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デンタル・マネジメント・コンサルティング
門田 亮
働き方改革の一環として、平成31年4月から労働基準法の改正が行われることになり、有給休暇が10日以上付与されるスタッフに対しては、5日以上の有給休暇を取得するようにしなければなりません。
年末年始や夏季休暇を、有給休暇の取得と合わせて、計画的に付与している歯科医院であれば大きく変わることはありませんが、比較的小規模で有給休暇の取得があまり進んでいない歯科医院では、今後の対応を十分に検討する必要があります。
また、中小企業の場合は平成32年4月からの対応となりますが、時間外労働時間に関しても上限が厳しく定められ、月45時間、年間360時間までに抑えなければならなくなります。
働き方改革によるこのような法律の改正は、労働時間の短縮を図り、様々な生活環境にある人が働きやすい環境を整備することで、生産年齢人口の増加を狙いとしているものです。
一方で、就業するスタッフの労働環境を整えることは、働く意欲の向上に直結することであり、福利厚生などが充実した職場では、引き続き長く働こうとするモチベーションにも大きく寄与することになります。
最近はスタッフを確保することが難しい状況ですが、勤務シフトの整備やスタッフ同士の協力の仕方などに知恵を絞り、働きやすい魅力的な職場を目指すことは、これからの歯科医院経営にとって必ずプラスとなる取り組みだと言えるでしょう。
少子化による人手不足から、人材を確保するために給与水準が上がっている状況が進んでいます。これまで、歯科医師や歯科衛生士の不足は恒常的でしたが、歯科助手や受付スタッフでさえも確保が難しくなっています。
さらに、働き方改革により残業時間が減少し、有給休暇が増えてくると、必然的にスタッフの増員が必要となるため、人件費が増加することが考えられます。
スタッフの人数によっては、社会保険に加入するべき要件にも該当するようになりますから、健康保険や厚生年金等への加入による医院負担の発生、つまり法定福利費の増加を考えておく必要があります。
デンタル・マネジメント・コンサルティング(以下DMC)が毎年行う収支アンケート調査においては、収入に対する給与賃金の比率は21~22%の水準で推移しています。また、福利厚生費と社会保険料などの法定福利費を合わせた比率は1%台後半で推移していますが、今後は、いずれも少しずつ増加すると予想されます。
歯科医院にとって人件費への投資は不可欠ですから、しっかりとその資金を確保しておきたいところです。
したがって、スタッフの意識を高め、経費管理を重点的に行いながら、他の経費をいかにコントロールできるか、今の段階からしっかりと準備を始めておく必要があります。
やむを得ず人件費が増加したとしても、スタッフ一人当たりの生産性を高めることができれば、安定した歯科医院経営を維持することができます。すなわち、徹底して業務の見直しを図りながら、経営効率を最大限に重視した少数精鋭型の歯科医院づくりを目指すことです。
同じくDMCが行った調査結果に基づくと、チェアに関しては規模が大きくなるほどチェアの稼働効率も上がることが示されますが、スタッフの経営効率に関しては、歯科医院の規模の大小に左右されることがありません。
つまり、どのような規模や環境下でも、スタッフが効率を重視した取組みを行えば、一人当たりの生産性を高めることができ、経営の安定につながると言えるのです。
効率化を図ることによって確保できた利益は、賞与をさらに上乗せしてスタッフに還元すれば、スタッフのモチベーションは飛躍的に上がります。
自らが目的をもって取り組んだ結果が、目に見える形で反映されることで、さらに頑張ろうという動機付けへも大きな影響を与えることができます。
そのためには、院長は明確な診療方針を打ち出し、日常の業務に対してスタッフが迷いなく取り組むことができる環境づくりを進めることが大切です。スタッフ一人ひとりが十分に役割を把握し、相互に協力し合う体制を整えることが求められるポイントです。