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第66回 (179号)

医院拡張が医院経営に及ぼす影響について

デンタル・マネジメント・コンサルティング 門田 亮

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歯科医院経営講座179

デンタル・マネジメント・コンサルティング
門田 亮

Question
現在テナントで開業しています。近頃、隣接するテナントに空きが出たのですが、拡張してチェアを増設することができないかと考えています。大きな費用がかかることではありますが、少し手狭になってきたこともあり、増床を検討しているところです。増床により医院経営にはどのような影響が出るものでしょうか。
Answer
これまでの患者数の推移や収支状況、あるいは、診療方針がどういったものかということはありますが、隣接するテナントが空いたことにより診療所の拡張を考慮されているということは、より積極的な展開を図る力をお持ちということです。実際、患者さんが多く集まって手狭になっているとすれば、今後より多くの患者さんに対応するためにも、診療所を広くしてチェアを増やすことは患者さんの利便性向上にもつながることでしょう。医院経営への影響としては、規模が大きくなることによる経営効率を考えておきたいところです。診療スペースやチェアとともに、スタッフの効率に関しても、どのような影響があるのかを把握しておく必要があります。設備投資によって得られる効果、および規模拡大による職場環境の変化など、医院経営に及ばす影響を多面的に考えておくことが必要です。
チェア増設および敷地拡張による経営効率

診療所の拡張を行い、チェアを増設することによって、これまでとは収入規模が大きく変わることになります。経営効率の点から考えると、拡張することにより歯科医院の規模が大きくなるにつれて、経営効率が高くなることが期待できます。
診療室面積およびチェアの経営効率について、デンタルマネジメントコンサルティングで調査した資料に基づきますと、診療室一坪あたりから得られる月額の収入水準は平均で約18万円という結果が出ています。
収入規模に分けて見てみますと、年間収入3千万円未満の規模の歯科医院ではそれが約8万円となり、以後、3千万円から7千万円規模では約16万円前後で推移しますが、年間収入規模が8千万円以上となる大規模歯科医院になりますと約27万円に到達する数値となっています。
また、チェア1台あたりから得られる月額の収入水準をみますと、平均は約144万円となっています。これを収入規模別にみますと、年間収入3千万円未満の歯科医院の約50万円から、収入規模8千万円以上の大規模歯科医院の約202万円まで、収入規模が大きくなるにつれて月額収入は増加する傾向があります。
拡張する面積や増設できるチェア台数によっても変わってくると思いますが、診療所拡張によるチェア増設で、増収の効果をより期待できると言えるでしょう。

人的効率はどう変化するか

設備の増強に伴い、人の効率がどのように変化するかを考えておきたいところです。一般的には、歯科医院の収入規模が大きくなりスタッフが多くなると、人件費の負担が増えることになります。実際、常時勤務するスタッフの人数が5名以上の場合は、社会保険(健康保険、年金保険)への加入が義務付けられることから、社会保険料負担が大きくなることは避けられません。
しかし、診療所を拡張しチェアを増設することにより増収が見込まれますから、単純に人件費負担が経営を圧迫することにはなりません。
先に見たデータと同じように、スタッフ一人当たりから得られる月額収入がどうなるかを見た場合、平均的に140万円の月額収入ですが、歯科医院の規模が大きくなるにつれて経営効率が上がり、年間収入8千万円以上の大規模歯科医院になると約170万円まで上がるという結果が出ています。
つまり、スタッフの業務効率化が図られ、一人当たりの生産性が大きく向上することを表しています。
したがって、大規模な設備投資を行う場合には、スタッフの業務内容や役割がどう変わるかということを再度検討することが業務改善につながり、経営効率の向上に大きな影響を与えることになります。

新たに歯科医院をスタートする気持ちで取り組む

診療所の拡張およびチェアの増設とともに、スタッフの構成を整えることによって、診療スペース、チェアともに十分に稼働させることができます。
スタッフを何人増員するか、新たな歯科医師の確保はもとより、歯科衛生士や歯科助手・受付など、どの職種をどのように確保していくかといった人員構成は念入りに検討して進めていきたいものです。
また、スタッフが増えると様々な価値観を持った人材が集まるようになります。従来の少人数規模であればスタッフもお互いの人間関係を重視して、ある程度折り合いをつけながら快適に過ごそうと心がける意識が働きますが、スタッフが多くなると、お互いの労働時間や休み時間、あるいは行っている業務の差など、医院の労働環境について関心が高くなります。
診療環境が大きく変化するタイミングに合わせて、これまで十分に対応できていなかった労務施策等については整備を進めることがよいでしょう。
院長としては、診療スペース、チェア、スタッフに至る経営資源を存分に活用し、経営効率を高めることに力を注いでください。そのために法令を遵守した労働環境を整備し、スタッフのモチベーションを高めることが必要ですが、新しく医院をスタートする気持ちで医院の魅力を高める取り組みをしたいところです。

Advice
医院を拡張することは、単に診療室のスペースが広くなり、チェアが増えるだけではありません。ここまで、診療室、チェア、スタッフの経営効率に触れてまいりましたが、規模の拡大に合わせた業務の改善や統制を進めることによる経営効率の向上も期待できます。患者さんが多く訪れることで、さらに医院にも活気が生まれスタッフのやる気にもつながります。診療の体制を整えること、患者さん対応の仕方を再度構築し直すこと、院内の仕組みをもう一度見直すことなど、増床増設を積極的な医院づくりの契機として捉えるとよいと思います。

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