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第59回 (172号)

歯科医院を維持できる体制づくりに向けて

デンタル・マネジメント・コンサルティング 門田 亮

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歯科医院経営講座172

デンタル・マネジメント・コンサルティング
門田 亮

Question
医院の体制を大きく変えることに躊躇しています。スタッフの募集を行っても、十分な採用ができなくなってきておりますし、有給休暇の取得も進めなければならない状況ですので、今の状況のままでは対応しきれなくなることは理解できるのですが、体制を変えたときにスタッフがこれまで通りついてきてくれるのか、今と変わらずやる気をもって頑張ってくれるのかが不安なところです。少人数でもよいので、しっかりと歯科医院を維持できる体制づくりに向けて、スタッフや業務内容に関してどういった点を 心がければよいでしょうか。
Answer
2019年4月から始まった、働き方改革による労働基準法の改正によって、企業側も柔軟な対応を迫られるようになってきました。つまり、有給休暇の取得義務による労働時間の短縮に加え、残業等の超過勤務についても制限されることから、勤務体制の抜本的見直しを行う必要が出てきました。また、これまでは退職者が出たとしても、すぐに採用活動を行うことで新たな人材を確保できていましたが、今はなかなか思うようにいきません。スタッフが少ない状態で、医院経営を安定的に維持するために院長の手腕を要するところとなっています。産休や育休にも対応し、いずれ復帰することを期待して長く勤務できるスタッフを囲い込むことも方法でしょう。労働基準法に規定される内容を遵守し、スタッフにとって働きやすく魅力的な職場となるよう、日々労働環境の改善を行うことを意識してください。
積極的な対応を

患者さんの来院数が減少傾向にある、スタッフが最近集まらなくなってきた、といった現象が出始めてから動き始めると、どうしても対応が余裕のないものになってしまいます。そうしますと、気持ちの焦りを生じることになり、本来穏やかな気持ちで医院の状況を把握できていたことが、時に感情的になり、医院の雰囲気も重たいものが流れるようになります。
したがって何事も積極的に対応し、常に先手を打つことを心がけたいものです。積極的に取り組むためには、現状分析を行い、将来を予測しながらいくつかの対策を検討することが必要です。たとえば、スタッフの応募が少なく十分に人材の確保が進まなくなってきた場合には、電子アポイントシステムや自動洗浄器など、効率化を図ることができる設備機器を導入し、スタッフの業務効率を引き上げることを検討します。その一方で、現状のスタッフで対応できるところまで、医院の規模を縮小することを考えてもよいかもしれません。規模を縮小することは決して消極的なことではなく、業務を絞ることは患者さんに対して手厚くきめ細かい対応へとつながるものです。
いずれにしても、将来を考えた早い段階からあらゆる状況を想定し、さまざまな検討を進めながら、内容に合わせた収支計画等を作成し、後手にならないよう積極的に行動していくことが大切です。

活発なコミュニケーションを

スタッフと対峙する際、必要なこと以外は寡黙になりがちですが、可能な限りスタッフとは活発なコミュニケーションを図ることが望ましいと考えます。楽しい話ばかりでなくてもよいですし、厳しいこと、口うるさいことでも、スタッフに対しては遠慮せずに話をしていくことが大切です。
特に変化を伴う際には、院長がスタッフと密にコミュニケーションを取ることによって、院長の考え方が伝わりやすくなりますし、スタッフにはこうなってほしいという院長の希望や、して欲しいこと、して欲しくないことなども伝わるようになります。
すべてのスタッフが院長の意を汲むことができるわけではありませんが、その中から少しずつ院長の右腕となる頼もしいスタッフが育つようになります。
スタッフの顔色を窺いながら関わることよりも、院長の想いをわがままなぐらいに出していくことの方が、スタッフとしてついていく人は院長の人柄を理解しやすくなるものです。
時には、院長の考え方についていけずに去っていく人もでてきますが、その中で続けていく人は、気持も強くしっかりと自分の考えを持つ人たちですから、自分のやるべきことを遂行し、医院に対して大きく貢献できる人材であるといえます。

全体的な目配りを

少数でも、各々が持てる力を最大限発揮してすぐれた集団となるためには、スタッフそれぞれの持ち味をどう見抜き活かしていくかという、院長のきめ細かな観察が必要です。
スタッフには、几帳面な人、患者さんとの関わりが上手な人、リーダーシップを発揮できる人、スタッフ間の調整が上手な人など、各々さまざまな特長をもっているはずです。
人とのコミュニケーションは得意だけれども、管理的なことは苦手というスタッフに対して、物品の管理やスタッフ同士のきめ細かな調整は難しいかもしれません。
一方、人付き合いがあまり得意ではない人が、受付で日々患者さんとの関わりを行うとすれば、前向きに業務に取り組むことができないかもしれません。
その仕事が好きか嫌いかではなく、本人の特性として得意なことを任せることは、モチベーションを保つことにつながります。
また、担当業務について新しいアイデアなどを積極的に出せるようになれば、確かな職務遂行、さらには業務改善へとつながるものです。
スタッフの特性を活かすために、日頃からスタッフの考え方や物事への取り組み方に対して、院長がきめ細かく目配りをして、スタッフをより深く理解することに力を注いでください。

Advice
労働環境を大きく変えざるを得ない状況であるがゆえに、新たに行う取り組みに関しては、ぶれることなく強く遂行していただきたいと思います。人は変化を嫌いますから、仕組みが大きく変わる際には、不安や心配から否定的な意見や新たな要望が出てくることが多いものです。今の居心地がよいために起こることではありますが、より働きやすく、より長く働くことができるようにと考える上でのことですから、スタッフに対しては、辛抱強く、きめ細かく説明を重ねてください。院長の考えをより深く理解してもらえるよう、これまで以上に強い関係を構築していきたいところです。

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