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デンタル・マネジメント・コンサルティング
門田 亮
院長として明確にしなければならないことは、スタッフの処遇をどうするかを早期に決定することです。
患者さんからの予約キャンセルが相次ぐとともに、医院としても患者さんやスタッフへの健康被害を最小限に食い止めるため、治療の間隔を空けることや予約に余裕をもたせるなどの対応を迫られる状況です。
医院としては、収入の減少幅が予測できない状況であるとはいえ、スタッフの不安や混乱を生じさせないよう、処遇に関して明確に打ち出す必要があります。
スタッフの処遇で検討することとして、①人員削減に踏み切らざるを得ないのか、あるいは、雇用を維持し続けることができるのか、②一定期間スタッフの休業を検討するなどにより、出勤体制をどう整えるか、③休業を行う場合にスタッフに支給する休業手当ては、全額支給することが可能なのか、あるいは労働基準法に定められる水準で考える必要があるのか、といった医院方針をはっきりさせることが必要です。
明確な方針を打ち出すことは非常に困難ですが、現在の収入状況を正確に把握した上で資金繰りを判断し、雇用を継続した場合、給与を全額支給した場合、一部を支給した場合などに分けて資金計画を考えた上で、スタッフの処遇を検討することを進めてください。
スタッフの処遇を考える際に、収入減少時における給与負担の大きさが重くのしかかることになります。全員が平常勤務であれば、収入もある程度伴っている状況かと思いますが、休業せざるを得なくなるほど患者さんが減少する場合は、経営資金となる運転資金をいかに準備できるかがポイントになります。
資金の調達に関しては、①金融機関や機構からの融資や保証、②助成金や給付金の受給、が大きな柱となります。
金融機関からの融資や保証に関しては、状況に応じて利率の低減や利子補給を受けられる日本政策金融公庫の特別貸付のほか、民間金融機関を通じても同様の取り組みが進められています。また、一部の機構では、一定期間については無利息とする医療貸付事業が行われていますし、信用保証協会でもセーフティネット保証制度が整備されています。
助成金に関しては、厚生労働省が行っている雇用調整助成金により、休業するスタッフに対する休業手当の一部補填が行われていますし、経済産業省からは特に大きな影響を受けた事業所に対して給付金が支払われる施策が出されています。
資金繰りが滞ることによる破綻を回避するために、様々な制度や取り組みが行われていますので、適宜活用を行い、当面の事業資金や運転資金の確保に努めることが、今後考えるべき経営方針にも影響することになります。
さらに、院長として考えておかなければならないことは、事業規模を縮小せざるを得なくなることに対する備えです。100から10に減少した患者さんや収入が、再び100になるまでには相当に時間がかかるかもしれませんし、このままでは100に戻らない可能性も否定できない状況です。長期的な影響に対する準備として、人員計画や経費計画について再度検討を行っておく必要があります。
今後、長期的な収入の変化に応じて、その場その場でどのようにスタッフを配置するか、それにはどれぐらいの人件費が必要なのか、人員削減を行うのか、あるいは給与単価を引き下げて対応するのかを考えなければなりません。また、経費については何に重点を置くか、設備投資計画はどのような考えで遂行していくかなど、今後長引く影響に対して医院をどう維持するかについて、多くのパターンをシミュレーションしておくことが必要です。
今後、情勢が進む過程においては、院長として非情な決断を強いられる場面もあるかもしれません。自分の意に反した決定を下さなければならない事態に進まないとも限りません。
その時がきて慌てふためくことがないよう、多くの選択肢を持っておくことが、いざというときの院長の決断力につながります。