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第67回 (180号)

医院拡張が医院経営に及ぼす影響について

デンタル・マネジメント・コンサルティング 門田 亮

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歯科医院経営講座180

デンタル・マネジメント・コンサルティング
門田 亮

Question
開業して2年目を迎える歯科医院です。立地は少し郊外の、住宅と商業施設が混在する地域の中にあります。ようやく地域にも知られるようになり、患者さんも増えてきて収入も伸びてきている状況です。勤務するのは正規スタッフのほか、医院の近所に住む学生や主婦などのパートやアルバイトですが、スタッフに支給する給与の負担が大きく資金繰りが心配です。今後、人件費の負担をどう考えるか、また人件費をどのように予測しておけばよいか教えてください。
Answer
歯科医院の経費の中でもっとも大きい経費がスタッフに支給する給与賃金ですが、開業時は収入がそれほど大きくないにも関わらず、オープニングスタッフとしてある程度の人数を配置する必要があるため人件費負担は大変大きくなります。その後、徐々に収入が上がるにつれてスタッフも仕事に慣れてきますので経営効率は向上する傾向になります。このときに、ある程度業務の見直しや役割の再確認をし、業務効率を重視して人件費をコントロールすることが大切です。さらに収入規模が大きくなりますとスタッフを増員するようになり、厚生年金への加入が始まります。保険料負担など医院としての経費が増加しますが、一方で、スタッフに対する労務的な制度が整うことでもありますので、人件費をプラスの経費として捉えるようにし、人員構成を検討する際や将来に亘る人件費計画に積極的に役立ててほしいと思います。
人件費に含めて考えるもの

人件費を考える際には、給与賃金のみを考えるのではなく、給与に付随する法定福利費や福利厚生費を含めて考えると経営への影響を検討しやすくなります。
法定福利費とは雇用保険や労災保険料のほか、一定の条件において加入することになる健康保険料や厚生年金保険料の医院負担のことです。
開業当初、スタッフの人数が数人規模であればその負担はありませんが、患者数や収入が増えて規模が大きくなり、常時雇用するスタッフ数が5人以上になるかあるいは、医療法人として法人化すれば保険料の負担が生じることになります。
歯科医師国保はそのまま継続ができますが、年金は国民年金から厚生年金へと変わることになることから、現在の保険料率18.3%の半分9.15%を医院が負担することになります。
その他、雇用保険料、労災保険料等の医院負担分を合わせると、給与賃金となる金額の約1割程度を法定福利費として経費負担を考えておく必要があります。
また、スタッフに対して支出する費用として慶弔見舞金や忘新年会、あるいは社員旅行等の費用は福利厚生費として計上します。
必要経費としてこれらの額を含め、人に関する費用はすべて人件費内に含まれると把握しておくと、収入に対してどれぐらいの費用がスタッフにかかっているか、その費用は増加傾向にあるのかどうかということが一目瞭然となります。

パート・アルバイトの法定福利費

近年、法律的にパートやアルバイトの待遇改善が進んでいます。短時間の働き方であっても、週所定労働時間が30時間を超えてくるなど、正規スタッフと同等程度の働き方となる場合は社会保険への加入が必要になります。
開業立地周辺の環境から、住宅が多く主婦層のパートスタッフが多い場合、勤務する時間や働き方によっては、多くが社会保険へ加入することになります。そのため、これからの働き方についてもスタッフとよく話し合っておくことが必要です。
家庭の事情等にもよりますが、パートの働き方を選択するスタッフの中には、厚生年金への加入により積極的に働こうとするスタッフは多く存在します。社会保険を完備することにより福利厚生の制度が整うことがスタッフの積極性ややる気につながるのであれば、パート・アルバイトに対する法定福利費の負担は決してマイナスのものではありません。
法律的にも、明らかな理由がないにもかかわらず正規スタッフとパート・アルバイトなどの非正規スタッフとの間に待遇差があることは禁じられていますので、今後は多様な働き方をする中で、スタッフの誰もが公正な評価や体制の元、モチベーションを損なうことなく最大限成果を出せる体制づくりを目指すようにしてください。

将来に亘る人件費の計画

これからの3年後、5年後を想定して、収入推移に伴う人員計画を検討しておくことが必要です。その際、現在と同じようにパート・アルバイトなどの非正規スタッフの活用を継続するか、あるいは正規スタッフを中心とする組織とするかなどの人員構成についても検討をしてみてください。
厚生年金に加入するべきスタッフがどの程度になるのかといったことや、正規スタッフと非正規スタッフそれぞれに、どのような業務を任せ分担していこうとするかによってこれからの人員計画は変わりますし、必要となるスタッフの人数あるいは、目指すべき人件費の水準にも影響を及ぼします。
昇給の制度があれば、年間での増加金額を想定し、賞与についても実績を加味した金額を検討して人件費の計画を行います。
計画を検討する際は、今のスタッフが継続して勤務することを前提として考えるようにします。正規スタッフおよび非正規スタッフの平均給与額を算出し、現在の人数を維持した場合のほか、収入が増加しスタッフを増員する必要がある場合など、様々な状況を想定して計画案を作成するようにします。
この予測によって、将来的な人件費の総額や比率がどれぐらいの水準になるかということや、スタッフの雇用を維持するための資金が適切に確保でき、十分な支払いを行えるかどうかという点を確認するようにしてください。

Advice
歯科医院にとって人件費は最大の経費であることから、大きくなりすぎないように注意することは大切ですが、最大経費であるがゆえに最大限活用できる体制を目指すことが大切となります。個人事業の場合はスタッフの人件費総額として約25%のほかに院長の必要所得を検討しておきます。一方、医療法人の場合は理事報酬とそれにかかる社会保険料が大きくなりますので、それらも含めた全体の人件費として、収入金額の約50%以内を目標として人件費計画を検討するとよいでしょう。同時に、業務の効率化を図ることに重点を置き、相対的に人件費負担が下がる取り組みを強化することが大切です。

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