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DENTAL MAGAZINE デンタルマガジン

歯科医院経営講座 -21世紀の歯科医院経営-

第60回 (173号)
歯科医院の経営計画において大切なこと
デンタル・マネジメント・コンサルティング 門田 亮

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Business
Management

歯科医院経営講座173

デンタル・マネジメント・コンサルティング
門田 亮

Question
開業後は比較的順調に収入を確保できていますが、4月から新しい年度を迎えるにあたり、計画性をもって歯科医院経営を遂行していきたいと考えております。いずれは医療法人化することも検討していますし、ますます積極的に診療を行い、患者さんにとっても働くスタッフにとっても安心できる経営を目指していきたいと思います。収入の増減やスタッフの入れ替わりなど、いろいろな状況を想定しながら計画を立てていきたいと思いますが、そのなかで盤石な経営体制を築くために、今後、どのような点に注意して計画を考えることがよいかを教えてください。
Answer
新しい事業年度に向けて、経営計画を立てることは非常に大切なことです。しかし企業のように、対前年○パーセント増の売上を目標とするという考え方よりも、医療という特性を考慮して、患者さんが安心できる体制づくりのために、必要となる経費がどれぐらい必要かという視点で計画を進めるとよいでしょう。その上で必要となる経費に関しては、これまで以上に十分な資金計画を立てながら、一方で、効率化を図ることで削減できるものに関しては、徹底して抑えていくという姿勢が必要です。特に今後は、働き方改革による有給休暇の取得増加および残業の抑制や、最低賃金の引き上げに伴う人件費の増加などに注視して検討を進めなければなりません。
人員計画の策定

働き方改革による有給休暇の取得増加に伴い、スタッフの実労働日数が減少します。その際、現状のスタッフのまま継続するのか、労働力が不足する分を増員して補うのか、あるいは診療時間を短縮するのかによって対応が異なります。
増員するか、あるいは診療時間を短縮すれば、その分人件費は上がることになりますし、現状のまま維持するとすれば、スタッフの業務効率化を徹底して行わなければ、時間内に業務を終了することができずに残業代が発生するばかりです。
したがって計画の段階から、通常の休日に加えて有給休暇を取得することも考慮に入れ、法令を遵守できる人員計画を策定する必要があります。なお、残業を考慮する場合に注意が必要な点としては、ひと月最大45時間が限度となっていますが、年間では360時間までとなっていることから、ひと月平均30時間として考えなければなりません。
なお、有給休暇の取得に関しては、常勤のスタッフだけでなく、パート・アルバイトとして勤務するスタッフに関しても、一定時間以上の勤務時間や日数があれば対象となることから、非常勤スタッフの休日も考慮した人員計画を作成する必要があります。

人件費の計画

歯科医院の経費の中でもっとも大きい比率を占める経費が人件費となりますから、人員計画に即して綿密に人件費を計算しておきたいところです。人件費に含まれる内容として、給与賃金、賞与のほか、健康保険や厚生年金などの法定福利費や、スタッフとの旅行や食事などの福利厚生費を含めて考えるとよいでしょう。
法定福利費に関しては事業所負担と本人負担の割合を考慮して、給与賃金と賞与合計の約10%程度を計上します。福利厚生費については、院内旅行等にかかる費用のほか、もし定期的に食事会を行っていれば、その回数などを考慮して金額を計上します。
また、厚生労働省が定める令和元年度の地域別最低賃金において、東京都や神奈川県で最低賃金が1,000円を超えたように、全国的にも毎年最低賃金が大きく引き上げられてきています。平成30年度の平均最低賃金からは約3%上昇しており、大企業並みの昇給率となっている点で注意が必要です。
人件費総額を検討する際には、上限として収入金額の約30%以内を目安として計画をしてください。
一般的な傾向としては、歯科医院の収入規模が大きくなるほど人件費率も大きくなります。
また医療法人の場合は、理事長などの役員報酬を含めた人件費率として、収入金額の約50%が目安となるでしょう。

固定費の試算、
材料・消耗品の管理

人件費を上げざるを得ない状況で安定した資金繰りを行うためには、人件費以外の必要となる固定経費を正確に見積もることが必要です。
治療の質を維持するためには、診療材料や薬品、消耗品などは品質のよいものを使用することが好ましいと考えます。在庫数や発注に関してはルール化をし、スタッフが明確に管理できる体制を整えます。
また、診療用設備や少額資産となる小型機器に関しては、経費となる減価償却費の額を把握し、資金繰りの安定につなげます。
スタッフ一人ひとりの生産効率を高めるために、パソコンを使用したシステムの導入や、自動化を図る機器の導入も検討する必要がありますが、いつ、どのタイミングで行うかについても計画的に進めることが大切です。
一方、水道光熱費や通信費、事務用品費等は少しでも抑える心掛けが必要です。何気なく使用していると、いつの間にか費用が膨らんでいたということがありますが、日頃からスタッフ全員が意識をして無駄遣いがないように注意しなければなりません。
品質のよい診療材料や、患者さんやスタッフの安全につながる物品にはしっかりと費用をかけながら、抑えるべき経費については徹底して抑えていくという、メリハリのある経営管理を進めてください。

Advice
歯科医院の経営計画において大切なことは、患者さんの安心と医療上の安全のために必要となる経費を精査し、それらの経費には惜しみなく資金を費やす一方、その他の経費に関しては、しっかりと抑制をしていくことだと思います。そして、かかる経費を十分に賄うことができる金額が、歯科医院において目標とする必要収入であると考えます。困難を極める人材確保の問題や、スタッフの働くスタイルの急激な変化にも柔軟に対応しながら、これからのますます積極的な歯科医院経営に向けて、医院全体の指針となる計画づくりを目指してください。

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