DENTAL MAGAZINE デンタルマガジン

歯科医院経営講座 -21世紀の歯科医院経営-

第61回 (174号)
予測不可能な事態に求められるリーダーシップ
デンタル・マネジメント・コンサルティング 門田 亮

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歯科医院経営講座174

デンタル・マネジメント・コンサルティング
門田 亮

Question
新型コロナウイルスの影響が続く中で、当院も影響が大きくなってきております。院長である私自身が慌ててはいけないと心がけておりますが、いつまでも続く今の状況に対して、何をどう準備しておけばよいかと悩む場面があります。患者さん自身も、自分の健康を守るために予定していた診療予約をキャンセルするわけですから、この状況に医院としても対応していかなければなりません。これからもキャンセルが相次ぐことが予想され、どこまで収入が減少するかわからないことに対して、どういったことを考えておけばよいでしょうか。
Answer
これまでに誰も経験したことがない事態が続く中で、医院としてどう対応するかを示すために、院長のリーダーシップ力が問われます。院長として、医院の方向性をどう定めるか、そのために具体的にどうするかということを検討しておかなければなりません。スタッフに対して迷うことのない姿勢を示し、平時と変わらない態度や雰囲気を保ち、周囲に安心感を与えられることが、今求められていることでしょう。今後の趨勢がはっきりしない中では非常に困難を伴うことですが、感情の起伏を見せることなく、前向きな考えを持ち、患者さんへの対応、スタッフとの関わり、経営活動に至るまで、積極的な対応を示していきたいところです。
スタッフの処遇をどうするか

院長として明確にしなければならないことは、スタッフの処遇をどうするかを早期に決定することです。
患者さんからの予約キャンセルが相次ぐとともに、医院としても患者さんやスタッフへの健康被害を最小限に食い止めるため、治療の間隔を空けることや予約に余裕をもたせるなどの対応を迫られる状況です。
医院としては、収入の減少幅が予測できない状況であるとはいえ、スタッフの不安や混乱を生じさせないよう、処遇に関して明確に打ち出す必要があります。
スタッフの処遇で検討することとして、①人員削減に踏み切らざるを得ないのか、あるいは、雇用を維持し続けることができるのか、②一定期間スタッフの休業を検討するなどにより、出勤体制をどう整えるか、③休業を行う場合にスタッフに支給する休業手当ては、全額支給することが可能なのか、あるいは労働基準法に定められる水準で考える必要があるのか、といった医院方針をはっきりさせることが必要です。
明確な方針を打ち出すことは非常に困難ですが、現在の収入状況を正確に把握した上で資金繰りを判断し、雇用を継続した場合、給与を全額支給した場合、一部を支給した場合などに分けて資金計画を考えた上で、スタッフの処遇を検討することを進めてください。

運転資金を確保する

スタッフの処遇を考える際に、収入減少時における給与負担の大きさが重くのしかかることになります。全員が平常勤務であれば、収入もある程度伴っている状況かと思いますが、休業せざるを得なくなるほど患者さんが減少する場合は、経営資金となる運転資金をいかに準備できるかがポイントになります。
資金の調達に関しては、①金融機関や機構からの融資や保証、②助成金や給付金の受給、が大きな柱となります。
金融機関からの融資や保証に関しては、状況に応じて利率の低減や利子補給を受けられる日本政策金融公庫の特別貸付のほか、民間金融機関を通じても同様の取り組みが進められています。また、一部の機構では、一定期間については無利息とする医療貸付事業が行われていますし、信用保証協会でもセーフティネット保証制度が整備されています。
助成金に関しては、厚生労働省が行っている雇用調整助成金により、休業するスタッフに対する休業手当の一部補填が行われていますし、経済産業省からは特に大きな影響を受けた事業所に対して給付金が支払われる施策が出されています。
資金繰りが滞ることによる破綻を回避するために、様々な制度や取り組みが行われていますので、適宜活用を行い、当面の事業資金や運転資金の確保に努めることが、今後考えるべき経営方針にも影響することになります。

院長の決断力

さらに、院長として考えておかなければならないことは、事業規模を縮小せざるを得なくなることに対する備えです。100から10に減少した患者さんや収入が、再び100になるまでには相当に時間がかかるかもしれませんし、このままでは100に戻らない可能性も否定できない状況です。長期的な影響に対する準備として、人員計画や経費計画について再度検討を行っておく必要があります。
今後、長期的な収入の変化に応じて、その場その場でどのようにスタッフを配置するか、それにはどれぐらいの人件費が必要なのか、人員削減を行うのか、あるいは給与単価を引き下げて対応するのかを考えなければなりません。また、経費については何に重点を置くか、設備投資計画はどのような考えで遂行していくかなど、今後長引く影響に対して医院をどう維持するかについて、多くのパターンをシミュレーションしておくことが必要です。
今後、情勢が進む過程においては、院長として非情な決断を強いられる場面もあるかもしれません。自分の意に反した決定を下さなければならない事態に進まないとも限りません。
その時がきて慌てふためくことがないよう、多くの選択肢を持っておくことが、いざというときの院長の決断力につながります。

Advice
今後の変化を予測し得ない状況において、先のことを考えていくことは困難を極めます。一方で、院長に求められるのは、どのような状況下においても一定の方向性を示す指導力や統率力です。スタッフをはじめとして、誰もが不安な状況の中で、院長の言動や態度によって医院の雰囲気が大きく左右されます。スタッフの不安が増殖してギスギスした雰囲気になりがちですが、こういうときこそお互いが協力し合える医院に向けて、院長の強力なリーダーシップを発揮してください。そのために、医院の目標を定め、方針を明確にして、具体的な取り組みを一つひとつ行うようにしてください。

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