DENTAL MAGAZINE デンタルマガジン

歯科医院経営講座 -21世紀の歯科医院経営-

第62回 (175号)
長期的な視点から経営を考える手がかりとは
デンタル・マネジメント・コンサルティング 門田 亮

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歯科医院経営講座175

デンタル・マネジメント・コンサルティング
門田 亮

Question
自医院の最近の状況では、新型コロナウイルスの影響が出る前の患者さんがすべて戻ってきてくれたわけではありませんが、予約状況はほぼ以前と変わらない状況まで持ち直し、診療収入も90%近くまで確保できるようになりました。ようやく、少し新型コロナウイルスの影響が和らいできたとはいえ、診療前の体温チェックなどの感染予防対策は欠かせません。スタッフについても入退職が続くため、採用活動を継続するなど、まだ落ち着かない状況が続いています。今後も、感染拡大防止に向けた取り組みを進めながら経営を行う必要があると思いますが、どのような視点で進めるとよいでしょうか。
Answer
百貨店の入口では大きなサーマルカメラが来店客の体温を測り、スーパーのレジ前にはビニールカーテンが敷かれ、日常のあらゆる場面で、新型コロナウイルスの感染拡大防止策とともに生活をすることが当たり前になりました。そのような取り組みを行ってもなお、国内の感染状況が収束の兆しを見せない現状を見ると、歯科医院においても第二波、第三波に備えた取り組みを考えておかなければなりません。資金面での取り組みや人材確保のための対応など、いつ収束するかわからない新型コロナウイルスへの対策とともに、新たな生活様式に応じて、将来を見据えた長期に亘る視点から経営を考えていく必要があります。
内部留保できる経営体質を目指す

今回のコロナ禍において、休業要請を受けた飲食店などは収入が途絶えたために軒並み経営がひっ迫しました。比較的経営が安定していると思われる、複数店舗を構えるチェーン店も例外ではなく、閉店を余儀なくされた店舗が少なくありません。その一方で、補助金や給付金を得ながらも、何とかしのいで生き残った店舗も数多くあることを考えると、内部留保の大きさが経営の体力差として表れたということでしょう。
歯科医院においては休業要請を受けるまでには至りませんでしたが、第二波、第三波の襲来に向けて、内部留保を確保できる経営体質へと変えていく意識を持ちたいものです。
内部留保とは、つまり資金的な余裕を意味するものですが、融資に頼らなくてもよい預貯金残高の確保であり、そのためには過度な節税を行うことなく利益を確保できる体質を目指したいところです。
経営体質を変えることは、自身の体質を改善することと同様に一朝一夕でできるものではありませんが、考え方を変えることによって行動を変えることができます。
短期的な視点による節税対策から少し長期的な視点へと意識を変え、いつ不測の事態が襲ってきても慌てずに済むように、また将来の安定のために内部留保の確保に努めてください。

医院の考えを理解してくれる患者さんを増やす

短期的に見れば、患者さんの受診抑制のほか、歯科医院側からのアポイント調整も重なり、来院患者数の減少幅は過去にないほど大きく、またそれに伴う収入の減少も大きいものだったと推察します。その後、再び診療希望の連絡がある患者さんがある一方で、医院から離れてしまった患者さんも一定数は存在するでしょう。あるいは、安心できる感染予防対策を探し求めて、新たに医院を訪れる患者さんなど、患者さん自身の受診行動も大きく様変わりしている状況です。
その中で、医院の考えや診療方針をしっかりと理解し、院長やスタッフに対する信頼も厚く、歯科医師や歯科衛生士からの指導内容にも素直に耳を傾け協力してくれる患者さんがいます。そうした患者さんこそが、長期的に見れば、今後も医院経営を助けてくれる人たちといえるでしょう。いわば、医院にとってのよい患者さんを一人でも多く獲得すること、このことが医院収入の安定確保につながることに他なりません。
カルテを主として患者管理を徹底して行い、医院の診療方針を真に理解してくれる患者さんとの信頼関係構築に力を注ぐことです。そういった患者さんと、今後も永続的な関係を維持するためには、医院がどのような考えで歯科医療に携わっているのかという理念が必要です。さまざまな方法で、診療に対する考え方を患者さんに丁寧に伝え、信頼関係を築くために患者さんと積極的なコミュニケーションを取ることが重要です。

労働環境の安定・整備による労働力確保を

独立行政法人労働政策研究・研修機構による資料に基づくと、社会全体では日本人一人当たりの実労働時間は減少してきている状況です。それでもまだ欧米諸国と比較すると労働時間が長い状況ですが、新型コロナウイルス対策によるテレワークの定着が進めば、さらに労働時間、労働環境は改善されていくものと考えられます。
患者さんと対面することを省略できない歯科医院において、他業種と同じことができるかどうかは難しい点ですが、今後、労働力確保に向けて考えるべきことは、歯科医院同士での競争ではなく、他業種の労働環境と比較してどうかという視点で進める必要があるということでしょう。
労働環境に対する国の取り組みに沿うことは、人手不足の感が著しい歯科医院においては、取り組みが難しい問題です。しかし、人々の生活スタイルやコミュニケーションのあり方が大きく変わろうとする今の世の中においてこそ、労働環境の整備を進め安定した職場を維持することは、働く者の幸福感、やりがいを高めることに直結するものです。
労働時間の遵守、時間外労働への適正な支給、有給休暇の取得促進、育児休業や短時間勤務制度の整備など、数え上げればきりがありませんが、一事業所として取り組むべき内容について積極的に対応することは、将来に向けた人材確保に必ずプラスに働くはずです。

Advice
新型コロナウイルスへの対策が長期化の様相を見せている中で、歯科医院においても新たな考え方で対応せざるを得なくなりました。大きな考え方としては、短期的な視点から長期的な視点へシフトし、資金確保の問題やスタッフの雇用維持の問題を考えていく必要があります。さらに、この状態がいつまで続くのか先が見通せない中では、資金の流れ、特にキャッシュフローに注視し、資金が不足しないように対策を図ること、スタッフに対しては、こうした苦しい状況下こそ一丸となって取り組むことができるよう、働く上での安心感が持てる対応をするべきだと思います。

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