応が可能なはずです。親子どちらか一方が院長になるはずですから、最終意思決定権者である院長の指示に従うことをお互いのルールとして、親子間の人間関係を良好に保つことを心がけて事業承継を円滑に進めていくことを第一に考えたいところです。
また、同時に勤務歯科医師を採用し、いつでも訪問診療に出かけられる体制を整えておくと、古くから通院していた患者さんが要介護状態になった時でも、スムーズに訪問診療に対応することが可能です。新診療所への入り口にはスロープを設置すると患者さんも安心ですし、高齢者医療へ対応できることは、これまで通院してきた患者さんを継続して診ることができるという大きなメリットにつながります。

Advice
事業承継によって、現在通院している患者さんから新規に来院される患者さんまで、幅広く対応するためには、ある程度の医院規模の拡大を図ることがポイントです。そのために積極的な設備投資を行うことや、新たに勤務歯科医師や歯科衛生士を採用し、十分な診療体制を整えることも検討します。したがって、より発展的な事業承継を考える際、現診療所で承継するのであれば、まずはチェアの増設のほか、待合室やスタッフルームを拡張する余地があるかどうかを検討してください。拡張することがどうしても困難であれば、現診療所に近い場所で、十分な規模を確保して新たに移転開業することも方法の一つです。いずれにしても、親子間で事業承継の共通の目的を持ち、お互いが事業承継を成功させるために協力して進めることが大切です。

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