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DENTAL MAGAZINE デンタルマガジン

歯科医院経営講座 -21世紀の歯科医院経営-

第56回 (169号)
スタッフの働きを導くポイント
デンタル・マネジメント・コンサルティング 門田 亮

Office

Business
Management

歯科医院経営講座169

デンタル・マネジメント・コンサルティング
門田 亮

Question
働き方改革の影響によって、労働者の働く条件や環境がどんどん整備されているようですが、同時に、スタッフが勤務先の労働条件を見る目も大変厳しくなってきているように思います。経営者である院長としては、労働基準法をしっかり守りつつ、安全に医院経営をするための舵取りを的確に行っていかなければならないと思っているところです。今後、安定して医院を維持していくためには、スタッフの積極的な働きが大切になると思います。経営環境が大きく変わりつつある中で、スタッフの働きをどう導けばよいか、ポイントをご教示ください。
Answer
現在、求職者の多くが職場に求める条件をいくつか挙げてみると、① 社会保険に加入していること、② 残業がないこと、③ 休みが多いこと、④ 早い時間に帰れること、⑤ 給料がよいこと、などが主な内容として考えられます。歯科医院に関しても、社会保険に加入していることや有給休暇をちゃんと取ることができるかどうかなどが大きな選択基準となり、給与条件の確認と合わせて、面接時に詳しく尋ねてくることも多くなってきたように思います。それだけ、求職者が選べる仕事が多くなってきており、求職者が求めるものも生活の安定や将来への備えを重視したものになっていると言えるでしょう。
法に準拠した取り組みをどう行うか

働き方改革の一環として、平成31年4月から労働基準法の改正が行われることになり、有給休暇が10日以上付与されるスタッフに対しては、5日以上の有給休暇を取得するようにしなければなりません。
年末年始や夏季休暇を、有給休暇の取得と合わせて、計画的に付与している歯科医院であれば大きく変わることはありませんが、比較的小規模で有給休暇の取得があまり進んでいない歯科医院では、今後の対応を十分に検討する必要があります。
また、中小企業の場合は平成32年4月からの対応となりますが、時間外労働時間に関しても上限が厳しく定められ、月45時間、年間360時間までに抑えなければならなくなります。
働き方改革によるこのような法律の改正は、労働時間の短縮を図り、様々な生活環境にある人が働きやすい環境を整備することで、生産年齢人口の増加を狙いとしているものです。
一方で、就業するスタッフの労働環境を整えることは、働く意欲の向上に直結することであり、福利厚生などが充実した職場では、引き続き長く働こうとするモチベーションにも大きく寄与することになります。
最近はスタッフを確保することが難しい状況ですが、勤務シフトの整備やスタッフ同士の協力の仕方などに知恵を絞り、働きやすい魅力的な職場を目指すことは、これからの歯科医院経営にとって必ずプラスとなる取り組みだと言えるでしょう。

経費管理を重点的に行う

少子化による人手不足から、人材を確保するために給与水準が上がっている状況が進んでいます。これまで、歯科医師や歯科衛生士の不足は恒常的でしたが、歯科助手や受付スタッフでさえも確保が難しくなっています。
さらに、働き方改革により残業時間が減少し、有給休暇が増えてくると、必然的にスタッフの増員が必要となるため、人件費が増加することが考えられます。
スタッフの人数によっては、社会保険に加入するべき要件にも該当するようになりますから、健康保険や厚生年金等への加入による医院負担の発生、つまり法定福利費の増加を考えておく必要があります。
デンタル・マネジメント・コンサルティング(以下DMC)が毎年行う収支アンケート調査においては、収入に対する給与賃金の比率は21~22%の水準で推移しています。また、福利厚生費と社会保険料などの法定福利費を合わせた比率は1%台後半で推移していますが、今後は、いずれも少しずつ増加すると予想されます。
歯科医院にとって人件費への投資は不可欠ですから、しっかりとその資金を確保しておきたいところです。
したがって、スタッフの意識を高め、経費管理を重点的に行いながら、他の経費をいかにコントロールできるか、今の段階からしっかりと準備を始めておく必要があります。

経営効率を重視する

やむを得ず人件費が増加したとしても、スタッフ一人当たりの生産性を高めることができれば、安定した歯科医院経営を維持することができます。すなわち、徹底して業務の見直しを図りながら、経営効率を最大限に重視した少数精鋭型の歯科医院づくりを目指すことです。
同じくDMCが行った調査結果に基づくと、チェアに関しては規模が大きくなるほどチェアの稼働効率も上がることが示されますが、スタッフの経営効率に関しては、歯科医院の規模の大小に左右されることがありません。
つまり、どのような規模や環境下でも、スタッフが効率を重視した取組みを行えば、一人当たりの生産性を高めることができ、経営の安定につながると言えるのです。
効率化を図ることによって確保できた利益は、賞与をさらに上乗せしてスタッフに還元すれば、スタッフのモチベーションは飛躍的に上がります。
自らが目的をもって取り組んだ結果が、目に見える形で反映されることで、さらに頑張ろうという動機付けへも大きな影響を与えることができます。
そのためには、院長は明確な診療方針を打ち出し、日常の業務に対してスタッフが迷いなく取り組むことができる環境づくりを進めることが大切です。スタッフ一人ひとりが十分に役割を把握し、相互に協力し合う体制を整えることが求められるポイントです。

Advice
少子高齢化への対応や、育児や介護を必要とする生活環境においても働き続けることができるよう、さまざまな取り組みが進められています。歯科医院において産前産後休暇や育児休業を取ることは難しいという意識がありますが、シフトの組み方や給与の仕組みを工夫すると環境整備が進みます。一度にすべての対応ができなかったとしても、少しずつでも取り組みを進めることで魅力的な職場となっていきます。歯科医院の積極的に対応しようとする姿勢は、働くスタッフにとって安心感につながり、より職場に貢献しようとする意識へとつながります。働き方改革による様々な取り組みを、歯科医院でも労働環境を再整備するためのよい機会と捉え、スタッフ育成へつなげるように全力を注いでください。

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